2023/10/02

関東 受験・進学情報だより【都立高校入試 スピーキングテスト ESAT-J】

皆さんこんにちは。

東京都では、2022年度から中学3年生を対象に英語のスピーキングテストが実施されていることをご存じでしたか? 今回は、気にされているご家庭も多いこのスピーキングテストについて現段階で分かっていることについて説明していこうと思います。

まずお伝えしたいのは、このスピーキングテストの導入によって東京都の高校入試が激変したというわけではなく、簡単に言うとこれまでの内容にスピーキングテストがプラスされた形になったということです。あとで簡単に触れますが以前の記事(東京都の高校入試制度)をお読みいただくと今回の話もより分かりやすくなると思います。

スピーキングテストってどんなもの?


はじめに、東京都高校入試で行われる英語スピーキングテストの大枠を理解していきましょう。

名称:ESAT-J

テストの名前はESAT-Jといいます。「イーサットジェイ」と読みます。
English Speaking Achievement Test for Junior High School Students
の頭文字を取ったもので、直訳するなら「中学生のための、英語を話す力の到達度を測る試験」といったところでしょうか。

目的

中学校で英語スピーキングを実施する目的について、Tokyo GLOBAL Student Navi(https://global-navi.metro.tokyo.lg.jp/)では、「中学校での学習成果を測り、その結果を都立高校入試に活用することで、中学校における「話すこと」の指導充実と高校での「使える英語力」育成の充実を目指します」と書いています。
そもそもの背景として、文部科学省は「グローバル化に対応した教育改革」を以前より掲げています。大学入学共通テストでも一旦はライティングやスピーキングも導入しようとしたということを覚えている方も多いのではないでしょうか。今までの試験形式では必要とされる力を測れないので新たな形式の試験を導入しようというのは以前からの動きだったということです。
2021
年度から中学校の教科書が変わったことも、背景には教育改革があります。特に英語に関しては、今まで高校生で習っていた内容が一部中学生内容に下りてきていたり、4技能(聞く・話す・読む・書く)を重視する形に変わったりと大きな変化がありました。
教える内容だけ変えて試験が変わらないのでは、教育が本当に行き渡ったのか分からないので試験も変える必要があるということです。
この試験結果の点数が都立高校の一般選抜で使用されます

対象

都内公立中学校に通う中学3年生全員。
後で説明しますが、都立高校受検のために使用されるので基本的には高校受験をする生徒に限られます。
※ 中1・2向けのESAT-J Preも開始予定とのことです。こちらに関しては情報の公開を待ちましょう

実施時期

令和5年11月26日(日)。予備日程として令和5年12月17日(日)が用意されています。
都立入試と同時ではなく、年内には実施されます。1月中旬には結果帳票が返ってくる予定となっています。(予備日で受験した場合は1月下旬)

実施方法

タブレット等の端末に音声を録音する方法で実施。人と向かい合って質問に答えていくような形式ではありません。相手の反応が無い中で話すのは、対面とは別の意味で緊張しそうですね。イヤホンマイク・イヤーマフを使用します。

実施会場

都立学校、大学、民間施設等。

スピーキングテストでどんなことをするの?


次に、スピーキングテストの中身を確認していきましょう。

問題形式

PartAからDまでの4種類の問題が出題されます。

Part

問題数

A

英文を読み上げる

2

B

イラストを見て質問に答える/意図を伝える

4

C

イラストを見てストーリーを話す

1

D

質問に対する自分の意見を述べる

1


もう少し詳しく見てみましょう。
こちらのTokyo GLOBAL Student Navihttps://global-navi.metro.tokyo.lg.jp/)今までの試行調査問題も見ることができますのであわせてご確認ください。今回の説明に関しては「令和3年度確認プレテスト②」の内容を参考にしています。

PartA

まずPart Aは、表示される英文を読み上げるものになっています。
発音・アクセント・イントネーション・区切りの正しさを評価されます。

PartB

PartBは質問を聞いてそれに対応するという内容です。
試行調査で出題されたものには、「イベントのチラシ(実施日程や場所といった複数の情報が英語で書かれています)が表示されていて、この日何を持って行けばよいだろう?(What do we need to take to the event?) といった質問に対して答える」という内容がありました。

Part Bではコミュニケーションの成立が評価されるので、"We need to take a bottle of water and a cap."と丁寧に答えても"Water and a cap."とだけ答えても意図が伝われば良いということです。

PartBは全部で4問ありますが、一人ひとりで違う答えを述べさせる問題、自分から問いかける問題もあります。試行調査で出題されたものは、「4種類の柄のノートを売っているお店と店員さんの絵が示され、どれが一番好きか答える」という内容でした、図示されている中からどれかを選んで答えるような問題です。目の前に相手がいるなら指をさして"This one."でも正解かもしれませんが、スピーキングテストでは言葉だけで答える必要があります。問題にはケーキや自動車の絵柄のノートが示されていますが、「私はケーキの柄のノートが一番好きです」ととっさに英語にするのはなかなか難しいのではないでしょうか。
(丁寧な解答例としては"I like the one with cakes on it the best."といったものになるでしょうか)

PartC

これ以降は少し難しくなります。語彙や文法的な正しさも求められてきます。
PartC
では、4つのイラストで示されるストーリーを英語で語るというものです。
30
秒の準備時間ののち40秒で答えることになります。
試行調査の問題で示されたイラストは以下のようなものでした(イラストには一切の言葉は書かれていませんので、多少私の解釈が入っていることをご了承ください)。
①ピアノを弾こうと思い立つ
②本棚から楽譜を探す
③本が頭の上に落ちてくる
④それは目的の楽譜だった
これを英語にして話すことになります。
語彙も問われるとはいえ、まずは文章を完成させたいですね。簡単な言葉に言い換えることができれば、なんとかなるのではないでしょうか。
少し解説してみます。解答例を見る前に自力でチャレンジしてみたい人は是非上のリンクから問題を見てみてくださいね。

①は一番簡単にするなら「ピアノを弾きたかった」にできるでしょうか。"I wanted to play the piano."ならそんなに難しくないですね。もう少し流暢な言い回しを考えると"I decided to play the piano."(ピアノを弾こうと思い立った)などと表すこともできます。
②では「本棚」、「楽譜」を英語にできるかがネックではないでしょうか。「本棚」="bookshelf"もしくは「棚」="shelf"、「楽譜」="sheet music""score"ですが、なかなか出てこないかもしれません。特に楽譜を英語で何というか知らないという生徒も多いのではないでしょうか。
ここで諦めるのではなく、本棚を表す英語は分からないけどイラストから判断して「部屋の中を探した」という英語を作れば答えられる、といったように機転を利かせることができるといいですね。「楽譜を探した」とだけ表しても趣旨から外れたとは言えないでしょう。楽譜も「ピアノの本」と考えればできそうですね。
解答例1."I looked for a piano book in my room."(私は部屋の中でピアノの本を探した)
解答例2."So,I looked for my score book on the shelf, but I couldn't find it."(だから私は棚から楽譜を探したのだが、それを見つけることができなかった)
③「頭の上に落ちてくる」が難しいですね。簡単に「本が落ちた」「頭の上に」と考えれば"The book fell""on my head"が作れるかもしれません。イラストを見る限りちょっと痛そうにしているので「本が私の頭にぶつかった」と考えてもいいですね。その場合は"The book hit my head from above."と表しても良いかもしれません。
④一番素直に考えると"It was the piano book."でしょうか。既に一度話題に上った本ですので定冠詞"the"を使います。イラストからは人物が喜んでいる様子が読み取れるので「見つかって嬉しかった/驚いた」といったニュアンスを盛り込むこともできますね。その場合は"It was lucky for me it was the piano book I looked for."とすれば、「幸運なことに、それが探していたピアノの本でした」となります。

共通して言えるのは、最初に思い付いた日本語にこだわりすぎないことではないでしょうか。因みにこの「かんたんな言い回しへの変換」は都立入試の国語200字作文や、推薦入試の作文・小論文でも役立ちますよ。

PartD

最後のPartDは自分の考えを英語で述べる問題です。
こちらは1分の準備時間ののち40秒で答えるという時間設定になっています。
英語リスニングののち、英語でされた質問に対して英語で答えます。
試行調査の問題は「カナダの学生から『日本では生徒自らが学校を清掃すると聞いた。自分の学校では校務員さんが行っている。学校はだれが清掃すべきか、君の意見とどうしてそう考えたのかを教えて欲しい』といった内容のビデオレターが届いたので、返答する」というものでした。
求められているのは自分の考えとその根拠です。
答えは一つではありませんが、英語での文章に限らず説得力のある文章の構成は意識しなければなりません。
結論(例:自分は校務員さんが清掃すべきだと考えます)→根拠(なぜなら生徒たちは勉強を一生懸命するべきだから)→具体例や比較など(校務員さんが学校を清掃してくれれば、その分生徒たちは勉強に集中できる)、のような形です。

先ほども少し触れましたがPartCDでは、語彙・文構造・文法の適切さ・正しさ・内容の適切さ(一貫性・論理構成)といった要素も評価されます。

どちらも日本語でじっくり文章を考えている余裕は無い時間設定です。なかなか難しそうな試験ですよね。

スピーキングテストってどう使われるの?


最後に、スピーキングテストを受けた結果が入試にどのように使われるのかを見ていきましょう。

評価

上で説明したような問題を解いて、それが点数化されます。
その点数は統計的処理ののち6段階のGRADEに分けられます。

ESAT-Jでの得点

GRADE

都立一般入試での点数

IRT(項目応答理論)により、採点結果を統計的に処理、右記6段階の評価になる

A

20点

B

16点

C

12点

D

8点

E

4点

F

0点

さて、この20点満点という点数がどのくらいの大きさなのかが気になりますよね。次はそれを見ていきましょう。

評価の点数化

先に従来の配点を確認します。

学力検査

内申点

合計

元の点数

500点

65点

換算

700点

+

300点

=

1000点

学力検査つまり入試当日に受ける5教科のテストが700点分、内申点つまり通知表の点数が300点分合わせて1000点満点というのがこれまでの方式でした。(学力検査点:内申点が6:4になるケースなど表以外の配点もあります。詳しくは関東 受験・進学情報だより【東京都 高校入試制度】をご確認ください)
さて、この1000点満点の試験がスピーキングテスト導入によって1020点満点に変わります。

学力検査

内申点

ESAT-J

合計

元の点数

500点

65点

100点

換算

700点

+

300点

+

20点

=

1020点


点数の割合を図示すると以下のようになります。

スピーキングテスト_点数割合.png

この20点がどの程度の重みなのか見てみましょう。
グラフを見て、「あれ、小さいな」と思った方もいるでしょう。
1020
点中の20点なので、学力検査点700点と比べるとおよそ2.8%分です。換算前の試験500点満点と比較すると、3-4問に相当する約14点分になります。スピーキングテストが0点でも満点でも、中くらいの難度の学校までなら実は影響はそこまで大きくないと言うこともできます。
ただし、B判定(合格確率60%程度)で受験をする生徒の命運を分ける可能性は大いにありますし、難関校志望の場合は高得点帯での争いになるので1点でも多く点数は欲しいことを考えると無視してよい点数ではないと思います。

問題を見てみると分かるように、対策しないと難しい内容になっています。
今回の内容を読んで、しっかり対策していかないと......と思った生徒さんも多いのではないでしょうか。

フリーステップのスピーキングテスト対策

ESAT-J専用の対策教材として、中学3年生を対象としてELST®というアプリがあります。
ELST®は、『聞く力』、『話す力』を身につけられる英語学習用のアプリで、スマートフォン・タブレット・PCのブラウザでも使用可能です。何よりの特徴は、英語スピーキング学習に対応したVoice/AIによる認識・採点システムです。音読や自由発話に対し、吹き込んだ内容をAIが即、評価・採点してくれます。
しかもELST®は上記のESAT-Jの問題PartAからPartDそっくりの問題形式を収録しています。単なるスピーキング対策というわけではなく、まさにESAT-J対策ができるということです。

スピーキングテスト_点数割合_ELST_ESATJ対策.png


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<文/開成教育グループ 教育技術研究所 小川真史>