2021/01/25

Duranの留学記【第4話】

Hello there! Duran is here.

「思えば遠くへ来たもんだ~♪」【中原中也(詩人)『頑是ない歌』】

ついこんな気分になる。英語力の向上を待つまでもなく、いよいよ学校が始まるのだ。ボクは明日からアメリカのフツ~の公立高校に通うことになっている。

(日本の学校と同じで、やっぱ最初が肝心なんだろう...)

そうは思うもののやはり不安である。語学力のこともあるがアメリカの高校なんぞ、映画や小説でしか知らない。ビフ(映画「Back to the Future」)のような番長もいて欲しくないがいるだろうし、ハーマイオニー(映画「Harry Potter」)のような可愛い子もいるだろう、いや絶対にいて欲しい。が、

(まさかジャイアンやしずかちゃんのようには扱えまい...)

「ともだち100人、できるかな~♪」

"Morning Duran! Good day, isn't it?"  (Host mother
(おはよう、Duran! いい天気よ)

"You're right Mam. So as my feelings"  (Duran)
(その通りだね、母さん。ボクの気分もだ)

"So this is the first day you've been looking forward to, Duran."
(いよいよあなたが待ち望んでいた日ね、Duran)

"Have fun, and hustle!"
(楽しんできてね、ハッスルよ!)

"Thank you Mam, I will."
(ありがとう、母さん。そうするよ)

"Don't study so hard~."
(頑張ってね~)

学校はもちろん私服である。ボクのいで立ちは夏物の赤のブルゾン。黒のTシャツに「Day time friend, night time lover」と書いてある。「昼は友達、夜は恋人」という意味である(ま、いちおう、ね)。そしてブルージーンズに黒のスニーカー。ごくごく一般的な服装だ。

登校するといっても、自宅の目の前の道路にスクールバスが止まるのである。あの黄色いヤツだ。バスは本当に自宅の目の前に止まる。が、生徒がバスが来る前に外に出て待っていないと、バスは停車もせずに通過する。ありがたいシステムなのかどうか微妙である。ボクはCindy(17歳、長女)とTim(15歳、長男)と一緒にバスを待ち、無事に乗り込んだ。

15人ほどがすでに乗っている。大音量で音楽をかけているヤツがいた。人相が悪い。みんな、なにやらおかしそうに話している。が、誰もボクのほうは見ない。Cindyはボクの隣に座った。

"Cindy. How long does it take to the school?" (←固い英語だ Duran)
(シンディー、学校までどれくらいなんだ?)

"Hmmm, it's about 20 minutes. This bus stops in front of others house." (Cindy)
(う~ん、20分ぐらいね。このバスは他の人の家の前にも止まるからね)

アメリカでは州によって教育システムが異なる。ボクの通う高校は4年制らしい。小学校(六年間)、中学校(二年間)、高校(四年間)、ここまでが義務教育なのだ。しかし落第や、退学もある。ボクは日本では高校二年生なので、アメリカでは三年生に入ることになる。生徒の呼び方は順に、Freshman(一年生), Sophomore(二年生), Junior(三年生), Senior(四年生)となる。これは大学でも同じ。

学校に着いた。Cindyがちょっと得意そうに顎をしゃくった。

"Well, how is it?"
(どう?)

なるほど2年前に建て替えたという学校の建物は、二階建てのレンガ造りですこぶる美しい。体育館・室内プール・ナイター照明付き野球場・サッカー(アメリカンフットボール)場などの支持標識が見える。野球場もサッカー場も天然芝だ。敷地が恐ろしく広い。

(これが公立高校? アメリカの財力、恐るべし...)

が、そんなボクの感慨を無視してCindyが言った。

"You have to hurry up, you don't have enough time."
(急がなきゃ。あなた、そんなに時間が無いのよ)

"I'll take you to the principal."
(校長のところへ連れてってあげるわ)

なにやら手続きなどがあるらしい。まあ、今日から授業も始まるワケで...。ボクたちは学校の中をぐるぐる回りながら校長室を目指した。すべてのモノが目新しい。

校長は、髭をはやしたダンディズムは無いが、190cmはある大男だった。いくつなんだろう...?外人の年齢はさっぱり分からん。40歳ぐらいに見える。彼は満面の笑みでボクを迎えた。強烈な握力でボクの手を握った。

"Oh, Duran Duran, I couldn't wait to see you. Welcome to my school."  (Principal
(お~!君がDuranか。待ちくたびれたよ。本校へようこそ) 

"I hope your staying will be a terrific one. This place, school is your US"
(君の滞在があらゆる意味で素晴らしいものになることを祈ってるよ。この場所、この学校こそが君のアメリカなのだ)

彼は紙になにかを書きつけるとボクに渡しながらこう言った。

"I know you don't have much time. Take this. The counselor is waiting for you."
(君には時間がなかったんだね。これを持っていきたまえ。カウンセラーが待っているよ)

一方的に話されて部屋を退出しようとするボクの背中に校長の声が降ってきた。

"Talk you later Duran. I want to talk you a lot. Study hard. Enjoy yourself."
(後で話そうDuran。話したいことが山ほどあるんだ。勉強しろよ。人生を楽しめよ)

"Eat much. Watch your health. God bless you."
(たくさん食べるんだ。健康にも気をつけて。神の祝福を)

陽気な校長である。渡された紙きれを見ると校長のサインが書いてある。どうやら、「俺のところは終わったよ」という証明らしい。さて、次はカウンセラーである。この職種、日本の一般の高校には無い。が、簡単に言えば学校に関するあらゆる相談に乗る人なのである。学習カリキュラム、進路はもちろん、いじめや恋愛、体調管理から親の離婚問題まで、あらゆる相談に乗ってくれる。だからある意味、校長よりも権限を持っているともいえる。実際ボクはこれから卒業までに、何度もお世話になることになる。

校長からもらった紙切れを渡すと、カウンセラーはにっこりと笑った。

"Nice to meet you, Duran. Ask me anything, and try to use me." (Counselor
(こんにちはDuran。どんなことでも私に聞いてね。私を使ってちょうだい)

"I know you don't have time. First of all, this is your schedule."
(時間が無いのよね。とにかくこれがスケジュールよ)

"Diana! Take him to the purchasing department."
(ダイアナ! 彼を購買部に連れて行ってあげて)

"I'll talk you a later. I need to sign up much of junks. Here, take this."
(後で話しましょうね。書類が山ほどあるのよ。さあ、これを持って)

スケジュールとまた紙切れを渡されたボクは、Dianaと呼ばれた女の子についていった。さっきから全く、ボクは英語を話していない。あちらへこちらへと指示通り歩いているだけである。ちなみにさっきの校長の話がだいたい80%、カウンセラーの話が60%ぐらいしか聞き取れてはいない。

ところでこのDianaって娘、何者なんだろう?若い。生徒なんだろうなぁ。さっきからじろじろとボクを見ている。ちょっと可愛い。

"So, You are a newcomer, right? What's your name?"
(あなた、転校生でしょう?名前は?)

"I'm an exchange student from Japan. Call me Duran, and you are Diana?"
(ボクは留学生さ、日本からのね。Duranと呼んでくれ。きみはダイアナ?)

"You are Duran. Okay I'm Diana"
(分かったわ、Duranね。私はダイアナよ)

"Well, where are we going?" (←purchasing departmentが分かっていない)
(ところで、ボクたちはどこに向かってるの?)

"Oh, purchasing department. Ummu, the place selling mints, gums, pens, like that."
(購買部よ。う~んとね、フリスクとかガムとかペンとか売ってるところよ)

(フリスクにガムって...。なんじゃそりゃ?)

"Why, th, th, that place?" (←purchasing departmentが言えない)
(どうしてまたそんな場所に?)

"You need to get something, I don't know. Just follow me."
(なんか貰わなきゃいけないのよ、私は知らないけど。黙ってついてくれば?)

ボクはムッとした。いや、そりゃあさあ...、ねぇ。くそっ、可愛いと思ったのは取り消す! 

購買部に着くと、ボクはまた紙を見せた。中にいた生徒がボクに何かをいうと奥に消えた。ボクは情けない顔でDianaを見た。

"She said you have to wait here. She has something to give you"
(あなたにここで待てってさ。なにか渡すものがあるんだって)

"Well, don't you want anything here? It's opened while they are here."
(ところでなんか買っとかない?彼女たちがここに居る間しか開いてないよ)

後で分かったのだが、購買部は生徒たちが店番をしていて授業中は閉まっているらしい。もちろん彼女たちは他の生徒よりも早く来なければならない。しかし、アルバイト代が出るのだ。

ボクは目の前で展開される、日本の高校とは違った光景に驚かされ続けている。しかし.........、これはこの日、まだまだ続くのだった。

See you next time.

<文/開成教育グループ 個別指導部フリステウォーカー講師編集部:藤本憲一(Duran)>