2022/11/28

生活と音楽【第4回】―音楽ってどうやってできたの?―

皆さんは学校で、いつ歌を歌うイメージがありますか?入学式や卒業式、学校集会など、多くの人が集まる時、歌を歌っているイメージではないでしょうか。なぜ、人が集まる時、歌を歌うようになったのでしょうか?そもそも、歌や音楽はどのようにしてできたのでしょうか?

▼index

音楽の始まりってなに?

音楽の発展とキリスト教

なぜみんなで歌を歌うの?

宗教と音楽

 

音楽の始まりってなに?

時代は1世紀、もしかしたら紀元前にまで遡るかもしれません。

ヘブライ語でイスラエルの民の歴史が書かれ、ユダヤ人にとっての「聖書」と言われる「旧約聖書」と、ギリシア語で書かれ、その「旧約聖書」で書かれているメシア(救世主)はイエスキリストであると解釈されている「新約聖書」には、祈りの言葉や感謝の言葉がたくさん述べられています。人々は聖書を読んで、その祈りや感謝の言葉を述べるのですが、そこに抑揚がついたものが、のちに歌になり、音楽が発展していったと言われています。

「旧約聖書」には詩編(聖書の中で詩を集めた部分)や詩型(詩の形式)、「新約聖書」には詩型があり、それぞれ括弧でくくられています。そこを朗読する時につけられた抑揚が一種のメロディーのようになったようです。

 

音楽の発展とキリスト教

世界史を授業で学んでいるという方はよくご存知かもしれませんが、キリスト教が発展するのにはさまざまな壁がありましたよね。

303年、多神教であった当時のローマ帝国の皇帝、ディオクレティアヌス帝により、キリスト教は一時迫害を受けていました。しかし、そのころにはもうすでに、キリスト教は広く浸透しており、当時、カタコンベと呼ばれる地下墓所に隠れて下層民を中心にさらに広がっていきました。その後、313年、コンスタンティヌス帝によってキリスト教は公認され、ついに392年、テオドシウス帝によってキリスト教が国教となりました。カトリック教会は徐々に古代ローマ帝国の聖職者(牧師さんなど、教会のために奉仕する人)の位階制度を整え、教会堂や修道院を建築し、絶大な力を持つようになり、それに伴い、キリスト教の典礼も整備され、典礼文や歌唱用の旋律などがととのえられるようになりました。それが、聖歌とよばれる、神様を称えるための歌となり、歌や音楽が同時に発展していきました。聖歌隊の学校も作られ、その拡大や聖歌形成に尽力したグレゴリウス1世にちなんで、そのころに作られた聖歌は「グレゴリオ聖歌」と呼ばれ、現在のカトリック教会でも歌われています。

 

 

なぜみんなで歌を歌うの?

ではここで、教会をイメージしてみてください。外観も含め、立派で雄大な建築に、美しく高貴な彫刻や絵画があるイメージなのではないでしょうか?

 それらのすべては、典礼を荘厳にし、祈りや感謝の気持ちを高めるものです。しかし、典礼とは、その場にいる信者が同一の信仰を確認しあい、連帯心を強めるといった側面も持っていると思います。そう考えると、教会に足を運び、彫刻や絵画といったものに囲まれているだけでは、信者が同一の信仰を確認しあうというような行為はなく、実際に典礼に参加しているとは言えないかもしれません。そこで、「グレゴリオ聖歌」など、みんなで歌を歌うことで、神様を称え、典礼に参加し、信者が信仰を確認しあい、連帯心を確認することができるのです。

 ここから、何か気持ちを一つにする時、そのような機会ではみんなで歌を歌って気持ちを高めようという考え方ができたと考えられています。

 

宗教と音楽

 先ほどの教会のイメージでパイプオルガンをイメージした方もいるかもしれません。宗教音楽、教会音楽に、パイプオルガンは欠かせない存在です。

生活と音楽4-1.png

パイプオルガンは、ピアノのように鍵盤がついた楽器ですが、ピアノとは違い、鍵盤にはパイプがつながっていて、鍵盤を押すと、空気がパイプに送り込まれて音が出ます。まっすぐで、温かく包み込むような音が鳴ります。

パイプオルガンを使った音楽で有名なのは、「音楽の父」と言われた作曲家J.S.バッハによる《フーガ ト短調》で、この曲は音楽の鑑賞の授業でよく取り上げられます。以下の楽譜は《フーガ ト短調》の冒頭の部分です。

生活と音楽4-2.jpg

黄色と赤色と水色で線が引かれている部分を見てみてください。

それぞれ、以下のような音符の並びになっていて、すべてリズムが同じになっています。

フーガ_リズム.jpg

このように、バッハの作曲するオルガン音楽は、同じリズムやメロディーが繰り返し何度も出てくるものが多いです。演奏するときは、どのリズムやメロディーも同じように表現することが大切なのですが、これは、「神の前では皆平等であるべきだ」という宗教的な考え方が含まれているとも言われています。歌だけではなく、音楽全体に宗教との繋がりが表れています。

宗教と音楽は結びつきがとても強く、深いのです。今回紹介したこともまだまだ一例にすぎません。

「音楽って授業でやる意味あるの?」と思う人も中にはいると思います。ですが、今回の宗教のように、実は数学や社会などほかの教科との結びつきが強いです。皆さんの興味のある教科とのつながりも調べてみると意外なつながりが見つかるかもしれませんね。

<参考文献>

・『キリスト教音楽への招待-聖なる空間に響く音楽』/佐々木しのぶ・佐々木悠/株式会社教文館/2012530

・『グレゴリオ聖歌』/水嶋良雄/株式会社音楽之友社/1966910

 

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生活と音楽【第3回】―生活と楽器―

 

<文/開成教育グループ 個別指導部フリステウォーカー講師編集部:隅田佳乃>