2023/10/23

関東 受験・進学情報だより【東京都立高校男女定員撤廃について】

2024年度入試(202412月実施分)から、東京都立高校の入試において、男女別の定員が撤廃されることが決まりました。今回はこの制度改革がどのようなものであり、どのような影響が予想されるかについてお話していきます。

▼index

男女別定員緩和の経緯

なぜ合格最低点の差などが生まれたの?

男女合同選抜への移行

受験生への影響は?

男女別定員緩和の経緯


これまでの東京都は、都道府県の公立高校で唯一(全日制の普通科の入試で)男女別の定員が設けられていて、全体的に女子は男子よりも高い点数をとらないと合格しにくい傾向があるということが以前から問題視されていました。

都教育委員会は2021年度から、男女別定員を定めている都立高校(単位制及びコース制を除く)の男女合同定員による入学者選抜への移行について、中学校の進路指導に与える影響が大きいこと等を考慮し、段階的・計画的に進めてきました。

2022年度入試では、男女別定員を定めている都立高校(109校)全校において、男女それぞれの定員の10%を男女合同とする男女別定員の緩和措置が実施されました。
どういうことか説明します。入学者の定員が100名だとすると、90%つまり90名までは男女別定員で合格者を決めます。男女45名ずつだとすると、男子の中で成績順に1位から45位の受験生、女子の中で1位から45位の受験生をそれぞれ合格とします。残る10%分の10名は男女での区分けはせずに一律で成績順に合格者を決めていくということです。これは、性別による不平等を解消し、実力主義を重視する方針の一環として行われました。

続いて、2023年度入試では、男女別定員を定めている都立高校(108校)全校において、今度は20%を男女合同とする緩和措置が実施されました。これにより、男女平等への移行が加速し、いよいよ2024年度から男女定員が撤廃された上での入試が始まります。

なぜ合格最低点の差などが生まれたの? ―背景―


上で少し触れたように、男女別の定員となっているということは、男子は男子同士、女子は女子同士で競い合う形になるため、男子であるAさんと女子であるBさんが同じ点数を取っても、Aさんは合格でBさんは不合格となってしまうケースがあります。もちろん、理屈の上では逆のケースもあるのですが、近年女子が不利になりやすい状態になっていました。

ではなぜ、都立高校の入試で男女別の定員が定められていたのでしょうか。少し歴史を見てみましょう。

戦後の復興に併せて人口が急増し、高校進学率も増加するのに伴って都市部では19601970年代に公立高校の新設が行われました。それでも急増する進学希望者を収容できないために、私立高校に対する定員増の要請も行われました。
当時は女子の進学に対しての世間の認識も今と大きく違い消極的でした。家庭での理解も薄いとあって、女子は勉強時間の確保すら難しい状態でしたので、男女同じ基準で高校入試を行うと女子が不利になってしまうという状況でした。教育の民主化の流れの中で、公教育の多くは男女が同数になるように定員を設定し、女子に不利にならないようにした、というのがそもそもの男女別定員制の始まりです。

現代においては、女性の社会進出も進み、女子の高校への進学率もほぼ全員といっても良い状態になっています。男女別の定員は、戦後間もないころに女子にも教育の機会を均等に与えるために設定されましたが、高校進学率の向上と、地域の私立高校との収容人数の影響もあり、逆に多くの地域では女子の方が合格最低点が高くなる、つまり不利になるケースがみられるといった状況が問題視されるようになりました。制度を決めた当時の理念と現実が合わなくなってきたのです。

男女のどちらかが入試において不利になるケースというのは、志願者の男女比が大きく違う場合に出やすくなります。

たとえば国際教育の先進校で、文化部も盛んなことから、女子にも人気の都立三田高校では、23年度入試一般選抜入試の受検者数は男子が156名、女子が215名と女子の方が1.4倍近くも多くなりました。それに伴い女子の合格最低点が男子より32点も高くなりました。このように性別による合格基準の差が大きいという状況は近年都議会でも問題とされてきました。この状態で受検を実施すると、成績上位から合格者を決めていって女子の合格最低点の方が男子より高くなってしまうことも想像できますね。

男女合同選抜への移行


では、実施された緩和措置の結果はどうだったのか見てみましょう。

【参考資料1】緩和措置の実施状況  *東京都教育委員会HPより抜粋

2022年度入学者選抜:109校 2023年度入学者選抜:108

区分

男女合同選抜の場合と同じ結果になった学校

男女合同選抜の場合、女子合格者が増加する学校

男女合同選抜の場合、男子合格者が増加する学校

令和4年度入選

10%緩和

81

74%)

23

21%)

5

5%)

令和5年度入選

20%緩和

99

92%)

9

8%)

0

0%)

女子の合格者が増加する学校の方が多くあったことが分かります。
この実施結果を踏まえて、2024年度入試からは男女合同選抜への意向、つまり男女別の定員を撤廃することが決定されました。一般・推薦入試ともに撤廃され、性別に関係なく、成績順で合格者が決まることになります。

【参考資料2】令和5年度の移行措置での男女の差

20%を男女合同とする緩和措置の実施結果

三田

鷺宮

竹台

富士森

神代

広尾

豊多摩

竹早

日本橋

男女合同と男女別との女子合格者数の差

23

16

12

10

10

3

3

2

1

合格最低点の差(女子-男子)

32

18

51

19

11

13

3

3

7

合格者数

男子募集人員

124

116

96

148

132

81

132

93

111

20%男子合格者数

100

93

77

119

106

65

106

75

89

合同男子合格者数

77

77

65

109

96

62

103

73

88

女子募集人員

113

106

88

134

121

74

121

85

101

20%女子合格者数

141

131

107

170

150

93

150

105

123

合同女子合格者数

164

147

119

180

160

96

153

107

124

*東京都教育委員会HPより抜粋

令和5年度入学者選抜において、男女合同選抜の場合に女子合格者数の差が最も大きい学校は三田高等学校の23人差、男女の合格最低点の差が最も大きい学校は竹台高等学校の51点差でした。

 

令和5年度東京都立高等学校入学者選抜における男女別定員の緩和措置の実施状況等及び令和6年度入学者選抜からの男女合同選抜への移行について|東京都教育委員会ホームページ (https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/high_school/relief/release20230911_02.html) 参照

 

受験生への影響は?


こうなると関心が向くのは、受験生への影響ではないでしょうか。
果たして、入試は大変になるの? それともちょっと楽になるの? 気になりますよね。

実は、男女別の定員が来年度の入試から撤廃されることについて、受験生への大きな影響はないと見られています。

上の参考資料1を見ると分かりますが、多くの学校では緩和措置の前後で変化が無かったと報告しています。これが「大きな」影響は無いとする根拠です。都教育委員会も男女別定員を完全に撤廃した場合の影響は限定的だと分析しました。

しかし、三田高校の例を見たように、例年男女人気の差がある学校はあり、そうした学校には影響が出ることが考えられます。特に、合格・不合格のボーダーラインに居るような受験生には、「昨年だったら合格できたのに......」という状況になることが起こりえます。

ではどうするのか、というと、そこは他の大勢の受験生と変わりません。ボーダーラインではなく、安心して合格できるラインに自分を乗せることです。模試の判定で言えば、60%だと危ういので、80%以上の学力を目指しましょう。

 

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<文/開成教育グループ 教育技術研究所 小川真史>