2021/08/23

Duranの留学記【第9話】

Hello there! Duran's story will begin.

Scene 9 What is the truth?

Characters

Duran=デュラン。日本からの留学生。17歳。4年制高校3年。詳細は不明。
Cindy=シンディ。義妹。17歳。4年制高校3年。可愛い。品行方正系。
Jeff=ジェフ。話に登場。イケメン。アメフト部、副キャプテン。アメリカ体育会系。
Avril =アヴリル。話に登場。女生徒。4年制高校3年。
Diana= ダイアナ。話に登場。女生徒。年齢・学年不明。
Nicole= ニコール。話に登場。女生徒。年齢・学年不明。

 

終わった。やっと終わった。学校での一日が終わったのだ。

Ⅰ限目「体育」の後、Ⅱ「社会学」、Ⅲ「化学」、Ⅳ「文学研究(国語、ね)」、Ⅴ「代数Ⅳ」、Ⅵ「ジャーナリズム」、と修行、いや授業は続いた。

 

(泣いても、いいですか...?)

 

何度そう思ったことか。

 

想像して欲しい。突然、教師から

 

"Discuss the relationship between labor and the society surrounds us."
(さあ、労働と私たちを取り巻く社会の関係について議論してみよう)

 

と、言われた時のボクの驚愕を。

 

"Wright the chemical reaction formula when butane is completely burned,"
(ブタンが完全燃焼した時の化学反応式の作り方を書いてみようか)

 

と、教師から、にこやかにチョークを渡された時のボクの顔を。

 

元素記号の読み方が万国共通でなかったとは!!

いやね、漢字とかは、まあいいんですよ。炭素→Carbon、酸素→Oxygenなんかはね。でもさ、Na(ナトリウム)→Sodium、K(カリウム)→Potassiumなんか酷くない?NaKなんか入ってないじゃん??

 

どいつもこいつも、ボクのことを留学生とは扱ってくれず、ごくごく一般の生徒として、取り扱ってくれる。ありがたいことである。

 

(せめて教科書ぐらい先に渡しておいてくれよ...)

 

と、泣きを入れたくなる。数学だけが気持ちの落ち着く授業時間だった。いや、ボクが数学ができるというワケではない(ボクは文系)。アラビア数字(1・2・3ってやつね)と数学記号、∫(積分)や、→(ベクトル)は万国共通だったのだ。「積分」が愛おしく見えたのは初めてである。

 

 

 帰りのバスの中で、Cindy(シンディ、長女・17歳)がボクの後ろのシートから話しかけてきた。

 

 

"Hi, Duran. How was your first day? You look so terrible."(Cindy)

(ハ~イ、デュラン。初日はどうだった?あなたヒドイ顔してるわ)

 

 

ボクの様子を気にしているのに、無理に陽気に振る舞う声音だ。相変わらず、やさしい。ゆっくりと話しかけてくれる彼女が、天使に見える。

 

(ちょうどいい)

 

実はボクは彼女に対して、ある仮説を抱いていたところだった。確かめてみよう。ボクは答えた。

 

 

"I'd like to say 'it's okay', but I'll tell you the truth, today's me was the worst."  ←かなりがんばった。(Duran)
(大丈夫だって言いたいところだけど、本当はね、今日のボクは最悪)

 

 

シンディは笑顔で、同情するわ、といったジェスチャーをした。

 

 

"You know I'm just a poor little young boy." (Duran)
(君にも分かるだろ?ボクはただの幼気(いたいけ)な少年さ)

"But nobody helped me."
(なのに、誰も助けてくれないんだよ)

 

 

彼女はチョット怪訝な顔をした。

 

 

"Nobody? Well, you know you're always keeping your face off."(Cindy)
(誰もって?それはあなたがいつも無表情すぎるからよ)

"But, I don't think not every American student is unfriendly, though."
(でも、アメリカの学生全部が不親切ってわけじゃないと思うんだけど)

"Is that true nobody helped you?"
(誰も助けてくれなかったって、本当?)

 

 

  (やっぱり...)

 

 

"A boy called Jeff helped me in physical education."(Duran)
(ジェフっていう奴が体育の時、助けてくれたよ)

 

"A boy? Muumuu, is that all, I mean anybody else?"(Cindy)
(男子?え~と...、それだけ?他には?)

 

 

  (確定だ!!)

 

 

"Some girls did. They're very kind and..."(Duran)
(他にも女の子たちがね。彼女たち、とっても優しくて...、)

 

"And,......?" (Cindy)
(優しくて?)

 

"Very helpful, and..." (Duran)
(とっても役に立って...、)

 

"And,......?"(Cindy)
(役に立って...?)

 

"Very charming!" (Duran)
(とっても、魅力的だった)

 

"   Oh, shame on you, Duran!"(Cindy)
   うわっ、デュランって最低!)

 

 

ボク達は笑った。う~んシンディ、可愛いなぁ。

あまり考えないようにしていたのだが、実はボクと同じ年齢のこの義妹、ダイアナ・ニコール・アヴリルと同じくらい可愛いのだ。彼女の顔がすぐそばにある。ボクは1週間ほど前に、シンディと交わした会話を思い出していた。

 

 

    回想シーン

 

"Duran, can I have a seat next to you?"(Cindy)
(デュラン、隣に座ってもいい?)

 

"Yes, what?" (Duran)
(うん、なんだい?)

 

"Well, It's about school. Is there anything I can help you?"(Cindy)
(あのさ、学校のことなんだけど。なにか手伝えることないかな?)

 

ボクがいつまでたっても学校について、なんの質問もしないからだろう。心配してくれていたのだと思う。ボクが自分の英語力に、やや焦り始めていることに気が付いているのかもしれない。しかしボクは、

 

"Thanks. But, it's Okay with me."←固い(Duran)
(ありがとう。でも大丈夫さ)

 

と、答えた。どうとでもできると思っていたのだ。

 

"If you say so. Okay then. But..." (Cindy)
(あなたがそう言うのだったらいいのだけど。でも...)

 

彼女は後の言葉を飲み込みこんだ。彼女はあの時、ボクが悲惨な状況に陥ることを予測していたに違いない。本当に優しい娘だったのだ。

    回想シーン終わり

 

 

ボクは回想シーンでシンディが言ったのと同じセリフを彼女に言った。

 

 

"Cindy, can I have a seat next to you?"
(シンディ、隣に座ってもいいかな?)

 

 

そして、返事を待たずに席を移動した。シンディが少し怯えた表情をした。いいじゃん、いいじゃん、映画みたいだ。が、まあ、それはいい。ボクはありったけの笑顔で彼女に言った。

 

 

"Everything was what you did for me, wasn't it?" (Duran)
(すべて、君がボクの為にしてくれたことだったんだね)

 

"Everything, what?" (Cindy)
(すべてって、なにが?)

 

"It's no use denying, those charming girls. Is Jeff the same?" (Duran)
(とぼけたってムダさ、あの美少女隊だよ。ジェフもそうなのかな?)

 

"No, Jeff has nothing to do with it." (Cindy)
(違うわ、ジェフは全く関係なんかないわ)

 

"See, the other three were what you've done." (Duran)
(ほら、あの3人はやっぱり君のおかげだったんだ)

 

 

彼女は黙った。

 

 

"I thought it was strange." (Duran)
(おかしいと思ったんだよ)

"Suddenly, three cuties come to help me."
(急に可愛い子が3人も、ボクを助けに来るなんて)

 

 

シンディが消え入りそうな声で言った。

 

 

"Maybe I did something what you didn't want. I'm sorry." (Cindy)
(たぶん余計なことをしたのね。ごめんなさい)

 

 

ボクは慌てて訂正した。

 

 

"No, not at all. Thank you very much. I appreciate you." (Duran)
(違うよ、ありがとう。感謝しまくりだよ)

"Everything you did was the right."
(君がしてくれたことは、全部が正しかったんだ)

"If they weren't there, I would definitely have been crying."
(彼女たちがいなかったら、ボクは絶対泣いていたから)

 

 

彼女はようやく笑顔になった。

 

 

"Really?" (Cindy)
(本当?)

 

"Yes, of course, definitely." (Duran)
(そうさ。もちろん。間違いなく)

"But, I need to ask you some questions."
(でもね、ちょっと聞いておきたいことがあるんだ)

 

"Yes." (Cindy)
(なに?)

 

"Why did you do that?" (Duran)
(どうして、助けようとしたの?)

 

"I definitely thought you would be in trouble." (Cindy)
(あなたが絶対に困ることになる、と思ったから)

 

"I thought so." (Duran)
(だと思った)

 

 

やっぱり彼女は優しい。

 

 

"And, why didn't you help me by yourself?" (Duran)
(で、なぜ君自身でボクを助けようとしなかったの?)

 

"You haven't really tried to speak to me those time." (Cindy)
(あなたあの頃、私に話しかけようとしなかったじゃない)

 

" I thought so."(Duran)
(だと思った)

 

 

悪いことをしたな、そう思った。あまりに英語が話せなかったので、必死に次男(Kevin: ケヴィン7歳)と三男(Jason: ジェイソン3歳)に話しかけ練習に明け暮れていたのだ。

(ごめんよ、寂しい思いをさせて...)

 

 

"And, why those three?" (Duran)
(で、なんであの三人だったんだ?)

 

 

シンディは急に笑い出した。

 

 

"Because, because I thought it would make you happy." (Cindy)
(なぜ?なぜって...、その方があなたが喜ぶと思ったから)

 

"I thought so. what?" (Duran)
(だと思った。って、なんだって?)

 

"It's a lie. Just because those three were my best friends, and"(Cindy)
(ウソよ。たまたま、あの3人が一番仲が良かったからかな、それに)

"All three said they wanted to make a fool of the poor little young Japanese."
(3人共、幼気な日本人をからかってみたいって言ってたし)

"By the way, we'll be home soon so it's about time to sit away."
(ところで、そろそろ家が近いんだけど、離れて座っとかない?)

"Once seen, I wonder if we will be in trouble with each other."
(見られちゃうと、お互い困らないかなぁ)

 

 

彼女はそうテキパキと言うと、さっさと降りる準備をし、事実一人で降りてしまった。スタスタと家へと振り向きもせずに歩いていく。

一人残されたボクは考えに沈みながらゆっくりと歩いた。

(彼女のどの言葉を信じたらいいのだろう?いや、こうなってくると、彼女たち4人の言動すべてが怪しすぎる)

「げに恐ろしきは女性なりけり」である。とにかく、家に帰ったら「反芻」の時間となるだろう。が、しかし...。

 

 

(今夜、寝る時間あるかなあ)

 

 

こうして、記念すべき学校第1日目は、暮れた。

 

See you next time!!

<文/開成教育グループ 個別指導部フリステウォーカー講師編集部:藤本憲一(Duran)>