2023/01/10

関東 受験・進学情報だより【大学入試の総合問題・適性検査】

皆さんこんにちは。

今回は、近年関東の大学入試で増えてきている「総合問題」や「適性検査」といった教科・科目に縛られない試験について紹介していこうと思います。

▼index

総合問題や適性検査とは?

Sample1早稲田大学 政治経済学部【総合問題】

Sample2上智大学 総合人間科学部 教育・社会・看護学科【人間と社会に関わる事象に関する論理的思考力、表現力を問う総合問題】

Sample3青山学院大学 地球共生学部【論述】

総合問題のねらい

 

総合問題や適性検査とは?

皆さん、受験と言えばやはり、英語・数学・国語......といった学科試験を思い浮かべる方が多いかと思います。最近は総合型選抜も増えてきて、いわゆる学科試験を必須としない大学受験も増えてきましたが、「総合問題」や「適性検査」など他の呼び方もありますがこういった問題は、総合型選抜などで求められる自己表現などとはまた違った内容になっています。
総合問題や適性検査とは、簡単に言うと「科目横断型の試験」であり、「基礎学力の他に今後入学した先で学んでいくにあたり必要な素養を持っているかを測る試験」と言えると思います。一体どんなものなのか、いくつか具体的に例を見てみましょう。

 

Sample1早稲田大学 政治経済学部 【総合問題】

早稲田大学の政治経済学部の一般選抜は、「共通テスト利用方式」と「一般選抜」があります。
このうち、一般選抜で「総合問題」が出題されます。政治経済学部の一般選抜は、共通テスト4科(「英語(リスニング含む)」「国語(現古漢)」「数学(Ⅰ・A)」+選択科目「地歴公民・数ⅡB・理科(基礎の場合は2科目)」)の他に大学独自の試験として「総合問題」を受けることになります。試験の名称は一般選抜ですが実質的には「共通テスト併用方式」になります。
ではこの「総合問題」の中身を見てみましょう。今回参考にするのは2022年度入試の問題です。

試験時間:120
満点:100
大問1:日本語の文章による現代文的な読解問題。文章はABの二つあり、それぞれの文章に対する問の他、二つの文章を合わせて考えて答える記述問題もあります。
大問2:数学の力も必要とする英語の長文問題。22年度のものは経済統計をテーマにしていて、データの分析的な要素が入っています。資料を読み取って日本語で記述する問題もあります。
大問3:英問英答による作文。作文の条件も英語で書かれています。小論文のように論の展開によって、読み手に自分の考えを根拠とともに伝えていく文章が求められます。

いかがでしょうか。一つの試験の中に英数国の要素が入っていて、どれも記述力を問われる問題が入っています。

因みに「共通テスト利用方式」も国立大学のように最大で5教科7科目必要になるなど一筋縄ではいきません。さすが最難関大学ですね。

 

Sample2上智大学 総合人間科学部 教育・社会・看護学科 【人間と社会に関わる事象に関する論理的思考力、表現力を問う総合問題】

上智大学の場合は、多くの学部で総合問題を用いていて、「一番募集人数が多いのは共通テスト併用」、「統一入試に相当する試験では、英語4技能検定であるTEAPを使用」ととても独自色が強いです。
そんな上智大学は、一般選抜入試でそれぞれの学科(学部以上に細分化された状態で)の適性を問うような総合問題を使用しています。経済学部の「数学」や「英語」のようにイメージしやすいものもあれば、文学部哲学科のように「哲学への関心および読解力・思考力・表現力を問う試験」などもあります。
今回取り上げる総合人間科学部の一般選抜には、「TEAPスコア利用方式」と「学部学科試験・共通テスト併用方式」、「共通テスト利用方式(3教科型)・(4教科型)」があります。このうち、総合問題は「学部学科試験・共通テスト併用方式」の「学部学科試験」として使用されます。(これは上智大学のほとんどの学部に当てはまります)
総合人間科学部の教育・社会・看護学科共通で使用された、「人間と社会に関わる事象に関する論理的思考力、表現力を問う総合問題」について見てみましょう。こちらも参考にしているのは2022年度のものです。

試験時間:75
満点:100
大問1:日本語の文章(ある調査結果とそれに対する考察)が示され、それに対する現代文的な問題に資料の読み解きの要素が加わっている問題。共通テストの試行調査で出題された、現代文の「実用的な文章」に方向性が近いかもしれません。
大問2:論説文を用いた、現代文的な問題。60字の記述問題あり。

一見すると、横書きであることを除いて「現代文の試験のようだな」と見える問題ですが、総合人間科学部の他の学科の問題を見ても分かるとおり、資料・データを読める力といった部分が問われているあたりが「総合問題」たる所以ではないかと思います。
 

Sample3青山学院大学 地球共生学部 【論述】

青山学院大学も近年、共通テスト+独自の総合問題やここで紹介する論述といった試験形式を多く採用しています。
因みにこの「地球共生学部」ですが、どんな学びを行うのかちょっと想像しにくいかもしれないので先に説明しておきます。聞けばなるほどと思うかもしれませんが、地球共生学部は国際系の学部です。学部紹介のサイトには"地球社会のさまざまな課題に挑戦し、持続的発展に寄与したいという高い志と共生マインドをもって、世界の人々と協働できる知恵と力を持った人材を養成することを目指しています"とあります。世界の人々との協働のためには、言語が通じるだけでは足りません。その地域の経済や法律といった社会的仕組みに働きかけ、それを動かせるようにならないと"協働"は実現できないでしょう。こうした目標のために学んでいくのが地球共生学部です。学部名に理念が表れていますね。
さて、この地球共生学部の一般選抜には、「一般選抜(全学部日程)」と「一般選抜(個別学部日程)」、「共通テスト利用入学者選抜」があります。
全学部日程では3教科の大学独自の試験で合否を決めていきますが、学部別日程では共通テスト英語+1科に加え独自試験として論述を行うという形をとっています。上智大学同様、独自試験がコンパクトなので、午前のみ・午後のみの試験もあり、同日でも午前と午後で(別の学部になることが多いですが)併願することも可能です。
では「論述」の問題について見てみましょう。こちらも参考にしているのは2022年度のものです。

試験時間:60
満点:120
大問1:グラフと日本語の文章が示され、グラフを正しく読めている文章・グラフを間違って読み取っている文章・グラフからは判断できない文章を選ばせる問題。
大問2:表やグラフと日本語の文章が示され、読み取れることを記述する問題とテーマについて論ずる記述問題。

 

総合問題のねらい

さて、3つのサンプルを見てきましたが、共通していることがありましたが、分かったでしょうか。
そうです。データ・資料の読み取りといった部分ですね。また、共通テストを併用している点も共通していました。
これは、共通テストで基礎学力・教養といった部分を見て、独自試験で今後専門的な分野で学んでいくにあたり必要な適性を持っているのかを見る、という根底の考えが共通しているためではないかと私は考えています。
それから、こういった総合問題を採用しているのは基本的に文系学部です。試験内容も現代文的な内容が含まれていますね。これを合わせて考えると、文系の学部が欲している人材、すなわちそこから社会に飛び立っていくにあたって必要とされる素養を持った人材には、「文章とデータを客観的に読める」という力が要求されていると言えるかもしれません。

※ 因みに理系学部では、「適性検査」を謳っていても数学などの理系科目の試験であることがほとんどです。

そして、他にも注目すべきことがあります。
もしかしたらここまで読んでくる中で気が付いた方もいるかもしれませんが、公立中高一貫校入試で出される「適性検査」が、今回紹介した試験内容にかなり近い「科目横断型」の試験になっています。
また、共通テストはじめ、高校入試などでも「複数の文章や資料を関連付けて読み取る」問題も増えてきていますが、これも要素として似ていますね。
社会全体の変化の中、教育も変わることが求められ、それに応じて学校の入り口になる入試も変わっていくという分かりやすい例と言えるのではないでしょうか。
近い将来、こういった科目横断型・論述型の入試はもっとメジャーになっていくのかもしれませんね。

<文/開成教育グループ 教育技術研究所 小川真史>