2022/09/12

関東 受験・進学情報だより【偏差値ってなんだろう】

皆さんこんにちは。

受験生の方はもちろん「偏差値」が気になる人は多いと思いますが、皆さん、「偏差値とは何ですか?」と聞かれて答えることはできますでしょうか。

以前掲載されたこちらの記事で偏差値の根本的なところは書かれていますので是非読んでみてくださいね。

今回の記事では、関東での具体的なところをお伝えしていこうと思います。

中学受験・高校受験・大学受験の偏差値についてそれぞれ触れた後、どの受験にも関係する偏差値との向き合い方についてお伝えしますね。

まずは「偏差値とは、平均を50として、平均からどれだけ離れているかを表す数値である」と簡単に理解して読み進めて頂ければと思います。

【中学受験の偏差値】

中学受験はみんながするものではありませんよね。中学受験のための偏差値は、中学受験をする生徒たちだけが分母になって算出されます。

2022年の入試では、関東13県で、小学6年生のうち14.7%が中学受験をしたそうです。これはおよそ7人に1人の割合です。

中学受験を志す生徒は、そうでない生徒に比べると勉強量も多く、難しい問題にも挑戦しているので、偏差値を出す母体となる「中学受験者」というのは、小学生全体の中で見ると必然的に勉強が得意な層になります。

そんな生徒たちの中で、ちょうど真ん中の成績だと偏差値50となるわけですね。
受験をしない子は基本的に分母に含まれないので、この偏差値50は小学生全体の中で言えば十分上の方の学力と言えるでしょう。

さて、関東では中学受験のための模試として「首都圏模試」や「四谷大塚」の公開テストなどがあります。簡単に特徴を説明すると......

  • 首都圏模試:首都圏最大規模の中学受験模試で、幅広い層が受験します。
  • 四谷大塚模試:比較的難関校の受験層が受けるため、偏差値は低く出る傾向にあります

このようになります。

どのくらい差があるのか見てみましょう。

四谷大塚の基準で「偏差値50で合格率50%」とされる学校が、首都圏模試だと偏差値59となっていたりします。

逆に、首都圏模試の基準で「偏差値50で合格率50%」とされる学校は、四谷大塚だと偏差値42になっています。

一口に偏差値と言っても、違う基準のものを比べることはできないと言うことがよくわかりますね。

【高校受験の偏差値】

中学生の何%が高校に進学するかご存じですか?

実は約99%もの中学生が高校に進学しています。

では、高校受験をする中学生はどれくらいいるでしょう? 進学率を考えると、私立などの中高一貫校に通っている生徒以外はみんな高校受験をすると考えて良いかと思います。

そうすると中学受験と違って、偏差値の出る分母が非常に幅広い層になるのが想像できますね。

以前中学生の模試についての記事を書きましたが、高校受験は都道府県ごとに違うため、模試も都道府県ごとに変わってきます。偏差値を算出するための分母は、この都道府県ごとの模試になることがほとんどです。Vもぎや北辰テストといったものがこれにあたります。

だから、高校受験の偏差値50は、その都道府県の中学生全体の真ん中の成績に非常に近いということですね。

なお、公立高校の受験に際しては、いわゆる内申点=通知表の点数も関わってくるため偏差値だけでは合格可能性を判断できない点はご注意ください。

【大学受験の偏差値】

上で、小学生の14%程度が中学受験をし、中学生の99%近くが高校生になるというお話をしました。だから偏差値の分母になる部分に偏りが出るんだよということですが、では大学受験はどうでしょうか。

高校生の中で大学進学をするのは、およそ6割と言われています。

進研模試のように、高校で採用してその学校の生徒が全員受ける模試もありますが、河合塾の全統模試や代々木ゼミナールの模試のように希望者だけが受ける模試の場合、やはりこの分母になるのは「大学進学を志す」生徒だけになりますので、状況としては高校受験よりは中学受験に近くなります。

ここを勘違いすると、大学受験の難度を見誤ってしまうので気を付けましょう。

ちょっと図で説明します。

 

関東受験進学_中高生の偏差値.png

 

中学生の偏差値50は都道府県内の全中学生の真ん中とほぼ一致するという話をしましたね。そして、99%近くの中学生が高校生になるので、中学生の総数と高校生の総数はほぼ同じになります。

ところが高校生のうち、大学受験をしない層は大学受験のための模試を通常受けないので、偏差値を算出するための分母から外れます。

そうなると、上の図の「赤い部分の真ん中」が大学受験のための偏差値50になります。

高校受験の偏差値50とずれているのが分かりますか。

そうなると、高校受験で偏差値50の学校(この説明は次の項目でします)に合格して、その学校の中で真ん中の成績の生徒は、実は大学受験をする際には真ん中よりも下の成績になってしまうということがこの図で分かりますね。

【学校の偏差値って何?】

先ほどまでの話で、テストを受けた結果「自分の偏差値」が出るのは何となく分かったかと思いますが、よく聞く、「学校の偏差値」とは何なのでしょう。「あの学校は偏差値高いから」などと聞きますがどういう意味なんでしょう?

大雑把にですが順番にお話していきます。

はじめに、模試が行われます。たくさんの人が模試を受ければ、信頼性の高い偏差値の値が得られますね。

そして入試が行われます。

模試を受けた人の中で、志望校とその合否を追いかけられる人からデータを手に入れます。

すると、「A高校には、うちの模試で偏差値40だった人は10人中だれも合格せず、偏差値48だった人は18人中6人、偏差値56の人は8人中8人とも受かっていたぞ」といったデータが手に入ります。

そして、受験情報を載せている本やWEBサイトはこれをもとにして次のような考え方で「学校の偏差値」を決めていきます。

  • 合格と不合格が半々になるライン
  • 合格が6割を超えるライン
  • 合格が6割のラインと8割のラインの併記

たとえば先ほどのA高校を受験した受験生の中で、偏差値65の人は1人も不合格になっておらず、偏差値40の人は1人しか合格していませんでしたが、偏差値と合格率をグラフにしてみると下の図のように通常は右上がりになっていきます。

関東受験進学_合格率.png

このうち、合格率が60%=6割になるのは今回の例だと偏差値53でした。80%=8割のラインだと55になっています。

こうしたデータをもとに、ある出版社は「A高校の偏差値は53です」、あるWEBサイトは「A高校の偏差値は55です」と記載しているのです。媒体によって数値が違う原因の一つはこれです。もう一つは、もとにしている模試の違いです。どのテストから算出した偏差値なのかでもやはり数値は違います。

これらを一緒くたにしてしまって、A高校はB高校に比べて偏差値が高い(低い)とするのは無益な話です。

真っ当な情報源であれば、載せている偏差値の定義は必ず書いてありますので媒体による表記の違いに踊らされないようにしましょうね。

【偏差値との向き合い方】

では、見方が分かったところで、最後にどうしたら偏差値は上がるのかというお話をして終わりたいと思います。

受験が近くなると、周りもみんな勉強を頑張りますよね。そうすると、「どんなことが理解できていて、どんな問題が解けるか」といった"学力"は周り中みんな上がっていくわけです。

周囲みんなの成長と同じだけの成長しかしなかったら、「自分がみんなの平均からどれだけ離れているか」=偏差値は変わりません。

周囲のみんなよりも急角度で成長したら、偏差値は上がります。逆に、周囲のみんなよりもゆっくりした成長だと、残念ながら偏差値は下がってしまいます。そう、勉強をしても偏差値が下がることは往々にしてあるのです。

この理屈が分かっていれば、大事なことが見えてきます。

「みんなが本気で受験勉強をする前の時期から始めていたなら?」

「みんなよりも効率の良い勉強ができたら?」

勉強は自分と向き合って進めていくものではありますが、入試となると全体の中での自分の立ち位置が非常に重要になってきます。偏差値の正しい認識をもって、受験勉強頑張りましょうね。

フリーステップでは早期対策や効率の良いカリキュラムなど提案させていただきながら、皆さんの合格に向けて一緒に頑張っていきます。

<文/開成教育グループ 教育技術研究所 小川真史>