2025/10/06

関東関西有名中学入試分析【中学受験 社会の勉強法をお教えします!(受験生編)】

 今回は中学受験における社会(社会科)の特徴と学習方法(受験生編)についてお話をしたいと思います。中学受験の学習において、算数や国語と比べると重要度が下がるとされる社会科ですが、的を得た勉強法に基づき時間をかけて勉強を進めていくと、算数や国語と比べて、実力や得点力は上昇しやすい科目なのです。中学受験の社会の特徴と勉強方法を理解して、社会科を得意科目、得点源となる科目になる一助となれば幸いです。

社会の勉強法 受験生編:データベースノートの作成と時事問題対策

 ここからは来春に中学入試本番を控えた小6生の社会勉強法について述べていきたいと思います。ここで示す勉強法は、上記で示してきた社会科に関する「体系的な理解」が地理分野、歴史分野、公民分野いずれもある程度なされている前提となるものです。

 小6生の夏休み以降の中学受験勉強の中心は、志望校や受験予定校の過去入試問題、模擬試験(模試)などを用いての演習学習です。過去問や模試などを解いていき、正答に必要な知識や解法を確認し、忘れていたり、まだ学習が十分でなかった項目を再学習していきます。

 社会科の場合も入試過去問、模試、問題集を使った演習が小6生秋季以降の受験勉強の中心となりますが、私は社会科の講師時代、「データベースノート」の作成を受験生に指導していました。

 「データベースノート」と書くと難しそうなイメージですが、過去問、模試、問題集などで解いた問題のなかで正答できなかった項目の用語名称や補足知識を、都度ノートにメモ書きをしていくことです。

 「データベースノート」の具体的な作成方法、活用方法を示したいと思います。

【データベースノートの作成・活用方法】

①地理、歴史(日本史)、公民・時事で各1冊ノートを用意する。

②用語を正確に書くためノートはマス目(方眼)入りノートを推奨(横線ノートでも可能)。

③地理は北海道、青森、岩手・・・と47都道府県ごとに、1都道府県見開き1ページを確保。

④歴史は縄文(以前)、弥生、古墳、飛鳥(白鳳)、奈良、平安前期(貴族社会・摂関政治)、平安後期(院政~平氏盛衰期)、鎌倉、南北朝・室町(応仁の乱より前)、戦国(応仁の乱以降)・安土桃山、江戸前期(享保の改革の前)、江戸中期(三大改革~ペリー来航前)、幕末期(開国~大政奉還)、明治、大正、昭和前期(太平洋戦争まで)、昭和戦後、平成・令和の各時代区分で見開き1ページを確保。

⑤公民・時事は日本国憲法(人権・平和主義など)、立法権(国会・選挙など)、行政権(内閣・省庁など)、司法権(裁判所など)、地方自治、経済(貿易・財政・税金など)、国際社会(国連・国際機関など)、アジア(中国・韓国・ASEANなど)、ヨーロッパ(EU諸国・ロシア・ウクライナなど)、アメリカ(カナダ・中南米を含む)、その他諸国(中東・アフリカ・オセアニアなど)、環境問題、日本の時事問題、海外の時事問題(各国スペースにも記載)などの区分で、見開き1ページ確保。

⑥過去問、模試、問題集などの問題演習で正答できなかったり、知識を忘れかけていたりした用語があれば、対象区分のところにその用語を書く(用語の長い説明書きは不要)。用語を書く順序(年号順など)の整理は不要。

→例えば、群馬県にある官営の製糸場の名称が答えられなかった場合(正解:富岡製糸場)、地理ノートの群馬県のページには「富岡製糸場」と書き、歴史ノートの明治時代のページには「富岡製糸場(群馬県)」と書く。旧国名に関する問題で、薩摩藩、長州藩が現在のどの都道府県にあったかがわからなかった場合、鹿児島県のページに「薩摩藩」、山口県のページに「長州藩」をそれぞれ書き加える。

⑦ノートには用語のみの記載で構いません。補足事項を付け足す場合は()書き、最小限でOK

→例:天台宗(最澄・延暦寺・比叡山)、真言宗(空海・金剛峯寺・高野山)、八幡製鉄所(日清戦争の賠償金)

⑧用語を書き足していったノートは1週間に1回(週末)は読み返し、用語の意味や関係事項を思い出す。忘れた場合は電子辞書やスマホで、その場で調べ直す。

 この「データベースノート」、書き始めて1ヶ月もすると、かなりの用語がたまってくるはずです。それらは既に学習し、一度間違えたり、理解・記憶が曖昧で再学習をしている用語ですから、読み返すと比較的スムーズに用語の意味や重要事項が思い返せるはずです。また、書かれた用語の関連用語、類似用語の再確認もしやすく、単純な作業ですが、用語の理解、ひいては社会の得点力は上がりやすくなるはずです。

【時事問題対策】

 時事問題、すなわち2025年や近年に起こった出来事やニュースに関連した入試問題ですが、毎年のように時事問題を出題する中学校もあれば、直近の出来事や関係人物名などをストレートに問うことはしない中学校もあります。時事問題が毎年、ストレートに出題される中学校を受験する場合はもちろんですが、志望校が時事問題をストレートには出題をしなくても、時事問題と関連したテーマが例年に比べて出題されやすくなるの間違いはありません。

 2025年の時事問題について、中学受験の出題テーマと関連することに絞って述べていきたいと思います。

【資料1】2026年入試に狙われやすい時事問題
①参議院通常選挙(選挙制度、消費税・財政問題など)
②トランプ米大統領関係(共和党、関税問題、学問の自由問題、三権分立など)
③米価高騰問題(減反政策、米作など)
④ローマ法王(教皇):フランシスコ(1世)→レオ14世
⑤韓国大統領:尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏(弾劾)→李在明(イ・ジェミョン)氏
⑥中東問題(イスラエル、パレスチナ、イランなど)
⑦万博(大阪・関西万博)関係
※資料1は2025年8月現在の時事問題

 【資料1】に示したのは、2025年の1月から8月にかけて起こった出来事のなかで、中学入試社会の入試問題において出題の可能性があると思われるテーマです。

①参議院通常選挙に関しては、選挙の結果や与党・野党の区分けよりも、選挙制度(衆議院・参議院の選挙制度・被選挙権の違い、比例代表制の議席選出方法〔ドント方式〕など)や参議院選挙で大きな争点となった消費税の変遷(税率の変化)や消費税の長所・短所の理解が重要です。

②トランプ米国大統領については、アメリカ大統領の選挙制度やアメリカにおける三権分立(権力抑制)制度が中学入試で問われることはまずないと思いますが、日本における三権分立制度や(日本国憲法23条で規定をされている)学問の自由、関税制度、円安・円高のメリットとデメリットなど、トランプ氏に関わる事象を日本で置き換えた場合のことは入試で狙われやすくなると思われます。

③米の値段が今年、高騰しました。米への関心が高まった年となり、米の生産過程や米の生産量調整のために行われた減反政策、日本で輸入米が少ない理由など、米や稲作についても中学入試で狙われやすいテーマだと言えます。

④今年4月、キリスト教カトリック教会の最高指導者のローマ法王(教皇)であるフランシスコ(1世)が逝去し、アメリカ合衆国出身のレオ14世がローマ法王に就任しました。特にカトリック系の中学校を受験希望の方はふたりの新旧法王の名前、ローマ教皇庁のあるバチカン市国(イタリア・ローマ市内)の場所の確認はされたほうがいいと思います。

⑤韓国では今年、尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が大統領を罷免(ひめん)となり、選挙によって李在明(イ・ジェミョン)氏が当選し、新大統領に就任しました。新旧大統領の名前はもちろん覚えたほうがいいのですが、それ以上に重要だと思われるのが、日本において、首相や地方公共団体の首長(知事や市町村長)、裁判官などを解職させる手順や条件の確認です。

⑥ロシアとウクライナの戦争状態が続くなか、イスラエルとパレスチナの武力紛争も激化し、イスラエルによるイランへの攻撃など、中東情勢は不安定なままとなっています。イスラエル、パレスチナ、イランの地図上の位置を確認して欲しいのですが、加えて、戦争や武力紛争を抑制するための国際組織(国連の安全保障理事会などの各組織)やPKO(国連平和維持活動)について、仕組みや役割を確認しておくといいでしょう。

⑦今年4月から、大阪市(此花区)夢洲(ゆめしま)で日本国際博覧会(大阪・関西万博)が開催となりました。博覧会国際事務局(BIE)が認定した博覧会を国際博覧会(通称 万博)と称しますが、日本で開催された万博は今回の大阪・関西万博で6回目となります。大阪府で3回(1970年:大阪万博、1990年:花の万博、2025年:大阪・関西万博)、あとは沖縄県(1975年:沖縄海洋博)、茨城県(1985年:科学(つくば)万博)、愛知県(2005年:愛・地球博)でそれぞれ1回実施されています。今回の大阪・関西万博に関する細かな知識ではなく、万博に参加をした国や地域と繋げた出題がなされる可能性があります。

 時事問題で海外に関するものは、海外に関する細かな知識ではなく、例えば、トランプ大統領のような専制的な政治的指導者に対する日本のチェックや権力抑制のしくみ、韓国で起こった大統領罷免のような制度が、日本の政治指導者に対してはどのようなものがあるのか、など、日本で当てはめた場合の制度や仕組みについて、問われる可能性が高いと思われます。

 

 今回は中学受験の社会について、科目の特徴や勉強方法について述べてきました。小6生の中学受験本番まで1年を切ってからは、地理・歴史・公民の「体系的な理解」がある程度進んだ前提で、志望校の入試過去問の形式や傾向を掴みながら先述の「データベースノート」も作成して、効率的な学習を進めていきましょう。社会科は努力が実を結びやすい科目です。効率的な学習により、中学受験における社会が皆さんの合格を大きく後押しする科目、得意科目となることを願っています。

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関東関西有名中学入試分析【中学受験 社会の勉強法をお教えします!(基本編)】

 

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>