2026/01/09
藤山正彦のぷち教育学【教授・学習組織 Teaching-study organization】
教授・学習組織
なにやら難しい言葉に思えますが、言い換えると生徒が学習するクラスの編成方法についてです。教育学では、「水平組織」と「垂直組織」の二つの軸に分けてとらえるのが一般的です。この「水平組織」というのはその各教育段階・学年における組織編成の事で、「垂直組織」というのは学校に入学してから卒業するまでどういう組織にするのか、という意味で使われます。
まず、「水平組織」=同じ学年でどのように編成するか、についてですが、公立の小学校では一般的にどの学級も特色が出ないように均等に振り分けられるのが普通です。しかも、その各学級は全教科を担当する先生が担任になる「学級担任制」を取っています。
学級担任制は一人の教師がクラスの子どもと接する時間が長くなりますから、子どもとの信頼関係や理解が深まるというメリットがあります。しかし、教師は全教科を万能に教えることができればよいのですが、個人のスキル差によって、授業の質が担保できませんし、「学級王国論」とも言われるように、学級の一体感が行き過ぎると、他のクラスに対抗心を持つあまり、排他的になりやすいという欠点もあります。
もちろん、教科の専門性に関する欠点を補うために「教科担任制」を導入している学校もありますが、時間割編成上の制約が増え、行事等で授業回数を調整するときに困ったりするようです。
次に「垂直組織」=入学してから卒業するまでの編成方法ですが、日本の義務教育では「学年進級制」=同じ年齢の生徒が同時に進級していくというシステムです。この制度のメリットは、学習面だけでなく、生活面も含めて比較的同じような発達段階の生徒で構成されるので、刺激教材などの選定を画一的に進める事ができます。つまり、日本中の小3・4年生が新美南吉の「ごんぎつね」や「手袋を買いに」を読んで、その感想文を書いていますので、指導するための材料や指導案も日本中の学校の先生が力を合わせて作るためとても高度なものとなっています。
しかし、同一年齢の集団というのは実際の社会生活には存在しない特別な集団ですから、社会生活上の基礎的な訓練になっていないという批判もありますし、そもそも同年齢であっても成長、発達のスピードは同じではないので、学習者の個性が無視されているともいえます。
そこで、編成の方法として「等質編成」と「異質編成」といった考えが生まれてきます。
等質編成というのは、「学力別編成」など比較的学習上の個性が近い学習者を集団として編成する方法です。この方法では、教える側としては日本全体の平均に合わせた教材ではなく、その集団に合わせた教材やカリキュラムを提供することが可能となり、能率的な学習ができるはずです。しかし、そのような選別によって学習意欲を無くしてしまう集団を生むというデメリットもあり、私学はともかく、公教育への導入は限定的となるでしょう。
異質編成というのはまさにその逆です。近年では特別な教育的支援を必要とする児童生徒も通常学級で学べるように工夫する動きもありますが、日本語以外を母語とする子どもが在籍する小中学校も増えてきています。このような集団では、固定的な知識を伝達する場面においては能率を欠きますが、お互いの考えを補い、教え合い・助け合いなどの役割分担を通じて、社会性のトレーニングになるという長所もあるわけです。
したがって、どの編成方法が正しいか、間違っているか、という話ではなく、それらのメリットとデメリットを理解し、適切に使い分ける運用が本来は望ましいわけです。しかし規模の小さい学校では、教員数も少なく、できることが限られます。少子化・人口減少社会を迎え、学校の統廃合もさらに進んでいくと思われますが、経済的メリット以外に、教授・学習組織の多様化というメリットも、行政はもっと伝えていくべきだと感じています。
参考文献
教育技術研究会編 『教育の方法と技術』 ぎょうせい 1993
小島邦宏 『学校と学級の間 学級経営の創造』ぎょうせい 1990
日本教育工学会編 『教育工学事典』実教出版 2000
山川信晃 『授業研究における教育工学的力量』『講座 教師の力量形成4 教育工学実践にとりくむ力量』ぎょうせい 1990
<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>