2025/08/01
2025年度公立高校入試分析~過去問研究から傾向・対策を知る~【大阪府C問題】
公立高校入試分析は各都府県の高校入試の対策について「どのような傾向・形式の問題が出題されるのか、それに向けてどのような対策をしていけば良いのか」を正しく理解していただくことを主な目的としています。今後の高校入試対策をより効果的・効率的なものにするために、2023年度、2024年度と2025年度の出題傾向の比較や、2025年度入試の各科目の全体概観・大問別問題分析・おすすめの解答順序、そして中学3年の8月以降の入試対策を掲載しています。
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INDEX |
1.英語C問題 試験時間55分 満点90点
全体概観
- 語彙・文法は造作ない
語彙・文法力が、英語力を正確性・速さともに底上げする。語彙・文法を理解していることは前提として、いかなる場面においてもすぐに思い出せるようにしておくこと。
- 速読が必須
英文に使われている文法の理解、精読ができることを確認してから、速読の練習を積むこと。速読ができない場合、解答時間が不足する。
- 根拠を持って解答する
速読が必須であり、さらに中途半端な理解では正答にたどりつけない。出題者は必ず解答根拠を問題文中に残しているため、その根拠を見つけて解答する必要がある。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【1】文法 《解答数:6 配点:12点 難易度:易》
文法知識問題。同じ単語で並びの異なる句が4つ与えられる。5文型を理解した上で、構造が正しい英文を選び取ること。分詞修飾、関係代名詞、各動詞の目的語のとり方などが出題されている。素早く正確に解き全問正解したい。文法事項における理解度と処理速度を最大限に高める訓練が必須である。
大問【2】図表問題 《解答数:3 配点:6点 難易度:易》
AIに関する調査結果についての文と図から、適する語句と図を補充する問題が出題。語数は190語程度。文や句ではなく、図そのものを選択する問題が過去3年間で初めて出題されている。例年、表で示されている数値に関して出題されることが多い。倍数表現や比較の慣用表現の暗記は必須。
大問【3】長文読解 《解答数:5 配点:10点 難易度:やや易》
コルクの概要の長文から、適語(句)補充、内容一致問題が出題。語数は220語程度。文章下部にある英単語の和訳を有効に活用すること。2種類の空所補充問題(単語を選択する問題と文の一部を選択する問題)が出題されているが、どちらもその空所が含まれる段落に解答の根拠となる部分が書かれている。その段落の要点を正しくつかむことが重要である。
大問【4】長文読解 《解答数:5 配点:10点 難易度:やや易》
「上総掘り」についての長文から、適語(句)補充、脱文挿入、内容一致、指示語解釈問題が出題。語数は350語程度。最後の問題で、文章の内容と一致する文を選択肢から選ぶ形式の問題が出題される。効率的に問題を解くために、あらかじめ選択肢を読み、解答の根拠となる部分を探しながら文章を読むことが重要である。
大問【5】長文読解 《解答数:6 配点:12点 難易度:やや易》
プラネタリウムの歴史についての長文から、適語(句)補充、内容一致、文整序問題が出題。語数は480語程度。語数が多いため、段落ごとに整理しつつ速読すること。長文読解が正しくできている場合、選択肢は根拠を持ってただ1つに絞ることができる。設問で考え込まないように長文読解に時間をかけ、解答根拠箇所に戻って素早く正解を選ぶことができるようにすること。
大問【6】英作文 《解答数:1 配点:10点 難易度:やや難》
何か重要な学びを得た経験を1つ示し、その経験がどのように自身を変えたかを英語で書く問題。質問に対する応答となる簡潔な1文を最初に、次に具体例を記述する。自由英作文に必要な語彙・文法力は練習を通して蓄えておくこと。設問の語彙を少し利用するのも一手である。
大問【A】大問【B】大問【C】リスニング 《解答数:8 配点:30点 難易度:やや易》
part A~Cの3種類の問題形式から出題。音声は全て2回再生。part A・part Bは、それぞれ2人の会話、ある教師の自己紹介についての内容一致問題。part Cは、新年に伴い新しく始めることについて話し合う2人の会話についてまとめる英作文問題が出題。リスニング問題全体の得点率(70%)が、2024年度の得点率(54%)から大きく上昇した。A・Bと比較してCの記述を含むリスニング問題は難易度が高い。リスニングに自信のある人は、Cの対策を重点的に行い他の受験生に差をつけること、リスニングに自信がない人はA・Bで確実に得点を稼ぐための対策が重要である。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【1】1分→【2】3分→【3】5分→【4】7分→【5】8分→【6】4分→【見直し】2分→【リスニング】25分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 過去3年間、出題傾向と単元ともに変化なし。
- 長文読解の配点が高い。
- 短時間で多くの問題を解く必要がある。
【入試対策】
■8~9月:単語文法固め
文法問題自体は少ないものの、4つの読解問題が出題され、文章量も多い。そのため、迅速に文章を理解するための文法・語法の理解力は必須。特に分詞や関係代名詞(省略を含む)を使った後置修飾、間接疑問、仮定法を使った文は、入試問題に用いられやすい。
■10~12月:会話文・長文対策
本番では時間に余裕がないため、速読の力を身につけておく必要がある。具体的な対策としては、『BUILDER受験版(学書)』などの長文読解問題で、単語一つひとつ理解するのではなく文章をひとつのかたまりとして認識し、文章ごとを内容のつながりを意識して理解する。長文読解問題を数多くこなし、復習する。
■1月~入試:会話文・長文対策
年末からは過去問対策を中心に行い、時間配分に気を付けて問題に慣れておくこと。長文読解の問題形式を把握する必要がある。この時期には、リスニングと英作文の過去問や問題集で練習を重ねる。リスニングでも英作文の力が問われているため、両方のトレーニングをすることが望ましい。
2.数学C問題 試験時間60分 満点90点
全体概観
- 圧倒的な計算量・文章量
大問3問、設問17問の構成。単純な問題も多く出題されているが、計算量・文章量が多く、早く正確な計算が求められる。特に小問集合は配点も高いため、ケアレスミスは命取りである。
- 図形の範囲から多く出題される
例年、大問【2】は平面図形、大問【3】は空間図形から出題されている。図形の範囲はよく復習し、どのような問題が出ても必要な考えが浮かぶように、演習を繰り返すことが重要である。
- 時間配分とケアレスミスに注意
証明問題や記述式の問題は例年出題されているが、全てを漏れなく解こうとしても時間が足りなくなる可能性が高い。日頃から、解けるところまでは確実に解くことを意識した演習が必要である。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【1】小問集合 《解答数:10 配点:44点 難易度:やや易》
数と式の計算問題や平方根、因数分解、関数などの幅広い分野から出題されている。問題数が多く、単純であるものの計算量が多い問題も出題されているため、早く正確な計算力が求められる。柔軟な思考力を問う問題が多いため、普段から問題の根底まで理解するように意識して取り組んでおきたい。
大問【2】平面図形 《解答数:4 配点:22点 難易度:やや難》
(1)は二等辺三角形の内角から外角を求める問題。二等辺三角形の性質を知っていれば難なく正答できる。(2)の相似の証明問題は、与えられた条件を正確に読み取ることが重要である。(3)は相似であることを活かして計算を行うことがポイント。かなりややこしい問題なので、時間を見ながらペース配分も考えたい。
大問【3】空間図形 《解答数:5 配点:24点 難易度:やや難》
問題文が長く、情報量が多いため、空間図形の想像力と問題文を正確に分析する力が求められる。計算自体は単純だが、立式に時間を要する可能性があるため、解ける問題から優先的に取り組むとよい。加えて、問題数が多いことから、迅速かつ正確に解けるように練習しておきたい。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【1】18分→【2】17分→【3】20分→【見直し】5分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 小問集合は例年ほとんど同じ範囲から出題されており、配点が高い。
- 計算量、問題の分量がA問題・B問題に比べて多い。
- 空間図形の得点率が低い。
【入試対策】
■8~9月:応用力養成
難易度の高いテキストを用いて、教科書レベルから入試レベルへの底上げを行いたい。学習済み範囲の基礎固めをしたうえで、3年生2学期以降の内容も予習し、10月以降の入試形式演習に備えることが望ましい。
■10~12月:頻出単元対策
合否を分ける「平面図形」「空間図形」の発展問題演習を中心に行う。加えて、直近3年間では、資料の活用や標本調査といった単元も小問集合で出題されているため、小問集合は全範囲偏りなく対策しておきたい。
■1月~入試:時間配分の調整
入試直前期は、過去問の他、『精選全国高校入試問題集(エデュケーショナルネットワーク)』を用いる。入試の標準レベル以上の問題を制限時間よりも短い時間で解く訓練をして、時間配分を意識した演習を積み重ねておく。
3.国語C問題 試験時間50分 満点90点
全体概観
- 漢字・文法問題で点を落とさない
漢字、文法問題、内容理解、作文が出題される。漢字・文法問題は配点こそ大きくはないが、着実に得点を重ねることができる部分であるため、全問正解が必須である。
- 記述問題の練習が必須
記述問題は、作文を含めて配点の半分近くを占めるため、練習が必須。十分な試験時間がないため、解答の根拠となる箇所を素早く見つけ、自分の言葉で解答文を考える練習をしておくこと。
- 作文が特徴的
C問題では資料が提示され、それを踏まえたうえで、自分の意見や根拠を書く必要がある。資料の意図を考えることでアイデアが浮かぶこともあるので、資料を読み込むことが必須である。
2025年度 大問別問題分析・おすすめの解答順序
大問【一】論説文 《解答数:4 配点:19点 難易度:やや易》
山崎正和『二十一世紀の遠景』からの出題。「もの」を見るときの視点に関連した内容。文法1題、内容理解(記号)1題、接続詞1題、内容理解(記述)1題が出題されている。文章の内容は、具体例を利用しながら読み進めていくと理解しやすい。記述問題は条件の文字数が多いため、該当箇所を素早く見つけて文字数に合うよう整理する時間を確保する必要がある。
大問【二】古文 《解答数:4 配点:16点 難易度:やや易》
上島鬼貫『独ごと』からの出題。秀逸な発句とはなにか、そしてそれを生み出すには、秀逸な発句を詠み、自分の感性を疑うことが必要であるという内容。内容理解(記号)2題、内容理解(記述)1題、本文中の単語の意味を問う知識問題が1題出題されている。特段難しい語彙はないが、文法を理解し、正確に内容を把握できているかが求められる。そのため、基本的な単語や文法を覚え、内容を読み取る練習を積み重ねる。
大問【三】漢字・漢文 《解答数:7 配点:11点 難易度:易》
(1)では漢字の読み書きの問題が6問、(2)では漢文の返り点を付ける問題が1問出題されている。あまり配点としては高くないが、数少ない知識問題で受験者の得点率も非常に高いため、確実に得点したい部分である。特に、例年漢文の返り点についての問題が出題されているため、文法知識を正確に把握し多様な問題で練習しておくこと。
大問【四】論説文 《解答数:5 配点:24点 難易度:やや易》
矢内原伊作『藝術への招待』からの出題。感覚・永遠的なものを芸術の本質と定義し、それらに関連した内容である。内容理解(記号)2題、内容理解(抜き出し)2題、内容理解(記述)1題が出題されている。抜き出し問題と記述問題は、どちらも内容をまとめた文の空欄補充の形式であるため、前後の言葉をヒントにしながら文脈に合うように書いていく必要がある。
大問【五】作文 《解答数:1 配点:20点 難易度:標準》
提示された資料にふれながら、「日本語の特徴」について300字以内で記述する問題。限られた字数の中で、自分の考えやその根拠をわかりやすく明示する必要がある。自然に資料の情報を入れ込んだり、順序立てて話が展開できるよう何度も練習することに加え、客観的に見ることができる他者に添削してもらうことも有効である。
おすすめの大問別時間配分・解答順序
【一】10分→【二】7分→【三】3分→【四】12分→【五】15分→【見直し】3分
出題傾向(過去3年間)から見える入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
【出題傾向】
- 小説や随筆の出題なし。
- 2025年度は大問【三】の全問題で得点率が88%以上。
- 過去3年間、作文が出題されており、5割程度の得点率。
【入試対策】
■8~9月:読解&知識の基礎
9月までに読解と国語知識の基礎を固めておく。『実力練成テキスト(文理)』で論説・説明文を中心に読解演習を積む。入試当日は試験時間に余裕がないため、素早く文章の内容を把握できることが求められる。また、『みにつく国語(好学出版)』で漢字の読み書き、熟語、ことわざ、慣用句などの国語知識を身につけておく。
■10~12月:記述&作文対策
『Sirius21 まとめと完成 標準編(育伸社)』で読解・記述対策問題に取り組む。古文・漢文が苦手な場合は、『練成古典問題集(育伸社)』を使って文法事項を復習。また作文対策は『ロジカル国語表現(好学出版)』を用いて、資料を的確に読み取り、論理的に表現する力を養う。
■1月~入試:過去問演習
直前期は、入試当日と同じ時間内でペース配分を考慮しながら過去問演習を繰り返す。『精選全国高校入試問題集(エデュケーショナルネットワーク)』を総仕上げとして活用するのもよい。作文対策としてB問題の過去問にも取り組み、演習量を増やしておく。
いかがでしたでしょうか。
公立高校入試は中学3年生のほとんどが通る大事な入試です。当記事の分析結果だけでなく、2024年度以前の過去問も必ず研究し、十分な対策をしたうえで挑み、合格を勝ち取りましょう。
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