2025/06/09

中学生が理科を効率的に学ぶための勉強法

中学生の学習において、まず目指してほしいのが定期テストの点数アップです。今回は定期テストに対応する力を養うための、理科の効果的な勉強方法について紹介します。

■理科の基礎を固める重要性と学習法

理科の「基礎力」とは、語句の意味内容を正しく理解し、実験や自然現象について説明できる力のことです。具体的には、以下の3つが重要です。まずは、この3つのポイントを意識して学習を進めていきましょう。

① 理科用語の正確な理解

定期テストでは、「光の反射と屈折」「水溶液とイオン」「植物のつくりとはたらき」など、各単元で多くの専門用語が出てきます。「用語を覚える」だけではなく、「意味を自分の言葉で説明できるか」が大切です。

例:「蒸留」=「混ざった液体を加熱して、沸点の差を利用して分ける操作」と言えるようにする。

② 実験内容・手順・結果の理解

理科では、実験に関する問題がよく出題されます。「何を調べる実験か」「使う道具」「変化する条件と変化しない条件」を整理して覚えることが重要です。

例:「鉄と硫黄の加熱」「混合物と化合物の違いを調べる実験」であり、加熱の有無によって変化がどう起こるかを説明できるようにします。

③ 現象の原因や仕組みの説明力

暗記だけでなく、「なぜそうなるのか?」を考える姿勢が理科の得点を伸ばします。

例:「なぜ水は0℃で凍るのか」「なぜ天気によって気圧が変わるのか」

これら3つのポイントをおさえて学習をすすめることで、記述式の問題や応用問題への土台ができ、定期テストの得点アップに直結していくでしょう。

教科書を活用した基礎知識の復習

理科の教科書には、テストに出る大事な情報がたくさん載っています。だからこそ、教科書をうまく使うことで効率的に満遍なく復習をすることができます。

まずは、出題頻度が高い「太字語句」を意味とセットでおさえましょう。この時、音読しながら覚えることで目と耳の両方で認識するができ、記憶の定着がアップするのでおすすめです。難しい説明文も、声に出すことで「自分の中のことば」として定着しやすくなります。

次に、図・表・グラフを「見る」だけでなく「写す・説明する」ことに取り組みましょう。教科書にある図や表は、「視覚的に理解させるため」の重要なヒントです。見て終わりにせず、自分のノートに書き写しながら説明を加えるのが効果的です。実験の場合は「目的・手順・結果・考察」に分けて整理し、その構造を整理して頭に入れていきましょう。

ノート整理で効率よく学ぶ方法

過去記事「中学生のための定期テスト勉強法ガイド」の「ノートの取り方と復習のコツ」を参照してください。

URL : 中学生のための定期テスト勉強法ガイド【定期テスト攻略の基本】 |

重要語句と基本用語の暗記方法

過去記事「中学生のための定期テスト勉強法ガイド【定期テスト攻略の基本】」の「暗記術と繰り返し学習」を参照してください。

URL : 中学生のための定期テスト勉強法ガイド【定期テスト攻略の基本】 |

■分野別に見る理科の勉強法

ここまで「理科」と一括りにしてきましたが、ここからは「生物」「化学」「物理」「地学」の4つの分野に分けて、それぞれの勉強法について見ていきましょう。

「生物」の勉強法

生物は「細胞」「蒸散」「受粉」「DNA」など、専門用語が非常に多いです。まずは教科書の太字語句を「自分の言葉」で説明できるレベルを目指しましょう。次に生物の理解に欠かせないのが図解です。細胞の構造や消化の流れ、植物の分類などは「図で覚える」ほうが圧倒的に効果的です。そして実験は「手順を覚える」だけでなく、「なぜそれをやるのか?どうしてその結果になるのか?」を説明できると強いです。

テスト問題の特性で言うと、「動物と植物」「単子葉類と双子葉類」「無脊椎動物と脊椎動物」など、対比構造がよく出題されます。このあたりはややこしいですがしっかり識別することを心がけましょう。「生物」は実は身近な現象の宝庫です。自分の体、家の植物、食べているものなどと結びつけると、「丸暗記」ではなく「体感的に理解」できます。

「化学」の勉強法

化学では、「物質の性質や変化の仕組み」を理解し、それをもとに説明や計算を行う力が求められます。単なる暗記ではなく、なぜそうなるのかを論理的に考える力が必要です。質量保存の法則や化学変化、状態変化などを扱うため、図や表をもとに考察する問題も多く、計算と文章の両方の力が問われます。そのため、化学の点数をアップさせるためには、以下のステップに沿って勉強していくことが効果的です。

ステップ1:語句と基本概念を理解する

教科書の太字語句や図を使い、用語の意味や現象の流れを確認します。たとえば、「酸化=物質が酸素と結びつく変化」という定義を覚えたら、「鉄がさびる=酸化」という身近な例を関連づけて確認します。暗記だけでなく、実際の現象と結びつけることが重要です。

ステップ2:仕組みを説明できるようにする

「なぜその変化が起こるのか」を、自分の言葉で説明できるようにノートにまとめましょう。質量保存の法則(化学反応の前後で、全体の質量は変わらない)については、「反応前後で質量が変わらないのは、原子の数が保存されるから」と短く説明できるようにしていきます。

ステップ3:基本計算を正確に解く練習をする

質量保存や化学反応式など、定番の計算問題を繰り返し解き、手順を習得します。たとえば、「マグネシウムと酸素が反応してできた酸化マグネシウムの質量を求める」問題では、まず、質量保存の法則に基づいて、「マグネシウムの質量+酸素の質量=酸化マグネシウムの質量」という関係に着目する必要があります。「マグネシウム24gが完全に酸素と結びついたとき、反応した酸素は16gである。」と情報が与えられていれば、酸化マグネシウムの質量は24g+16g40gとなります。

ステップ4:図や表を読み取る練習をする

グラフや実験結果から内容を読み取る問題に慣れていきましょう。酸化マグネシウムなどの化学変化についての単元であれば、時間と質量のグラフから、反応の完了点(鉄の加熱によって質量が増えなくなった時点)を読み取る練習をしていきます。

「物理」の勉強法

物理では、身の回りの現象を数式やグラフを用いて理論的に説明する力が求められます。光や音、力、電流、運動などの単元で、公式の理解と活用が必須です。単なる暗記ではなく、「なぜそうなるのか」を筋道立てて考える力や、単位・記号の扱い、複数の条件を整理する力が問われ、計算問題と図の読み取りが多く出題されるのが特徴です。

物理の勉強法は基本的には化学と同じですが、物理は数式や単位、公式の使い方が混乱しやすい単元となっています。そのため、特に以下のポイントに注意しながら学習を進めていきましょう。

ポイント1:単位の意味を意識しながら問題を解くようにする。

g/cm³」などの単位をきちんと覚えておくと、万が一公式を忘れてしまったときでも、単位の意味から公式を導き出すことができるため、非常に便利です。
 たとえば、密度を求める公式を忘れてしまったとします。言葉だけから公式を思い出すのは難しいかもしれませんが、「密度の単位が g/cm³ である」と知っていれば、g(質量)を cm³(体積)で割ればよいことがわかります。
 このように、単位の知識が公式の理解や定着に役立つこともあるので、ぜひ覚えておきましょう。ただし、公式を使う際に単位そのものを間違えてしまうと、答えもずれてしまう可能性があるため、注意が必要です。

ポイント2:公式を丸暗記せず、「意味」で理解する。

単元ごとの基本公式(例:仕事=力×距離、VI×Rなど)は、「どんな場面で、何を表しているか」を自分の言葉で説明する練習を積むことで、丸暗記に頼らず応用力を身につけることができます。このような理解があれば、1つの公式でも求めたいものが変わったときに、落ち着いて対応できるようになります。

たとえば、電気の単元で学ぶ公式「V(電圧)=I(電流)×R(抵抗)」について、「電流を流そうとする力(電圧)が強く、電気の通りにくさ(抵抗)が小さいほど、電流は多く流れる」という関係をイメージとして覚えておけば、たとえ公式を一時的に忘れてしまっても、意味から逆算して自力で導き出すことができるのです。

「地学」の勉強法

中学地学では、天体・気象・地層などの自然現象のしくみや、図やデータの読み取りがよく問われます。まずは基本用語を図とともに覚え、天気図や地層の重なりを読み取る練習を重ねましょう。星の動きや地震の到達時間などの計算問題も頻出です。日常の現象と結びつけて考えると理解が深まります。教科書・ワークの図表やまとめ問題を繰り返し解き、定着させることが得点力アップの鍵です。以下のポイントを意識しながら学習を進めていきましょう。

ポイント① 図や写真とセットで用語を覚える

地学では、雲の種類、地層の重なり、星の動きなど、視覚的な理解が求められる内容が多く出題されます。ただ用語を暗記するのではなく、必ず図や写真と一緒に意味を押さえるようにしましょう。特に前線の様子や地層の重なりなどは、実際に手を動かして書き写すことで、用語とその仕組みの関係が身につきやすくなります。視覚と結びつけた記憶は忘れにくく、テストの図解問題にも対応しやすくなります。

例:前線と天気の変化
「寒冷前線」という言葉を覚える際、図とセットで「寒気が暖気を押し上げて積乱雲ができ、雨が短時間に強く降る」様子を視覚的に理解すると、記憶に残りやすくなります。
さらに前線の模式図上で「三角の記号」を見つけて、どんな天気が起こるかを予想する練習をすれば、図表問題にも強くなります。

ポイント② 実生活と結びつけて考察する習慣をつける

地学の内容は、天気予報や季節の変化、地震速報など、日常生活と密接に関係しています。例えば「なぜ冬は星がきれいに見えるのか」「夕焼けが赤くなる理由は何か」といった問いを通して、学んだ知識を実生活に当てはめて考えることで理解が深まります。テストでも、図や観察記録をもとに他の現象や実験結果を推論する問題が多く出題されるため、知識をただ覚えるのではなく、意味を考えて使う練習が大切です。

例:日の出・日の入りの時刻の変化
冬と夏で日の出の時刻が異なることを身の回りの体験と結びつけ、「太陽の通る高さ(南中高度)」の違いや、太陽の動きと季節の関係を考察することで、抽象的な内容も実感を伴って理解できます。
こうした経験は、「夏至のころの日照時間はなぜ長いか」といった記述問題にも対応できます。

■定期テストと入試に向けた学習計画

ここからは、これまで述べてきた理科の科目上の特性や勉強方法を踏まえて、定期テストや入試に向けた、応用的な学習計画について見ていきましょう。

定期テスト範囲の効率的確認法

まずは、テスト範囲表と教科書の対応ページを照らし合わせましょう。配布されたテスト範囲表をもとに、教科書・ノート・ワークの該当ページにマーカーや付箋をつけることで、出題範囲の全体像を把握できます。「ここからここまで」と線で示すだけでなく、「重要図表」「覚えるべき語句」なども明確にしておくと復習が効率的になります。

ワークや問題集の活用で繰り返し練習

ワークや問題集で繰り返し練習することで、知識の定着と解法の習熟の両方を図ることができます。理科では、語句や法則を覚えるだけでなく、計算・図の読み取り・記述問題など多様な形式に対応する力が必要です。1回の演習では理解できても、時間が経つと忘れてしまうことが多いため、繰り返すことで記憶が強化され、反射的に解けるようになります。

さて、繰り返しの勉強方法は以下のものが効果的です。

① 1回目は「正解かどうか」より「なぜそうなるか」に注目する

1周目は答えを当てることよりも、解説を読んで原理原則を理解することが最優先です。わからなかった問題にはチェックを入れ、ノートに「どこで間違えたか」「なぜそうなるか」を簡潔にメモしましょう。特に理科では「理由を説明させる」問題が増えているため、用語だけでなく因果関係の理解が重要です。

② 2回目以降は「間違えた問題」だけを集中復習

2周目以降は、1回目にミスした問題・迷った問題だけを抜き出して解き直すのがポイントです。新たに間違えたら再チェックし、「間違えた理由」を自分の言葉で説明できるようにしましょう。こうすることで、ただの繰り返しではなく、確実に定着させる反復練習になります。

記述問題や応用問題への対応方法

中学理科の記述問題や応用問題に対応するには、単なる暗記では不十分です。理由・因果関係・観察データの読み取りなどを自分の言葉で説明できる力が求められます。これらの対策のポイントと効率的な練習方法について見ていきましょう。

〈対応のポイント〉

  1. 「なぜ?」を説明できるようにする
    例:「なぜ霧は晴れやすく、雲は晴れにくいのか」

→「霧は地面に近く、日光で地面があたたまるとすぐに蒸発するため晴れやすいが、雲は高い空にあり気温が低く蒸発しにくいため晴れにくい。」

→現象の仕組みを因果関係で整理します。

  1. 観察結果から「いつ・どこで・なぜ・どのように自然現象が起きたか」を推論する練習を積む
    グラフや表を読み取り、「結果考察推論」をする力が必要です。
  2. キーワードを含めて短く正確に書く習慣
    記述は採点しやすいように「理科的な語句や法則(例:蒸発、反射、酸化、質量保存の法則など)」を使って簡潔にまとめるのがコツです。

〈効果的な練習方法〉

  1. ワークの記述問題を「音読書く」で反復練習
    最初は模範解答を声に出して読み、言い回しに慣れたら自力で書く練習に移ると定着しやすいでしょう。
  2. 「理由を20字以内で説明せよ」のような制限つき練習
    自分の言葉で簡潔に書く力がつきます。時間内に説明する練習にもなります。
  3. 間違えた記述は、「なぜその答えになるのか」を自分の言葉で再説明
    単に模範解答を写すのではなく、説明を自分なりに再構築することで理解が深まります。

■中学生の理科の勉強法におけるまとめと総括

理科を効率的に学ぶためには、まず語句の意味内容を正しく理解し、実験や自然現象のしくみを自分の言葉で説明できる力を育てることが重要です。教科書の太字語句をもとに、図・表・グラフを活用しながら学ぶことで、知識の定着が深まります。特に「なぜそうなるのか」と因果関係を考えたり、観察結果から推論したりする練習は、記述問題や応用問題への対応力につながります。また、分野ごとの特徴をおさえた勉強法──例えば、物理では単位や公式の意味、地学では視覚的な理解と実生活との結びつき──も大切です。教科書で学んだ内容が日常生活の中で判断に活かせる場面は多くあります。理科は単なる暗記科目ではなく、「なぜ?」を問い、繰り返し学ぶ中で応用力を高め、日々の生活や将来に役立つ"使える知識"へと変えていく教科なのです。

 

< 文/開成教育グループ 個別指導統括本部 教育技術研究所 >