2023/07/03
関東 受験・進学情報だより【高校授業料減免制度】
皆さんこんにちは。
今回は東京都・埼玉県・千葉県における高校授業料の減免制度について説明します。
難しい言葉ですが、簡単に言うと、高校にかかる学費のうち「授業料」にあたるお金は国や都道府県から助けてもらえるよ、という制度のことです。
「私立高校は高いし......」といったイメージを抱いている方も多いかと思いますが、この制度についてよく知ると選択肢が広がるかもしれません。ここ数年間でかなり変わった部分もあるので、上の兄弟・姉妹がいらっしゃる場合でも要注目です。
以下の順で説明していきます。
INDEX |
なお、本記事の情報は2023年6月のものとなっておりますので、必ずお住まいの地域の最新の情報を改めてお調べください。また、本記事は高校授業料減免制度の大まかなところを伝えることを目的としています。細かい部分は必ずここから先で紹介しますリンクにある、国や各都府県のページ並びにそこから担当部署に問い合わせることでご確認いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
【①国からの助成】
授業料の助成
文部科学省のリンク:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342674.htm
――高等学校就学支援金ってどんな制度?――
授業料を助成することにより、教育の実質的な機会均等に寄与することを目的にした制度です。
対象は世帯年収約910万円未満の世帯の生徒です。
ただし910万円未満ならどの家庭も一律の支援があるわけではなく、世帯年収の幅ごとに支援の内容が変わります。授業料に限った話をすると、①約910万~約590万円と②約590万円~約270万円、③約270万円未満の3段階で分かれます。
乱暴な言い方をしてしまえば、国の助成金+都県の助成金で上限いくらになるまで授業料を安くしますよ、というわけです。こちらは返済不要の授業料支援です。
この制度により、公立高校にお通いの場合は"授業料"が無料になります。
私立高校の授業料はこの支援金でもまだ無料になっていない場合が多いと思いますが、その残りの分を各都県がそれぞれの制度で助けてくれるというイメージです。
支援の条件は世帯のお子様の人数などで変わってきますが、世帯年収が約590万円までのご家庭には、公立にお通いの場合は11万8800円まで、私立にお通いの場合は39万6000円まで支給されます。約590万円以上の場合は、公立無償化の額である11万8800円までは支給されます。
授業料以外の助成
文部科学省のリンク:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1344089.htm
――高校生等奨学給付金ってどんな制度?――
上記のリンクにはこの制度の目的として、「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与すること」が挙げられています。
制度の概要としては「全ての意思ある生徒が安心して教育を受けられるよう、授業料以外の教育費(※)負担を軽減するため、高校生等がいる低所得世帯を対象に支援を行う制度」としています。
授業料以外の教育費とは、教科書費、教材費、学用品費、通学用品費、教科外活動費、生徒会費、PTA会費、入学学用品費、修学旅行費等があたります。
この制度では「世帯収入」や「第何子なのか」、「通っている学校の種類(全日制/通信制)」によって金額が変わってきます。
世帯状況 |
国公立高校 |
私立高校 |
生活保護受給世帯【全日制等・通信制】 |
32,300円 |
52,600円 |
非課税世帯【全日制等】(第1子) |
117,100円 |
137,600円 |
非課税世帯【全日制等】(第2子以降) ※15歳以上23歳未満の兄弟姉妹がいる場合 |
143,700円 |
152,000円 |
非課税世帯【通信制・専攻科】 |
50,500円 |
52,100円 |
詳しくはリンク先でご確認ください。
【②東京都の助成】
授業料の助成
東京都私学財団のリンク:https://www.shigaku-tokyo.or.jp/pa_jugyoryo.html
――私立高等学校等授業料軽減助成金ってどんな制度?――
都内にお住まいで、私立高等学校等に通う生徒の保護者の方の経済的負担を軽減するために、授業料の一部を助成する制度です。
対象はやはり世帯年収約910万未満の世帯の生徒です。
たとえば全日制の私立高校に在学の世帯年収約910万円未満の場合、在学校の授業料を上限に国の「就学支援金」と合わせて最大47万5000円まで支援してもらえます。
たとえば、世帯年収が約600万円のご家庭では、国からの授業料支援は11万8800円になりますが、東京都が最大35万6200円の支援をしてくれることで上限47万5000円まで授業料の負担がなくなるということです。
こちらも細かい条件等ありますので、必ず上記リンクでご確認ください。
【③埼玉県の助成】
授業料や入学金などの助成
埼玉県のリンク:https://www.pref.saitama.lg.jp/a0204/fubofutan2.html
――埼玉県私立高等学校等父母負担軽減事業補助制度ってどんな制度?――
県内の私立高等学校等に通学する生徒の経済的負担を軽減するため、国が授業料への補助を行う「高等学校等就学支援金」のほかに、授業料や施設費等納付金、入学金の軽減補助を埼玉県が行っています。所得の状況により、授業料及び施設費等納付金が実質無償化される場合があります。
因みにこの制度は高校に限らず、埼玉県が認可した私立の小学校、中学校、特別支援学校(高等部及び専攻科)及び高等専修学校(修業年限3年以上の課程)も対象となります。(それぞれ別の条件や支援内容となりますので、別途お調べいただきますようお願いいたします)
説明のとおり、授業料以外の支援もあるのですが、年収によって「入学金」「施設費等納付金」「授業料」のどれを支援してもらえるのかが変わるという制度になっています。これも返済不要の支援です。
世帯年収500万円未満の場合、入学金10万円、施設費等納付金20万円、授業料に関しては国の「就学支援金」のみとなります。(これは、この年収であれば国からの支援金のみで授業料自体は実質無料になっているためです)
世帯年収が590万円を超えると、国からの授業料支援が11万8800円のみになってしまいますが、入学金10万円、授業料を上限26万8200円という支援が県からされることになります。
【④千葉県の助成】
授業料や入学金などの助成
千葉県のリンク:https://www.pref.chiba.lg.jp/gakuji/shiritsutou/gakuhi-josei/genmen/genmen.html
――私立高等学校等授業料減免制度ってどんな制度?――
県内私立高等学校等に通う生徒の保護者の負担を軽減し,生徒の修学促進を図るために創設された制度です。
この制度は私立高校の設置者への補助となっています。県が保護者の方に直接支援するものではありません。
対象はやはり世帯年収で区分されます。①生活保護受給者、②世帯年収約640万円未満、③世帯年収約750万円未満という3段階です。
授業料に関しては、
①②:国の「就学支援金」と合わせて授業料全額を免除
③:在学校の授業料の3分の2から国の「就学支援金」を引いた分を免除
となっています。
入学金減免制度もあります。
①②:入学金の全額、または、15万円のいずれか低い方
が支援されることになります。
【⑤公立高校と私立高校の学費の差】
ここまで説明してきた制度により、授業料はほぼ無料になるケースが多いということはお判りいただけたかと思います。
しかし、「学費」全体で言うと、授業料は大きな割合を占めるものの、お金のかかる部分は他にもいろいろあります。
私立高校ですと、大まかに分けて「入学金」+「授業料」+「その他」という構成になっており、この「その他」の部分の内訳は以下のようになります。
- 施設維持費
- 実験実習費
- 修学旅行などの積立金
- 課外活動費
- 個別指導費
- 補講費 などなど
見てきたように、支援があるのは授業料や入学金の部分に対してですので、これらいわゆる「その他」の部分は軽減されないことにご注意ください。
ただし、私立高校では設備が優れていることが多く、その恩恵にあずかれるのもこういった費用があってこそであることは理解しておきたいところです。
では少し例を出してみてみましょう。
都立A高校の場合
3年間の合計で26万5650円となりました。
では続いて、東京都の私立B高校に通う、世帯年収が約590万円未満のケースを見てみます。
3年間の合計で174万2800円となりました。
公立に比べるとやはり高額にはなっていますが、支援前は306万4000円だったことを考えるとかなり支援してもらえていることが分かります。
埼玉県や千葉県の制度を適用してみても、おおよそ同じくらいになります。
いかがでしたでしょうか。
この金額に対して感じるところは各ご家庭で違うと思いますが、どのような支援があり、その結果3年間でどのくらいかかるのかといった情報は非常に大切であることはどのご家庭にも共通かと思います。
最後にもう一点注意です。
これらの支援金制度は「年度ごと」になりますので、高校在学中に世帯年収に大きな変化があった場合、支援額も変わってくることになります。
また、支援額や条件等制度面も年度で細かく変わることがあります。
重ねて申し上げますが、あくまで本記事は高校授業料減免制度の大まかなところを伝えることを目的としていますので、細かい部分は必ず上記リンクの国や各都府県のページ並びにそこから担当部署に問い合わせることでご確認いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
皆様の進路決定の一助となれば幸いです。
<文/開成教育グループ 教育技術研究所 小川真史>