2020/06/28
藤山正彦のぷち教育学【誤答分析】
こんにちは。藤山です。教育に関するお話をしていきます。
今回は、誤答分析についてお送りします。
お子さんは学校や塾で受けたテストを返却された後、どのようにしていますでしょうか?点数だけ見て、一喜一憂するだけ、という方も多いと思いますが、見直しが大切なのは言うまでもありません。 しかし、単にもう一度見るだけでは次のテストの役には立たないと思います。では、どうすれば良いかといえば、まずは「分析」です。
理解の不十分なところや誤った理解をしているところを明らかにさせましょう。中学校2年生の数学を例にとると、「連立方程式の応用(文章題)」で点数を落としている場合、「文章から式を作る」→「式を計算しやすくするように変形」→「その式の形からふさわしい計算方法を選ぶ」→「計算してx、yの値を求める」→「設問にふさわしい単位などを付けて解答する」というプロセスの、どの段階でつまずいているのかを確認しましょう。実はこの例で、1段階目で失敗した場合は、文章題のパターンに応じて式を立てる練習をすれば、解決することになります。中には「文章題は文字を読まなくてはいけないので面倒くさい」などという元気な男子(?)が居たりしますが、その場合は、文章をそのまま式に直すことができる短い文章題から段階的に取り組み、そのストレスを取ってあげればコロッとできるようになります。
また、その内容を学んだ時期から、当時の学習状況を評価することもできます。例えば夏休み明けに学んだはずの単元・分野が定着していないとすると、そのころの生活を思い出してみましょう。学校行事や部活の試合などで、家庭学習の時間が減っていた可能性はないでしょうか。今後に向けてその習慣を見直すなどの解決方法も見つかるはずです。
教育学ではその誤答分析方法に二通りのアプローチを提案しています。
量的分析
数値を使って分析する方法です。
たとえば、「この問題は簡単だ」といっても、どの程度簡単なのかが分かりませんが、通過率(正解した受験者の割合)を求めれば数値にすることができます。たとえば98%の子どもが正解した問題だ=とても簡単な問題だ、というふうに難易度を数値化することができます。そしてその数値順の高いものから順に並べるとすべての小問が難易度順に並ぶことになります。そして、そこにその個人が正解したか不正解だったかの印をつけると、普通は易しい問題が出来ていて、難しい問題が出来ていないという結果になります。(模擬テストによっては個人成績表にこのような資料が添付されています)
易しい(正答率の高い)問題の中に誤答があったとすると、その分野に関連する基礎知識に欠けている可能性がありますが、難しい問題の誤答が少ないのに、易しい問題で点数を失っている場合は、不注意による間違いだったのかもしれません。つまり問題文を読み飛ばして解答方法を間違えているなど、試験の受け方も含めてケアレスミスを防ぐ方法を見つけなければいけない、という事になります。つまり同じ70点を取った生徒でも、その通過率と自分の誤答を重ね合わせると、対応が違ってくることになります。私たちが模擬テストの受験を勧める理由は、そのデータが公表されているものも多く、それを利用して対策も立てやすいからです。
質的分析
内容や構造を元に分析する方法です。
たとえば、国語のテストで、漢字や文法などの知識ものは正答率が高いのに、読解問題の特に記述が含まれる問題が出来ていないとすると、まとまった文章で答えるのが不得意であるのか、文章の読み取りに時間がかかるなどで、実質的に読めていない、という原因が考えられます。そこで、本文の内容一致などの記号問題を見ると、そちらは正答率が高かったとしましょう。すると、これは読解力ではなくて、記述の力が問題、となります。さらに、答案の他の問題の記述部分を見ると、「なぜですか?」という設問に対して、「~である事」と答えている。これは「~だから。」と答えるべきだという「解答方法のルール」を定着させればよい、というふうに具体的な解決方法が見えてきます。
と、ここまで読んでいただいた方は、お子さんにも次回の試験後の誤答分析をさせたいとお感じになっていると思いますが、実は誤答分析というのはそんなに簡単なものではありません。
昨年の論文ですが、琉球大学教育学部のチームが附属中学校の中3生を対象に行った研究調査があります。定期テストで数学と国語で間違えた問題に対して、その理由をレポート形式で書かせてみたところ、無効な教訓と考えられるものが3~5割占めたそうです。国立大学附属の中学というわけで、学力層の高い生徒も数多く在籍しているはずですから、一般の公立中学でこの調査を行えば有効な教訓が得られる生徒はもっと少なくなると思います。つまり、子ども自身で答案分析を行っても、半数以上がその間違いの理由や改善につながる対策を見つけることができないと考えられます。
フリーステップ・ソフィアでは、学校で行われた定期テストや実力テストが返却されたら、塾に持ってきて先生と一緒に内容を確認する、ということを推奨しています。これは子ども自身ではできない誤答分析を先生とともに行うことによって、子どもは次のテストに活かすことが出来ますし、先生もこの分析から、次に同じような内容を教えるときには先回りして、このような間違いが無いように注意をするなど、授業の改善にもつながります。このように大切な目的があるのですが、残念ながら「今日は持ってくるのを忘れていた」「答案を無くした」などと持ってきてくれない場合もありますし、「もう終わったテストを見ても、次のテスト範囲とは違うので意味が無い」という生徒さんもいらっしゃいます。ご本人としては満足のいかなかった点数の答案を何度も広げるのは確かに勇気のいることかとは思いますが、なにとぞご家庭でも誤答分析の利点を説明し、答案を持って行くように促していただけると助かります。
【参考文献】
・Anderson,J., Cognitive psychology and its implications,3rt.Ed.,W.H.Freeman & Co. 1990
・教育技術研究会編 『教育の方法と技術』 ぎょうせい 1993
・野口裕之・海保博之(編) テストをテストする 心理・教育データの解析法 10講 基礎編 福村出版 1985
・道田泰司 仲宗根亜矢子 小島哲夫 「中学生は誤答をどのように分析するか? : 誤答レポート内容の検討」琉球大学教育学部紀要 No.92 2018
・日本教育工学会編 『教育工学事典』 実教出版 2000
<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>
【フリステWalker 第133号(2019.11月)掲載】