2023/10/02
関東関西有名中学入試分析【中学受験Q&A 第4弾】
10月になりました。中学受験を考えていらっしゃる小学生のご家庭にとって、10月から11月にかけてのこの時期は、この先の進路決定のターニングポイント(分岐点)となりやすい時期となります。小学6年生にとっては第一志望校や併願校を確定しつつ、入試までの学習を仕上げていく時期となります。他方、小学5年生や小学4年生(以下)のご家庭にとっても、志望校や学習方法など、中学受験の方向性を決める、もしくは修正していく時期となります。
今回は、今まで4回にわたり書かせて頂いた中学受験Q&Aシリーズの第5弾として、10月から11月の時期において、中学受験を考えている小6生、小5生・小4生、それぞれのご家庭のポイントとなる事項のご質問・ご相談について、返答形式で述べていきたいと思います。
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質問その1:小6生のご家庭の相談
第一志望校合格に向けて勉強を頑張ってきましたが、模試での第一志望校の合格判定がずっと良くありません(合格可能性20%)。今までの第一志望校は諦めて、別の中学校を志望校とするべきなのでしょうか?
第一志望校は変えない。頑張ってきたことを褒める!併願校をどのようにしていくかが重要!
第一志望校を定めて、今まで受験勉強を頑張ってきた小学6年生のご家庭のみなさん。頑張ってきたことに誇りを持ち、保護者の皆さんはぜひお子さんを褒めてあげましょう。
今年の夏休み、塾通い(夏期講習の受講)をされたご家庭も、自宅学習中心に受験勉強を進めたご家庭も、どのご家庭も受験勉強を頑張って来られたと思います。今の時期はその夏休みの学習の後、8月後半から9月にかけての中学受験生対象の模試(公開テスト)の結果が出ているかと思います。志望校によっては当該中学校の入試問題に擬した学校別の模試も実施され、その結果が出ているご家庭もあるかと存じます。
夏休みの学習の成果が模試の結果(点数や偏差値の上昇)となって出ているのが理想ですが、勉強時間をかけたにもかかわらず模試の結果が振るわない、志望校の合格判定が芳しくなかった小6受験生も、残念ながらいらっしゃるかと思います。しかし、模試の結果が芳しくないから第一志望校合格は難しい、志望校を変更する、と考える必要はありません。むしろ、「合格しやすい」、「安全策」という観点で第一志望校を変更することは、その後の受験勉強や中学受験そのものに予期せぬ影響が生じる可能性があります。
このことは中学受験に限らず高校受験や大学受験においても言われることですが、受験学年の秋季以降の模試の判定や国公立大受験生の場合、大学入試共通テストの自己採点の結果、第一志望校を変更し、模試や共通テストのリサーチをもとに「安全策」とする学校を志望校とした場合、「安全策」としたはずの学校が不合格となるケースが、実は珍しくはありません。その理由は、元々の第一志望校を「諦めた」ことによる、受験勉強に対する意欲の低下と勉強量および勉強の質の低下。「安全策」としたことによる、受験勉強への気持ちの緩み(油断)。元々の第一志望校と実際の受験校との入試問題の科目や出題形式・傾向の違い。などがあげられます。また、受験した学校に合格・入学となった場合でも、入学先の学校について充分に調べていない、理解や納得ができていないままの入学となったり、受験生本人が不本意感や劣等感を払拭できないまま、学校になじめないことが続き、中学校の場合は他校への転校や高校受験の検討となるケースもあります。
首都圏や近畿圏における中学入試は、日程的に、また時間帯的に、第一志望校以外の中学校が併願しやすい日程となっています。例えば、東京都にある私立中学校の場合、一般入試は毎年、2月1日が解禁日となります。中学校によって入試実施回数や時間帯(午前中または午後)は異なりますが、2月1日から5日、6日にかけて、東京都にある中学校に限らず、神奈川、埼玉、千葉など、隣接県の中学校も含めて、中学入試が実施されます。第一志望校が2月1日の午前中実施の場合、2月1日の午後以降、「安全策」と考える中学校を含めて、複数の中学校の併願受験を考えることができます。2月1日午前の第一志望校の入試前に入試経験を得たい場合、事前に合格を確保しておきたい場合、1月中から入試を実施する埼玉県や千葉県にある中学校を受験することも可能です。
中学受験への考え方、第一志望校への考えやこだわりはご家庭によって多種多様だと思います。第一志望校に合格できなかったら公立中学校進学で構わない、というご家庭もいらっしゃるでしょうし、例えば、将来は医学部(医学科)に進学したいと考えているお子さまの場合は医学部への進学実績や理数科目の教育体制が充実している中高一貫校がいい(公立中学校進学は考えていない)、というご家庭もあるかと思います。そのような多種多様な考え方のなかで「併願校はこのように決めましょう」と一元的な助言とするのは難しいところですが、併願校の選び方・決め方のポイントとしては、
- 第一志望校よりは入試難易度(偏差値)が抑えめであること
- 第一志望校と校風や入試問題傾向が似ていること
- 進路指導に多様性がある、もしくは希望する進路実績に定評がある。
以上の3点をあげることができます。
併願校は第一志望校よりも合格可能性の高い学校であることが前提になります。そのうえで、②の校風や入試問題の類似性が重要になります。私服通学、私服在学を認めるなど、自由度の高い学校がいいのか。むしろ、校則や授業カリキュラムは厳しめかな?と思うけれども、中学高校6年間で学力も心身も鍛えてくれる学校がいいのか。併願校を選ぶ着眼点も第一志望校との共通性の多さから考えるのが基本です。そして、入試問題でも、第一志望校に向けた入試対策が活きる学校を選ぶ。逆を言えば、第一志望校の入試の出題傾向と異なる対策が多く必要になる学校は併願校として考えることは難しい、ということになります。
③進路指導の多様性とは、ここでは、大学受験のみならず高校受験を含めて、お子さまの進路選択に沿った柔軟な進路指導が可能な中学校であるか、という意味です。第一志望校ではない中学校への進学は、もちろんその中学校・高校に馴染み、愛着を持って6年間過ごして欲しいと思うところですが、第一志望校の併設高校が高校入試を実施していたり、中学受験の際は思いもつかなかったけれども、大学附属校・系列校など、高校受験でチャレンジしたいと本人が考えた場合、中学校が柔軟な進路指導が可能か否か、ということです。私立中学校のほとんどは高校を併設し、中学高校6年間の一貫教育を実施するケースが多いのですが、大学の附属校や系列校を中心に、中学高校併設ではあるけれども、中学校と高校では学習カリキュラムがそれぞれ完結している(中高一貫の進学校によくある、数学や英語の中学校段階での高校課程の先取り授業を実施していない)ケースもあります。高校を併設している私立中学校において、併設高校以外の高校への進学状況を公表しているケースは極めて少ないのですが、高校の入試説明会や学校説明会、個別相談会などでは、合格者の出身中学校(私立中学校を含めた)の統計を公表している学校もあります。高校募集も実施している高校の併設(関係)中学を第一志望校とする際には、高校入試に関する説明会や資料も参考とされるいいでしょう。
質問その2:小5生のご家庭の相談
小3から集団塾で中学受験の勉強をしています。第一志望校は決まっていますが、ここ最近、塾の成績やクラスが下がったりしています。塾の宿題は忘れずに進めています。塾の先生の指示には従っていますが、最近どうも成績が上がりません。どのようにしたらいいでしょうか?
塾(先生・級友)との相性の確認。重点学習科目・ポイントの確定。秋はモチベーションを上げる機会が豊富。模試の他流試合の検討も
中学受験専門の集団塾に通われている場合、塾でのテストや模試で成績が総じて上がってきている、伸びてきているのであれば、特別な「てこ入れ策」を考える必要はありません。しかし、集団塾に通っていて、塾の宿題はしっかりと進めているのに、塾のテストや模試の成績が下がってきたり、伸び悩んできたりすることも、決して珍しいことではありません。これは質問いただいている小学5年生に限らず、すでに塾通いされている小学4年生や3年生にもあたる部分があると思います。
では、何か「てこ入れ策」を考えたらいいのでしょうか?集団塾のオプション授業や個別指導塾、家庭教師を考えたり、ということが思いつくかもしれませんが、成績が下がる・伸び悩む根源の理由を把握・確認しないまま、学習指導の追加をしても効果が出るとは限りません。
まずは成績が下がる・伸び悩む根源の理由を見つけることが大切です。その理由ですが、お子さんご自身の心身や体調に拠るもの、塾長や講師の先生、塾の同級生など、塾にまつわる人間関係や相性に拠るもの、塾のカリキュラムに拠るもの(急に難しく感じた。苦手に感じる単元が増えたなど)、もしくは小学校や塾以外の課外活動に拠るもの、など・・・。お子さんご本人が自覚していることが見つかれば、それを改善する、修正する、場合によっては除去するなどの対策が見えてきます。
他方、お子さんご本人に、成績低迷と因果関係がありそうな理由の自覚がない場合、通っている集団塾に違和感や抵抗感もないのであれば、今の時期からだと長いスパンにはなりますが、年末年始の冬休みまでの期間は既習範囲のかため直し、定着を中心に学習を進め、他方、得意科目、好きな科目については今まで以上に積極的な学習を進め、自信が持てる科目、得点源となる科目を築いていきましょう(もちろん、社会や理科でも可能です)。
お子さんには自覚意識はなくても、塾通いや自宅での受験勉強により、心身に疲労やプレッシャーが蓄積している可能性はあります。旅行やレジャーなど、リフレッシュの機会を設けることも考えていきましょう。秋は学校祭や文化祭、12月になるとキリスト教系の学校ではクリスマスにちなんだ行事など、中学校の公開行事が多く実施されます。第一志望校や受験を検討している学校はもちろんですが、受験は検討していないけれども、超難関校や有名大学の系列校など、興味本位で様々な中学校の学校行事に足を運んでみてはいかがでしょうか。大学の附属校・系列校の中学校を志望校としている場合は、この秋の時期は母体の大学の大学祭や野球、ラグビー、アメリカンフットボール、駅伝など、その大学のチームが参加する試合の観戦やスポーツイベントに参加してみるのもいいでしょう。大学生になるのはまだ先の話ですが、大学関係のイベントは強く、大きなモチベーションとなって志望校に合格した中学受験生のケースはよく聞かれます。
集団塾での学習や模試(公開テスト)を受けることに、常に前向きになっている場合は、マンネリの打破や学力状況の再確認の意味も込めて、今まで受けたことのないテスト会の模試や他集団塾の公開テスト(オープン模試)を受けてみるのはいかがでしょうか。受験勉強の好循環が目的ですから、ご相談のようないわゆる「スランプ」に陥ってしまった場合には、今通っている集団塾の模試や公開テストよりは難易度が易しめな模試を活用されるのも、スランプ打破の一手としては有効です。
今回は中学受験を考えている小6生と小5生のご家庭からのご質問・ご相談に対する返答を中心に、10月以降、この秋の中学受験生のポイントを述べてきました。
小6の中学受験生は受験校の確定も含めて、中学受験の追い込みの時期となります。第一志望校に初志貫徹で学習を進めているご家庭もあれば、志望校の変更もあったご家庭もあるかと思います。受験生おひとりおひとりの第一志望校合格に実を結ぶ秋となることを願っています。また、再来年以降の受験となる小5生や小4生などの小学生にとっては、行きたい中学校を見つけ、中学受験に向けて必要な学力を、無理なくじっくりと養成していく秋となって欲しいと思います。
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<文/開成教育グループ フリーステップ修学院教室チーフ 住本正之>