2021/05/10

学部の違いって何?「文学部語学系学科」&「外国語大学」&「国際関係学部」後編

後編

▶前編はこちらから

今回参加してくれた講師のみなさん(五十音順)

桂 夕貴かつら ゆき    (阪急茨木教室)   立命館大学 国際関係学部
河野 力暉也かわの りきや  (箕面教室)      大阪大学 外国語学部 ヒンディー語
後藤 健太郎ごとう けんたろう  (保谷教室)      上智大学 文学部 英文学科
櫻井 敦史さくらい あつし  (森小路駅前教室)  関西外国語大学 英語国際学部
中野なかの まき   (狭山教室)     近畿大学 国際学部
藤井 綾音ふじい あやね   (JR吹田教室)    同志社大学 グローバル地域文化学部
三村 浩輔みむら こうすけ  (王子教室)     法政大学 文学部 英文学科

質問者Duran(藤本 憲一):フリステウォーカー講師編集部員。Duran執筆の記事「Duranの留学記」配信中。

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Duran:先ほど教職を希望されていると発言いただいた方が数人おられたのですが、学部的に就職状況はどうなのでしょうか?一昔前は、文学部系・語学系は「就職の墓場」なんて言われている時代がありましたが、最近ではどの企業さんも「文学部系や語学系の学生は幅広い知識を待つ人が多く、よく勉強している学生も多い」と評価が好転している、というデータもあるそうで、実際のところはどうなのでしょうか。

 

中野:学部で見ると、就職は外資系志望の学生が多いですね。後は航空業界。ANAの人がやってきて、航空ビジネスの講義を開いてくれていたりします。やはり語学力を活かす職種に需要を感じます。

櫻井:キャビンアテンダントの出身大学一位の実績(※大学通信調べ)があり、やはり航空関連が多いです。学内に航空機の模型があり、その中で仕事のシミユレートをする講義もあります。それから、ホテル業界ですかね。やはり語学の活かせる業界が多いです。ただ、国際学部の人はあまり学校に就職先を報告していないのでは、という気がしているのではっきりとは分からないですね。個人的には外国語大学だからこの業界、というのはないかなと思っています。

三村:実は文学部なのに情報通信系が僕の学部では1位なんですよ。あとは営業職、教職が多いですね。大学にはキャリアセンターというところがあって、就職に関して手厚いフォローをしてくれます。文学部のキャリア形成という講義もあり、公務員・教員・人材派遣など、いろいろな業種に就いている文学部のOBの方がいらして、講義をしてくださいます。これをきっかけに就職について考え始める学生もいます。大学院に通いながら、私立の非常勤をされていて、そのまま私立の教員になられた方の話は、教員を目指す身としてはかなり印象的でした。

後藤:僕は2回生なので、まだ就職は考えていないんですけど、志望は教員です。もっとスキルを上げようと頑張っているところです。

河野:僕も2回生ですので就職については未定です。外国語学部は普通、選択言語によって職業や就職の選択の幅も狭まると考えられがちだと思うのですが、先輩たちはメーカー、商社、金融と幅広く就職されているようです。英語力を求められるセクションになるのでしょうけどね。言語での業種の狭まりは考えなくていいと思います。

:私の学部は2回生になる時に将来の仕事に向けたコース選択ができるようになっています。私は国家公務員のプログラムを選択していますが、サービス業を考えて選択をしている人が最も多いようです。製造・流通・金融も多いです。立命の私の学部は教員免許が取れないので、教職は目指せないですね。

藤井:私は外務省などの国家公務員がいいかなと思っていたのですが、今は国際関係の仕事ができたらいいなと思っています。学部としての就職状況というのは、他の学部とそれほど変わらないんじゃないかなと思います。

 

Duran:では、今の大学・学部に入って自分のやりたかったことや、なりたかった像に近づけている、といったものは具体的にあるのでしょうか?

 

後藤:僕の場合は今の大学が、もうピッタリです。教授が言うには、高校で教える英語ぐらいのことだったら、ココで習うことは多すぎるんだそうです。例えば、発音指導研究という講義があるのですが、これはイントネーションとリズムを捉えることで「英語がしゃべれる感」をいざ教える時に出せる講義なのです。本当にバリエーションが豊かです。

中野:私の場合はそんなに細かいことは無いんですが、やはり8カ月の強制留学が大きいと思います。実際にアメリカで、アメリカの先生が、アメリカ語を、アメリカ語で教えてくれるんですよ。これって今の日本の英語の先生に最も求められていることなんじゃないでしょうか?ディベートやディスカッションも実際に日本でどうやって教えればいいのかが分かります。

 

Duran:大学院に進まれる三村先生はどうでしょう?このまま文学研究をやっていくという選択肢は?

 

三村:やはり2年間大学院で勉強した後は、教職に就くと思います。僕の学部に「教職入門」という講義があるのですが、そこの講師の先生(元高校教員)が「教師は本当につらい仕事だけれどもこんなにやりがいのある仕事も無いんだよ」とおっしゃっていました。言語学の研究にも惹かれますが、やはり教員の方にもかなり魅力があります。

 

Duran:外国語大学で見つけたこと、といったらなんですか?

 

櫻井:国際人材育成プログラムという講義は、英語で書かれた文学作品や経済学の本を読んで、英語で批評をして、英語でレポートを書く、という日本語でやっても難しいことをやる科目なのですが、こんな時はさすがに英語に対して、食傷気味になることもあります。しかし、英語をやるんだったらとことんまでやっておいた方が、人に教える時にはスラスラと分かりやすく教えられるのではないかと思います。

 ちなみに僕は教員志望でも、日本語教員志望なんです。外国の方に日本語を教えるわけです。専門性の高い英語を学ぶことでより深いものが見えてくる、と現在では感じられているような気がします。そしてそれが自然に実務に反映されるのだろうと思います。

 

Duran:桂先生は国家公務員という言葉が出ていましたけれども、立命館はその点についてのサポートは?

 

:私は実は国際関係とはあまり関係のないところで働くことを考えていまして...
刑務官志望なんです。来年からは法律や国際法務などの授業も増えているので、選択を考えている最中です。

 

Duran:中に入ってから、そういった専門性の高い授業の選択も可能だ、と。多様性があるということですね。同志社はどうなのでしょうか?

 

藤井:勉強できる幅が広いのはそうだと思います。ただ、やりたいことが決まっていて、専門的な深さを求めている人には、多少物足りないかもしれないですね。大学に入ってから、自分に合っているものを決めたかった私にはちょうどいい学部だったと思います。

 

Duran:皆さんが「ここに入ってよかったな」という感じですね。「こっちにしとけばよかったかな?」という点は本当に無いんですか?

 

後藤:今の問いに、アドバイス的な形で一言添えておくと、言語学をやりたい、文学をやりたい、国際問題をやりたいと思ってこれらの学部を選ぶのなら、それぞれの学部は非常に楽しいと僕は思います。でも、名前のある大学だからとか、好きでもないのにこれらの学部を選ぶとしたら、それはやめたほうがいいと思います。僕の考えではあまりにもコスパが悪いです。大量の時間がかかるうえに、大量に書かなきゃいけないです()。経済学部や経営学部の友達の方がキャンパスライフを楽しんでいるように、僕には見えます()

中野:今の話に続けると、私の大学は留学を売りにしているんですが、留学期間に取れる単位数が少ないんです。しわ寄せが3年以降に来ます。留学期間が有意義なものになればいいのですが、そうでなかったら「いったいこの留学はなんだったんだろう?」となってしまいます。あと、私のところも学べる幅が広いのでもっと専門的なことを学びたかった、と考えている学生が多く見受けられます。

三村:後藤先生の追加として。アドバイスです。大学のホームページには教授の名前と専門分野が載っています。そして、その大学が「データベース」というところで公開している「紀要」というところでは、その教授が執筆している論文もpdfで閲覧できるようになっています。さわりだけでもいいのでチェックしたほうがいいと思います。そして、是非フリーステップの講師陣にも聞いてみてほしいと思います。常に主体性を持って貪欲に学ぼうという姿勢を忘れないで欲しいです。私たちの学部は能動的に課題を見つけてそれを批判的に見ていくことが出来ないと評価はされない学部なのです。

 

Duran:僕は法学部出身なのですが、僕の周りには法学部は辞めといたらよかった、って方が沢山いましたよ。でも、皆さんすごいですね。「僕たちは大学で勉強してます」って感じが、すっごく伝わってくるのですが。

 

河野:僕は結構勉強しているほうだと思います。もちろん周りには留年している学生もいます。うちの学校は5つの専攻を一つでも落とすと留年が決まっちゃうので。これから外国語学部に入学する人に一言言わせていただくと、例えばヒンディー語やスワヒリ語などを高校の時から「これ一本で」と決めて受験するって難しいと思います。阪大のどの語学部も、専攻は本当に深く学べるけれども、そのほかの語学と国際的な多様性は非常に幅広いので、それほど気合を入れて取り掛からなくても大丈夫だと思いますけどね。中で学べる自由度も高いことを一言言っておきます。

 

Duran:言語はその特殊性から、それ以外に役に立たないと思われがちですからね。

 

櫻井:僕も付け足しを。僕の大学は一年生の時に英語の必修の単位を、二年生の時に僕の場合は中国語の必修の単位を取っておかなければ、学校のお金での留学が出来ません。行きたければ自費となってしまいます。そして、単位を落としたり留年したりする生徒を見ているとそれは、高校の時に勉強する習慣がついているかどうかの差のような気がします。その学問に興味があっても、この習慣の差を埋めることはなかなかできないようです。「大学に入って、こんなに勉強することになるなんて...」という人ほど、不満足な結果になっているようですね。どの学部にも共通することは、「勉強をする習慣」を身につけるということだと強く思います。

 

Duran:関西外語は大学自体が勉強をしよう、という雰囲気なのかもしれませんね。勉強する習慣作り。学問の王道であり、取得には最も時間のかかる技術なのかもしれませんね。綺麗に締めていただきました。本日は皆さま、お忙しいところをありがとうございました。

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 いかがでしょう。学部等の選択時の参考になったでしょうか?各大学とも語学をかなり深く勉強できるようにシステム作りをされているようですね。今日のお話を聞いてみると、各学部間の差異はそう大きくは無い様に思われます。ネットで調してみても、簡単に違いが把握できなかったはずです。

 この系の学部を選んだ方々はみなさん勉強されているな、というのがDuranの印象です。また今回、教員志望の方が4人いらっしゃったのですが、こういった方々が英語の教員に増えれば、会話力も含め、生徒の英語力の底上げとなり、「英語(公用語)後進国」という悪いルッテルの返上ができる日も近づくのではないかと思いました。

ここでも皆さんの先輩でもある講師の方々の台詞から、Duranの心を打ったものを抜粋しておきます。前編と併せて、今回取り上げた学部に限らず、ぜひ今後の志望校選びの参考にしていただければと思います。

「文学部語学系学科」&「外国語大学」&「国際関係学部」前編

<文/開成教育グループ 個別指導部フリステウォーカー講師編集部:藤本憲一(Duran)>