2023/01/10
関東関西有名中学入試分析【中学受験Q&A 特別編】
中学受験Q&A特別編 中学合格後のことを教えてください!
前回のコラムで「中学入試に挑む小6生のみなさんと保護者様に向けた内容は(前回で)最後」と述べましたが、中学受験終了後から中学入学前後に関するコラムのご要望を読者の方からお受けいたしました。今回は特別編として、私が中学受験指導の際、過去にお受けをしたご質問やご相談から抜粋して、中学合格後や中学入学前後のポイントをお伝えしていきたいと思います。
※今回の質問3題は、過去の中学受験指導の際、私が過去に保護者様から受けた質問をベースにしたものです。
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質問その1
受験終了後、何を勉強していいのかわかりません。どの科目を勉強すればいいでしょうか。
集団塾に通われた方、個別指導塾に通われた方、自宅学習や家庭教師で受験勉強を進めた方、中学受験の勉強方法は様々です。勉強方法は様々ですが、どの受験生も入試本番まで勉強に継ぐ勉強の日々だったと思います。入試が終わり、いきなり「次は中学入学準備」や「次は○○大学に向けて」の勉強再開は、受験を終えたばかりの小学生にとっては肉体的にも精神的にもつらいところがあると思います。入試直後は受験生本人が希望をする場合は別として、受験勉強のために今までは控えていた習い事の再開や読書を中心に考えるといいでしょう。
そのうえで、「中学に向けて勉強をしたい」、「大学進学や将来に向けて、この科目を勉強したい」という意欲が、新中学生ご自身に湧いてきたのであれば本格的な勉強を再開したらいいでしょう。ご自身で勉強をしたい科目が決まっているのであれば、その科目でいいでしょう。英語や数学が一般的ではありますが、生物や化学などの理科、歴史や地理などの社会、それぞれの特定分野でも構いません。教科・科目に興味をもつこと、それらを自発的に勉強すること自体が中学での学業のみならず、その先の大学進学や将来の進路にも大きく役立ちます。
他方、「勉強はしたいけど、しなければならないと思っているけど、どの科目を勉強していいのかわからない」というご相談も、よくお聞きします。個々の生徒さんの進学先や将来の希望、中学受験の学習状況にも拠って異なる場合もありますが、総じては英語をお勧めしています。
現在は小学校の授業科目にも英語がありますが、中学入試において英語を試験必須科目としている中学校はまだ少なく、中学受験の勉強にあたって、英語の学習や習い事をセーブされた受験生が多いのではないでしょうか。公立中学校(検定教科書レベル)においてでも英語の学習内容(英単語や英文法の学習範囲)が過去に比べて格段に広がるなか、中高一貫の中学校の場合、学校によっては中1段階でも、本来であれば高校生になってから習う英単語や英文法も盛り込んだ中高一貫校用の教科書や教材を使って、進度が速く、難易度もより高い授業を進めるところもあります。また私立中学校には英検やGTEC(ベネッセコーポレーションが実施している英語4技能検定)の受検を必修化しているところも多く、どこの私立中学校も英語教育に力を入れています。
中学入学前の英語学習のポイントは学習方法と学習習慣の定着です。学習方法についてですが、従来からの紙媒体の教科書、参考書、問題集、ノート、辞書に加えて、電子辞書、最近ではパソコンやタブレット、スマホなどの電子媒体による教材や学習コンテンツなどを使っていくことになりますが、私は紙媒体の辞書や参考書を使い慣れることを目標とすることを、新中学生にはお勧めしています。電子媒体の辞書や参考書は単語や用語の意味をすばやく調べるのには重宝しますが、例えば、英単語の複数の意味を使いわける事例を比較する際や付箋紙などを使い、情報の書き込みをして、再検索の際に役立つなど、学習上、紙媒体のほうが効果的なことが多くあります。また、今後電子化やIT化は進んでいきますが、大学での学問や研究において、紙媒体の資料や論文を選び比較検討をしたり、読み込んだりする能力は今後も必要であり、紙媒体の辞書や参考書を使うことに慣れる事自体が将来に役立ちます。
英語がより重要になっていくのは間違いありませんが、理系の進路を既に考えている場合、もしくは理系か文系かは決めてはないけれども、進学先の中学校(コース)の進度が速く、かつ中学受験の算数は苦手にしている場合は小学校の算数の固め直しを進める必要がある場合があります。中学数学の先取りというよりは、小学算数の四則計算や分数・小数の計算、文章説明の問題から計算式や線分図を導き出す練習など、中学数学の土台となり、かつ中学校に入ってからの復習や再学習の時間が取りにくくなる基礎基本の確立に重きを置いた学習です。
質問その2
中高一貫校でも塾通いは必要でしょうか。
私立の中高一貫校の多くは学校の授業と家庭での宿題や予習復習で、大学進学などの目標達成のための学力養成は可能なカリキュラムを組んでいます。そのカリキュラム通りに無理なく学習が進むのであれば、集団授業塾であれ、個別指導塾であれ、原則的には塾通いは必要ないと思います。しかし、それは「学校の授業と家庭での宿題や予習復習」が順調に進んだ場合であり、学校の授業進度についていけなくなったなど、順調に進まない場合や、逆に学校の授業の進度が遅く、学校のテストは高得点がとれて、自身の希望する進路実現のためには早期から「より先に」、「より深い」学習
が必要と感じた場合には、外部の塾を活用するという選択肢もあります。
私は現在、個別指導学院フリーステップの教室運営にも携わっていますが、私の運営している教室にも中高一貫校に通う中学生も通っています。通塾理由は多岐にわたります。学校の進度が速く、学校での学習内容を定着させて定期テストの点数を上げたいという目的の生徒。習い事で多忙な中、塾に通う日に学校の宿題や学習内容を効率的に進めたいという目的の生徒。高校の学習範囲を含んだ英検の級合格を目指している生徒。目標とする学部や進路が明確にあり、現役合格に向けて数学や理科系科目を学校の進度より先に学習することも目的としている生徒、など。
個別指導塾や家庭教師の場合、個々の生徒のニーズや個性に応じて、カリキュラムや曜日・時間帯を柔軟に組むことが可能です。他方、集団指導塾に通う中高一貫校生も、難関校とされる学校に通う中学生や高校受験で外部受験を考えている中学生を中心に、一定数います。集団指導塾のメリットは、同じ目標を持つ他校の生徒と切磋琢磨しながら学習を進めることができることが第一に挙げられます。もっとも、集団授業塾に通うことが生徒個々の希望する進路実現の絶対必須の条件とは限らず、もちろん学力養成が通塾の第一目的ではあるのですが、例えば、東京大学進学を目指す中高一貫校生が多く通う集団授業塾の場合、東大や同じ科類(学部・学科)を目指す他校の同性・異性の同学年の生徒との接点や交流を広めるサークル的・サロン的場所としての役割を求める中学生もいると聞きます。
学習そのものに関しては、中高一貫校の多くは「学校におまかせあれ!」というスタンスです。仮に学校の授業内容が難しくなったり、わからないところが出てきても、学校の先生に質問できたり、課外補習などのフォローをしてくれる学校が多いです。そのうえで、それでもやはり塾も活用したいと生徒ご本人が考える場合には、その際に塾について検討されてもいいのではと思います。
質問その3
中学受験をしましたが入学を希望する中学校には合格できず、併願した私立中学校に入学することにはなりました。しかし、本人は高校受験でリベンジをしたいと話しています。他の高校受験をするにあたっても私立中学校のままで大丈夫でしょうか。
まずは中高一貫の中学校(私立・国公立を含めた中等教育学校も)からの他の高校受験の是非についてお話いたします。中高一貫の中学校から、併設ではない他の高校を受験すること自体は可能ですし、中学校の先生から他校受験を認められない、即退学(転校)になるということはありません。内申書など、高校受験出願の関連した書類の作成は、中学校側の義務として行われます。しかし、当然にはなりますが、併設の高校への進学権利は放棄することになりますし、高校への内部進学が原則の中学校からの他校受験に関する指導はありません。
中高一貫校から他の高校を受験するか否か。これについては生徒ご本人の気持ちや価値観、受験希望の高校への憧れや合格可能性など、「受験すべき」か「受験すべきではない」かという私見はケースバイケースで異なってきます。ただし、総じてはご縁のあった中高一貫校で6年間を過ごすほうがいいのでは、と考えるケースが多くなります。
例えば、東京大学や京都大学、国公立大学の医学部医学科など、入試科目数の多い難関国公立大学を目指している私立中高一貫校中学生の場合、開成高校(東京都荒川区)や灘高校(神戸市東灘区)などの高校外部募集をしている中高一貫の進学校の受験を希望するとします。その中学生が通う中高一貫校からも東大や京大、国公立大医学部医学科に、毎年コンスタントに現役合格者数(例えば合わせて10名以上。20名以上であれば尚更)を輩出しているのであれば、今通う中高一貫校のカリキュラムや先生方を活用して受験勉強を進めれば、難関大学も充分に合格可能と言えるでしょう。それでも、どうしても高校受験をしたい、と言うのであれば、大学受験というよりは開成高校や灘高校でしか体験できないこと(例えば、開成高校の運動会の棒倒しに憧れているとか、"柔道の父"嘉納治五郎とも縁がある灘高校の柔道部に入りたいとか)という理由が強い場合になると思います。
私は中高一貫の中学校から積極的に外部高校受験を推奨してわけではありませんが、首都圏に住む男子中学生の場合、早稲田大学と慶應義塾大学の系列高校の男子定員が双方とも多いため、中学受験で早慶系の中学校への合格にあと一歩届かず他の私立中学校に進学した男子中学生が、「どうしても早慶に行きたい」と早慶系の高校受験を再チャレンジするケースも珍しくはありません。もっとも、早慶系列に限らず、外部高校受験をする場合は併設高校進学を辞退することになるため、早慶系以外の高校の併願受験やその合格可能性を模試で測定するなど、綿密な準備が必要になります。ちなみに早慶系の高校に限らず、首都圏の多くの私立高校の一般入試は英語・数学・国語の3科目のため、早慶の系列高校入試を考える中学生は、特に入試問題の難易度が大学入試並に高い英語や国語の対策を早期から始める傾向にあります。
※早慶系の高校受験については、私が書いた「関東関西有名中学入試分析 【有名私立大学系列校 中学受験or高校受験 どちらを選ぶ?】」をご参照ください。
中学受験では思ったような結果が出ず、志望校とは異なる中学校に進学が決まった場合、入学当初は複雑な感情が残っているかもしれません。しかし、通学を重ね、先生方や同級生、部活などの先輩の中高生と接していくなかで「この学校、いいかも」と思えるケースが少なくありません。まずは入学する中学校生活を経験してみましょう。万が一、それでもやはり、と思う時には、中学受験の際の塾の先生にも相談をしてからでも遅くはないと思います。
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<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>