2022/05/09

関東関西有名中学入試分析【中学受験Q&A 第2弾】

中学受験Q&A ご質問にお答えいたします!第2弾

 先月、「中学受験Q&A ご質問にお答えいたします!」というコラムを書かせていただきました。ありがたいことにご好評をいただき、中学受験に関していくつかのご質問やご相談をいただきました。

 今回は「中学受験Q&A ご質問にお答えいたします!」の第2弾として、いただいたご質問やご相談から抜粋をしてお答えをしていきたいと思います。

▼index

■質問その1 併願校の選び方やポイントは?

■質問その2 本人のやる気が上がらない。注意すると反抗的になるときは?

■質問その3 保護者が気を付けるべきポイントは?

\第1弾 他はこちら/
中学受験Q&A 第1弾  中学受験に塾通いは必須?他

中学受験Q&A 第3弾   模試は今からでも受験すべき?他

中学受験Q&A 特別編  受験終了後は何を勉強すべき?他

 

質問その1
第一志望校は決まっていますが、併願する中学校が決まりません。併願校の選び方やポイントを教えてください。

第一志望校を決めた要因から逆算をして考える。通学に無理のない場所であることにも注意。

 第一志望校を決めている要因があるかと思います。【資料1】に中学入試志望校の決定要因の例を示してみました。

【資料1】 ≪中学入試志望校の決定要因例≫

・校風や教育姿勢に共感

・大学合格実績もしくは大学一貫教育校だから

・保護者もしくは近親者が卒業生

・将来の希望を見据えた教育内容やコースの設定

・人格や人間関係の形成 部活動や課外活動に打ち込みたい

・男子校だから 女子校だから 共学校がいい

・寮や下宿のある学校

 志望校の決定要因は十人十色です。例えば、難関国立大学や国公立大学医学部医学科への進学実績が高い進学校の中学を第一志望校とする場合でも、大学合格を見据えた学力養成を重視するご家庭と、人格形成や友人・先輩・恩師などの人間関係形成を重視するご家庭によって、併願校として見えてくる中学校は異なってきます。

 学力養成重視の場合は近年の大学合格状況に勢いがあり、学校独自のカリキュラムや受験指導体制の確立されている、新興とされるところを含めた学校が視野に入ってくると思います。いわゆる「塾いらず」、「予備校いらず」とされる進学校です。

 他方、人格形成や人間関係形成の重視の場合は、学術や文化・芸術を含めて各界で活躍をしている卒業生を輩出してきている歴史のある学校が見えてくるのではと考えます。基本的には私立の中高一貫校になりますが、第一志望校の中学(高校)が高校受験も実施している場合(首都圏では開成中高、筑波大附属中高、筑波大附属駒場中高など、近畿圏では灘中高、西大和学園中高など)、第一志望校の高校受験を前提として、お住まいの地域にある国立大学の附属中学校も視野に入る場合もあるかと思います(もっとも、国立大学附属の中学校の場合、合格の場合の入学辞退を原則的には認めない学校もあるため、併願校として考える場合には、当該校の募集要項を必ずご確認下さい)。

 また、寮のある中学校を第一志望校とする場合、併願校も寮のある学校を検討することが多くなるかと思います。寮のある中学校の場合、難関国立大学や国公立大学医学部医学科への高い合格実績を有する私立進学校(例:ラ・サール中〔鹿児島県〕、愛光中〔愛媛県〕、西大和学園中〔奈良県〕、北嶺中〔北海道〕など)や独自の教育理念に基づく私立校(例:海陽中等教育学校〔愛知県〕、自由学園男子部〔東京都〕など)が有名です。また、公立の中高一貫校でも寮を設けているところがあります。寮のある地方自治体の在住者に受験資格を限定している学校が多いですが、近年では、寮のある地方自治体に限らず、全国からの受験を認める公立中高一貫校も現れています(例:広島県立広島叡智学園中学校、鹿児島県立楠隼中学校など)。

 このように、併願校は第一志望校を決定した要因から逆算をして検討をしていくものですが、進学の可能性があるのであれば毎日無理なく通学できる場所にあることも重要なポイントとなります。通学や帰宅にかかる時間、交通アクセスの混雑状況、交通アクセスの乗り換えなど、無理なく通学できる範囲内で、併願校も考えていきましょう。



質問その2
中学受験に向けて勉強を進めていますが、本人のやる気が上がりません。塾の宿題に手をつけなかったり、親が注意をすると反抗的になったりします。どうしたらいいでしょうか?

中学受験は本人の意志が重要。押しつけは逆効果。学力状況が順調であれば神経質にならない。

 前回のコラムの「質問その1」でも述べましたが、入試が必要な私立や国公立の中学校を志望するには必ず理由があるはずです。特に理由がなければ、入試も受験勉強も必要なく、近隣の公立中学校に進学ができます。受験生ご本人が、なぜ、特定の中学校に行きたい、そこを受験したいと考えるのか、改めて確認をしましょう。

 中学受験の意志確認の際、重要なのは"〇〇中学校に行きたい!"、"受験をしたい!"と本人が思っていることと現状の学力です。

 保護者が中学受験に前のめりになっても受験生本人が中学受験に前向きでなければ、中学受験の勉強はうまく進みません。合格実績のいい塾に通わせても、経験豊富な講師や家庭教師に勉強を教えてもらうにしても、本人に意欲と覚悟がなければ、家庭学習や宿題が進まないうえに、学力はうまく身につかず、模試の偏差値も伸び悩むケースがほとんどです。

 自我がまだ確立していないことが多い小学生。勉強以外、遊びたいことや楽しみたいこと、打ち込みたいことがあるのが普通です。遊びたいことや楽しみたいことの"欲望"を我慢し、コントロールすることは自我の確立が進んでいるはずの高校生(の大学受験)でも難しいことです。むしろ、中学受験を"やりたいこと"と前向きにとらえて打ち込むことができる積極性が、受験を志す小学生には必要です。

 中学受験や志望校への積極性を養うためには、保護者が何かを強制するのではなく、志望校に関することに触れる機会を設けることをお勧めします。新型コロナウイルス感染症の影響で近年では関係者以外の参加や公開ができないケースも増えていますが、各中学校の文化祭や体育祭に参加をしてみたり、志望校が大学までの内部進学の一貫教育校であれば、その大学の大学祭やスポーツの試合に足を運ぶのもいいでしょう。

受験生本人のやる気について、保護者にはやる気はないと見えていても、模試の偏差値や塾のテストがよほどに下がっているのでなければ、"勉強しなさい!"や"宿題をしなさい!"などの厳しい言葉をかける必要はありません。このことは中学受験以外にも言えることですが、受験は結果勝負であり、勉強時間が少なく(見えてい)ても模試やテストで結果を残せているのであれば、現状の受験勉強はうまくいっていると、前向きにとらえるべきだと思います。

質問その3
初めての中学受験になります。小学6年生になり、入試まで1年を切りました。保護者がこれから気をつけていくべきポイントがあれば教えて下さい。

中学校の行事・イベントに参加する。塾は上手に活用していく。偏差値にとらわれない価値観を。

 小学6年生の受験生のポイントですが、受験予定の中学校への対応、塾への対応、模試への対応、3つの対応が重要になってきます。

①中学校行事・イベント:面接試験もある場合は特に重要

 中学入試を実施する中学校はいずれも、小学生や保護者に向けての公開行事やイベントを毎年実施しています。それは自校の教育理念や教育方針、在校生、教師を理解してもらい、意欲的な小学生に受験をしてもらいたいからです。近年の中学入試では筆記の学力試験のみを実施する中学校が多くなっていますが、女子校や大学系列の共学校を中心に、面接試験を実施している中学校も少なくありません。

 面接試験では志望理由や今まで頑張ってきたこと、中学校生活や将来、頑張っていきたいことなどが聞かれることが多く、入試でも参考程度としているところがほとんどです。しかし、中学校によっては、学力試験のボーダーラインの受験生に関しては面接や提出書類で合否を決めたり、学力試験の状況は良くても、面接試験で中学校側が新入生として余程「ふさわしくない」と判断した場合、合格とならなかったケースもあるとのことです。

 面接試験のある中学校を受験するご家庭に対して、私は中学校の公開行事やイベントに、可能なものは参加されることをおすすめしています。中学校の面接試験では、必ず自校への志望理由が聞かれます。志望理由を答えるにあたって、中学校の公開行事やイベントを要因として話すのが最も話しやすいと思います。

もちろん、中学校側は公開行事やイベントへの申込の際やアンケートの際に、受験生や保護者の記録・履歴をとっています。行事やイベントへの参加回数が多ければ多いほどいいというものではありませんが、ある程度の参加回数のある受験生については、「うちが第一志望校ですね」と中学校側も肯定的に思ってくれやすくなるでしょう。

 逆に、受験はしたけれど、今まで一度も中学校の公開行事やイベントに参加していない場合、もちろん、それだけで合否が厳しい結果となるということはありませんが、面接時の志望理由を話す際、受験生本人の直接体験に基づく志望理由を話すことが難しくなり、中学校側に「うちは元々の志望校ではなかったのかな?」と思われる可能性もあります。

②塾:他塾も含めて、活用できるところは活用する。

 前回の私のコラムの「質問その2」でも述べたように、中学受験に塾通いが絶対不可欠ではありませんが、集団塾・個別塾を問わず、多くの中学受験生は塾に通われています。塾に通われて順調に受験勉強が進んでいる方、志望校合格のためにはもっと頑張る必要がある方、もしくはてこ入れが必要な方、それぞれいらっしゃると思います。

 志望校に対して塾のクラスや模試の偏差値も順調な方は、塾のカリキュラムをベースに、引き続き学習を進めていきましょう。ただ、今後気をつけていく必要があるのは、志望校以外の併願校や第一志望校の入試より前にある中学校の「前受け」受験についてです。塾によっては、第一志望校やそれに適した併願校以外にも、「前受け」の学校や午後入試を含めた併願校の受験・出願を推奨するところもあります。合格・不合格がある中学受験です。もちろん、セーフティーネットとしての併願校は必要ですが、午前入試後の当日の体調によって合否結果の読みにくい午後入試や進学先の可能性の薄い「前受け」に関しては、塾からの提案は参考としつつも、実際の受験校選びは慎重な検討が必要になります。

 塾には通っているものの成績面などで不安や焦りを感じる場合、塾の授業やオプション講座を追加する、今通っている塾以外の個別塾や家庭教師などを追加する、塾自体を変える、などを検討されるかと思います。最も大切なのは、受験生ご本人の気持ちと意欲です。今の塾のままで頑張りたいという気持ちや今の塾の先生へのご本人の信頼が変わらないのであれば、今の塾を受験勉強の基本としたうえで、塾内で何かを追加するのか、塾のフォローを前提として個別塾や家庭教師を活用するのか、受験生ご本人の気持ちを尊重しながら検討するといいでしょう。

 他方、今通っている塾への気持ちが揺らいでしまっている場合はどうでしょうか。「じゃあ、塾を変えましょう。」と簡単に言えるものではありません。特に集団塾の場合、塾ごとにカリキュラム、テスト、宿題などの家庭学習のシステム、算数や理科の問題の解法も異なったりします。通っている塾が大手塾で、今通っている教室の教室長や講師とは合わないところがあるけれど、少し離れたところには同じ塾の別教室がある場合には、別教室を複数、相談や見学に行き、合いそうな教室があればそこに転籍するのがいいと思います。

別教室であっても、どうしても今と同じ塾は合わない、やめたい、という場合には、今通っている塾よりは基礎基本を重視する集団塾、もしくは今通っている塾のテキストや問題集を活用して指導が可能な個別塾への転塾が基本線になります。

③模試:偏差値や序列にとらわれない価値観を養う。

 中学受験の模試は小4生や小5生を対象としたものもありますが、小6生対象のものからは、ほとんどの中学受験生が何かしらの模試を受験していきます。模試を受験する目的としては、

Ⅰ.現状の志望校合格可能性や順位、併願が可能そうな学校を知る

Ⅱ.各科目の学習定着状況や課題点を見つける

Ⅲ.中学入試と同じ「制限時間内で問題を解き進める」テスト形式や雰囲気に慣れる

ことが挙げられます。

 中学受験生にとっても模試は欠かせないツールとなっていますが、模試の使い方を誤ったり、模試のデータを過信しすぎると、中学受験の成否のみならず、その先の価値観にも影響を与えることにも繋がる可能性があります。

 ひとつは中学受験の模試の偏差値や合格判定(可能性)が絶対万能ではない、ということです。「模試」というものは、中学受験だけではなく、高校受験や大学受験、司法試験などの資格試験など、様々な試験にまつわるものが存在しています。

 私は中学受験のみならず、高校受験や大学受験にも長年携わってきましたが、経験上、高校受験や大学受験の模試と比べて、中学受験の模試のほうが合否判定と実際の入試での合否との振れ幅が大きいと感じています。つまり、入試直近の模試において、合格可能性判定が(最高の)80%以上であったのに、入試本番では不合格となったり、逆に合格可能性が(最低水準の)30%以下と判定されたにもかかわらず合格を勝ち取ったり、という逆転の結果が、高校入試や大学入試に比べて多いと、経験上感じています。

 これは、中学受験の模試の判定が適当ということではなく、中学受験に挑む小学生の入試本番の心身の状況が、心身の発育している中学生や高校生と比べて変動しやすい、入試本番で実力を発揮できない受験生が中学受験においては少なくない、という理由からだと考えています。中学受験生においては、模試は合格可能性の判定ツールとして以上に、今までに学習をしてきた単元や項目の定着度の確認、復習を中心とした学習計画の策定のツールとして活かすことを、常にお話をしています。

 もうひとつ、模試について気をつけて欲しいことは、模試で示される各中学校の合格可能性の偏差値やそれにともなう学校の「序列」や「格差」にとらわれないことです。

 各中学校の模試偏差値は、過去の模試における中学校の合格者の偏差値や今年度の志望者の偏差値や動向から決められていきます。模試のなかには合格可能性(50%や80%)における各中学校の偏差値一覧表を出しているところがあります。偏差値の高い中学校が上、そうでない中学校が下に「序列」のように示されますが、これはあくまでも模試の合格可能性に関する数値であり、各中学校の教育上評価や社会的評価を示すものではありません。

 価値観形成の発展途上にある小学生にとっては、偏差値が高い中学校がいい中学校、偏差値が高くない中学校は良くない中学校ととらえてしまう可能性がありますが、偏差値はあくまでも、志望校決定の判断資料なかのひとつにすぎません。

 私が受験指導に携わった生徒さんの例ですが、その男の子は学業も優秀で、東京都内で御三家と称される難関男子中学校(開成中、麻布中、武蔵中)の模試合格可能性も高い生徒さんでした。一方で、小さい頃からサッカーが大好きで、学業とサッカーの両立ができる進学校への進学を希望していました。彼が第一志望校とした中学校は、模試での偏差値では男子御三家の中学校よりは低く評されていましたが、サッカー日本代表やJリーガーも、研究者や医師、文化人も多数輩出してきた、男子御三家に勝るとも劣らぬ名門男子校です。中学受験では第一志望校以外にも男子御三家とされる男子校や千葉県の最難関中学とされる共学校(この学校からもサッカー日本代表が輩出されています)も受験し、いずれも合格しましたが、彼は迷うことなく第一志望校に進学しました。同じ塾の友だちからは「もったいない」、「〇〇中を蹴るなんて」と言われたみたいですが、自分の信念やこだわりを貫いた見事な中学受験だったと思っています。

 

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<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>