2023/05/01

関東関西有名中学入試分析【中学受験Q&A 第3弾】

 昨年、「中学受験Q&A」と題して、中学受験に関する、私のコラムの読者の方や開成教育グループで実施をしている中学受験関係のガイダンスにおけるご質問などをもとに、中学受験にまつわるQAのコラムを書かせていただきました。それ以降も、コラムの読者の方や中学受験関係のガイダンスでのご質問をいただきました。

 今回は「中学受験Q&A」の第3弾として、中学受験にまつわる質問や疑問に答えていきたいと思います。今回は中学受験の模試についてと習い事(スポーツ)との両立について、いずれもよくご質問やご相談を受けるテーマです。中学受験を目指すお子さまや保護者さまの参考となれば幸いです。

▼index

■質問その1 中学受験の模擬試験(模試)について教えてください。また、受験勉強を始めて間もないのですが、模試は今から受験をしたほうがいいのでしょうか?

■質問その2 親子とも中学受験を考えていますが、ずっと続けている習い事(スポーツ)はセーブしなければいけないのでしょうか?習い事をやめず受験をするためのアドバイスをお願いします。

\第1・2弾、特別編はこちら/
中学受験Q&A 第1弾  中学受験に塾通いは必須?他

中学受験Q&A 第2弾  併願校選びのポイントは?他

中学受験Q&A 特別編  受験終了後は何を勉強すべき?他

 

質問その1

中学受験の模擬試験(模試)について教えてください。また、受験勉強を始めて間もないのですが、模試は今から受験をしたほうがいいのでしょうか?

 模試の活用方法を理解したうえで"ペースメーカー"として受験することを検討しましょう

 一般に模擬試験(模試)というものは、入学試験(入試)や資格試験の受験を目指すにあたり、その試験にそっくりな問題形式、制限時間設定、試験会場などの環境を設定したテストのことです。中学受験においても模試というものがあり、中学受験指導を進めている大手進学塾(SAPIX小学部、四谷大塚、日能研、浜学園、馬渕教室など)や、進学塾とは別個のテスト実施団体(首都圏模試センターや五ツ木書房など)によって、毎年実施されています。小学4年生以下対象の模試もありますが、小学5年生・6年生を対象とした模試が多くなっています。

 中学受験の模試の特徴としては以下に5点、挙げてみました。

   【中学受験の模試の特徴】

   ①志望校(が求める学力水準)によって適した模試が変わってくる

   ②私立難関校や公立一貫校など、特定の学校対応の模試も存在する

   ③小5生や夏休み前の小6生対象の模試では出題範囲が決まっているものが多い

   ④私立中学校を試験会場として選べる模試もある

   ⑤(関西圏の場合)模試の成績を推薦入試の出願要件や合否判断材料に用いる場合もある

 ①志望校によっての模試の適性についてですが、開成中や桜蔭中(いずれも東京都)や灘中(兵庫県)といった難関校を目指す受験生と、勉強はどちらかといえば苦手だけど基礎学力や個性を伸ばしてくれることを期待して私立中学校を目指す受験生とでは、最適となる模試も異なってきます。入試で求められる学力水準が高い難関校志望の受験生の場合は、模試はその志望校の合格者数実績の多い進学塾が主催する模試が適しています。他方、基礎学力重視の入試を実施する私立中学校志望の受験生の場合は首都圏模試(首都圏)や五ツ木駸々堂模試(関西圏)などのテスト会主催の模試が適していると言えます。

 ②一般的な中学受験の模試では、私立中学各校の入試傾向を分析したうえで、多くの中学校で出題されてきたテーマや形式の問題が出題されます。クセのないオーソドックスな問題が多くなります。他方、難関とされる私立中学や公立中高一貫校の入試においては記述問題や論述問題、思考力を問う問題など、各校ごとに特色のある出題がなされることも珍しくありません。そのような学校の場合、オーソドックスな問題中心の模試とは出題傾向が大きく異なることも多く、主に進学塾主催で、学校対応の模試が実施されることあります。

 ③中学受験の模試では進学塾や中学受験用のテキスト教材の進度に合わせて、小学6年生の夏休みまでは模試での出題範囲が事前に定められていることが多くなります。他方、小6の夏休み以降の模試の場合は夏休み(夏期講習)までに中学入試の試験範囲は一通り学習をした前提として、実際の入試同様に"全範囲"出題対象としたものが一般的です。

 ④模試は入試本番の疑似体験という要素もあるため、試験会場も私立中学校を設定している模試が多くなります。もっとも、受験生個々の志望校全てが模試の試験会場となっている訳ではありませんが、男子校、女子校、男女共学校、キリスト教主義の学校、仏教系の学校、校舎の新しい学校など、仮に志望校が模試の試験会場となっていない場合でも、志望校と条件や環境の類似する学校や併願受験を検討している学校などを選んで、入試の疑似体験を得ることが可能です。

 ⑤主に関西圏での事象になりますが、一般入試とは別に自己推薦型の入試を実施している私立中学校の場合、出願要件や入試での合否の選考材料として模試の成績が用いられているケースがあります。その場合、中学校主催の事前の入試説明会や個別相談会で対象となる模試や模試の成績(偏差値)の基準が示されることがほとんどです。その場合、推薦入試の出願の際、中学校側が指定した模試の成績表(コピー)も提出することとなります。

 ここで示した5つの特徴を踏まえて、中学受験の勉強を始めて間もない場合の模試の必要性についてお話いたします。ちなみにお子さまが中学受験の大手集団塾に通われている場合、模試も含めたテストを塾側が定期的に設定します。模試・テストを含めた集団塾のカリキュラムに沿って学習を進められるのが一般的です。ここでは家庭学習や個人塾などで受験勉強を進めているお子さまを前提とした、模試に関する考察をお話いたします。

受験勉強を始めて間もない場合でも、学年によって模試に対する考え方も異なってきます。お子さまが小学4年生までの学年であれば模試受験を本格的に必要とするまではまだ時間があります。最初に受験予定の模試の時期やその出題範囲は参考としつつも、テキストや教材のカリキュラム表に沿って学習を進めるといいでしょう。

模試を意識すること、模試を活用していくことが受験勉強上重要となってくるのは小学5年生からです。その際、先に述べた中学受験向けの模試の特徴の③がポイントになります。小5から小6夏までの期間の模試の出題範囲は集団塾の進度や中学受験用のテキスト教材の時期ごとの学習項目を踏まえて設定されます。塾に通われていない場合でも、模試の主題範囲を見ることで、ライバルともなる集団塾に通う受験生の学習ペースを把握することができます。また、中学受験用の模試は通年の受験と復習学習を通じて、小5生の模試では小5までに学習すべき各科目の全範囲、小6生の模試では入試の全範囲が一通り学習できるように作られています。小5生で受験勉強を始めて間もない場合でも、直近の模試の出題範囲を確認して、出題範囲にある単元やテーマを重点的に学習していきましょう。模試自体の受験の判断は模試の申込期限までに判断されるといいですが、模試の特徴④にある私立中学校での試験慣れをつくることも考え、始めて受験をする模試はその結果や偏差値を出すことに意識はせず、試験に慣れること、そして受験勉強のペースメーカーとすることの観点から、可能であれば早期からの受験をおすすめいたします。

模試というと偏差値や合格可能性判定に意識がいく方が多いのですが、小6の夏まではそれらの数値や評価よりも、各科目の単元やテーマの正解率(定着率)や模試のやり直し、正解率が高くなかった単元やテーマの学習のために模試を活用することのほうが重要です。効果的かつムリ、ムダのない受験勉強のためのツールとして、模試を使って頂ければと思います。

質問その2

親子とも中学受験を考えていますが、ずっと続けている習い事(スポーツ)はセーブしなければいけないのでしょうか?習い事をやめず受験をするためのアドバイスをお願いします。

原則、習い事と受験の両立は可能。両立の場合、メリハリをつけた週予定とすきま時間の活用を!

 習い事やスポーツとの両立のご相談は、私が中学受験指導に携わってから、習い事やスポーツの種類こそ変われども、毎年のように受けてきました。

 中学受験は一生に一度の機会のみ。大学受験であれば浪人することで複数年受験のチャンスもありますが、中学受験は12歳(11歳)の1度の期間のみ。他方、小学生の習い事やスポーツは、小学6年生(前後)のみの大会やコンクールのみということは少なく、中学受験の時期だけ活動を休止したりセーブをしたりして、受験が終わったら再開すればいいではないか、という考え方もあるかもしれません。しかし、習い事やスポーツをしているお子さまご本人にとっては、楽しく、充実している習い事やスポーツを受験のためにやめたり、セーブすることをしたくないと考えるのが当然だと思います。結論から話せば、習い事やスポーツと中学受験は、難関校受験も含めて両立は可能です。ただし、習い事やスポーツをしない受験生に比べて、毎日の生活がややタイトになります。

 習い事やスポーツは週何回されていますでしょうか。プロを目指して、もしくは既に(古典芸能や子役などの芸能人など)プロとなっているお子さまで毎日、習い事や練習、お稽古となると日々の受験勉強や塾通いが厳しい面もありますが、一般的な習い事やスポーツであれば、週1日から多くて週4日までではないでしょうか。他方、中学受験の塾ですが、集団指導塾の場合週2日から週4日(土日のオプションを入れると週5日・週6日の塾もあります)、個別指導塾の場合は週1日からの授業設定になります。タイトにはなりますが、習い事と塾通いをそれぞれ週3日(前後)までとするならば両立は充分可能です。

 習い事(スポーツ)と塾通いの両立に際してポイントになるのが、曜日ごとのメリハリとすきま時間の学習の重要性です。例えば、月・水・金に学習塾、火・木に習い事、土日にも習い事の行事や大会がある可能性があることを想定しています。塾のある月・水・金はしっかりと勉強をします。他方、火・木は習い事がありますし、習い事終了後は疲労もあるでしょうから、帰宅後の勉強は事実上不可能と考えるべきでしょう。土日は習い事がない日は塾の復習や宿題などの学習に充てる一方(時期によっては模試が入ったりします)で、習い事がある日は習い事。もっとも、習い事、スポーツ、集団塾とも、曜日調整が可能なところもあればそうでないところもあるかと思います。曜日調整については、習い事やスポーツ、塾、それぞれと相談を重ねることも重要です。

 習い事やスポーツがある日、重要なのは習い事やスポーツの終了後の時間は学習が不可能であっても、学校帰宅後から習い事より前の時間、少しでも時間があれば漢字や計算、理科・社会の用語学習など、10分や20分程度のすきま時間で完結可能な小学習を可能な範囲で進めて欲しい、ということです。また、習い事のある日、塾のある日に限らず、早寝早起きを慣行して、早起きをしたあと10分から30分(以内)のすきま時間に、計算問題や漢字・用語学習など朝学習を進めることができると理想です。

 すきま学習や朝学習、言葉で言うことは簡単ですが、毎日続けることは難しいことです。しかし、習い事やスポーツとの両立においては、疲れていない時間帯の勉強量の確保が特に重要になります。普段は窮屈に感じてしますかもしれませんが、時には習い事や受験勉強から離れた気分転換(小旅行や食事会など)も組み入れつつ、習い事やスポーツをセーブしたくないのであれば、曜日ごとのメリハリとすきま時間の学習を意識していきましょう。

 

\第1・2弾、特別編はこちら/
中学受験Q&A 第1弾  中学受験に塾通いは必須?他

中学受験Q&A 第2弾  併願校選びのポイントは?他

中学受験Q&A 特別編  受験終了後は何を勉強すべき?他

 

<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>