2025/10/06
藤山正彦のぷち教育学【誤答分析 Error Analysis】
お子さんは学校や塾で受けたテストを返却された後、どのようにしていますか?点数を見て一喜一憂するという反応が多いと思いますが、テストは点数よりも見直しが大切だと言われています。しかし、単に答案をながめているだけではあまり次のテストの役には立たないと思います。今回はその「見直し」とはどういうことかをお伝えしたいと思います。
まずは「分析」という視点を持つことです。不十分、もしくは誤った理解をしている「段階」を明らかにさせましょう。中学校の数学を例にとると、「連立方程式の応用(文章題)」で点数を落としている場合、「文章から式」→「式を計算しやすくするように変形」→「その式の形からふさわしい計算方法を選ぶ」→「計算してx、yの値を求める」→「設問にふさわしい単位などを付けて解答する」というプロセスの、どの段階でつまずいているのかを確認しましょう。実はこの例の1段階目で失敗した場合は、文章題のパターンに応じて式を立てる練習をするだけで解決することになります。また、複数の科目で夏休み明けに学んだはずの単元・分野が定着していないとすると、そのころの生活を思い出して、学習時間が不足していたのであれば、そのフォローと併せて生活習慣を見直すことができれば未来の解決にもつながります。
さて、教育学ではその誤答分析方法に二通りのアプローチが提案されています。
「量的分析」=数値を使って分析する方法です。
「この問題は簡単だ」といっても、主観的な表現ではその程度が分かりませんが、通過率(正解した人数割合)という数値化を行うことによって比較する事ができます。たとえば、98%の受験者が正解した設問はとても簡単、というふうに難易度を比較することができます。この数値を元に配点を調整すれば、科目や回数による平均点の変動を小さくすることも可能です。
受験した側の使い方に戻りますが、その数値の一覧表の上にその個人が正解・不正解の印をつけてみます。普通は易しい問題は正解で、難しい問題ができていないという結果になるはずですが、易しい問題の中にも間違いがあったとすると、その分野に関連する基礎知識に欠けているために復習が必要か、ケアレスミスが多いため、それを防ぐ方法を見つけなければいけないか、という2通りの解決法がみつかります。このように同じ点数を取った生徒でも、その通過率と自分の誤答を重ね合わせることで異なった対応法を見つけることができます。この分析を行うにはそれぞれの小問ごとの正答率が必要ですので、そのデータが公表されている模擬試験を利用すると良いでしょう。模試の個人成績票の偏差値や志望校の合否判定は受験生にとって関心の高い情報だとは思いますが、本来は単元や小問ごとの正答率に着目することの方が重要だといえるでしょう。
「質的分析」=内容や構造を元に分析する方法です。
たとえば、国語のテストで、漢字や文法などの知識ものは正答率が高いのに、読解問題の、特に記述が含まれる問題ができていないとすると、まとまった文章で答えるのが不得意であるのか、文章の読み取りに時間がかかるなどで、実質的に読めていないか、の二通りの原因が考えられます。そこで、本文の内容一致などの記号問題を見ると、そちらは得点できているとしましょう。すると、これは読解力ではなくて、記述力不足が原因、となります。さらに答案の他の記述部分を見ると、「なぜですか?」という設問に対して、多くの場合は「~だから」と答えるべきところを「~である事」と答えていたとしましょう。そうであれば、記述解答のルールを定着させればよいというふうに解決に繋がっていきます。
誤答分析をすることによって、子どもは次のテストに活かすことができます。一方教える側にとっても、この分析から、次に同じような内容を教えるときには先回りして、このような間違いが無いように注意をするなど、授業の改善にもつながります。塾や学校の先生は、テストの採点に多くの時間を費やしていますが、これは生徒に点数を付けるという作業ではなく、自分の授業を反省する時間でもあります。私も授業を担当していた頃、テストが終わったら、必ずその日のうちに採点していましたが、正答率の悪い答案を見ると、その子に対する申し訳なさで落ち込んでいたものです。
もう終わったテストを見ても、次のテスト範囲とは違うので意味が無い、というある意味さっぱりした性格のお子さんもいるとは思いますが、分析の利点を説明し、一度一緒に細かく分析すると、その必要性が分かってもらえるかも知れません。
<文/開成教育グループ 入試情報室 藤山正彦>