2025/05/12
2025年度大学入学共通テスト科目別分析~過去問研究から傾向・対策を知る~【英語編】
大学入学共通テスト 科目別分析は、大学入学共通テストの対策について、「何から始めて、どう進めるのか」を正しく理解してもらうことを主目的としています。今後の共通テスト対策をより効果的・効率的なものにするために、2024年度と2025年度の問題構成の比較や、2025年度の大問別問題分析、そして高校2年生からの入試対策を掲載しています。
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数学 近日公開予定→国語 理科①(物理・化学) 理科②(生物・地学) 地理・歴史 公民 情報
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1.英語(リーディング) 試験時間80分 満点100点
問題構成(過去2年間)
- 2024年度までは1つの大問内で「A」と「B」の2つに問題が分かれている大問があったが、2025年度はその形式ではなくなり、大問数が6から8に増加している。また、解答数が2024年度の49から44に減少し、各大問の配点も変化しているが、試験時間や満点には変化なし。本文・問題文・選択肢の総語数は約5700語で、2024年度から約600語も減少したことにより、難易度としてはやや易化した。
- 2025年度は、魚の飼育のための水槽に関するパンフレットや空飛ぶ乗り物に関する討論会に参加したイギリス人のブログ記事など、身近な話題を扱った文章から、動物の睡眠パターンに関する記事や宇宙開発に関する様々な意見と資料といったアカデミックな話題を扱った文章まで、2024年度と同様に幅広いテーマから出題されている。また、ほとんどの大問で図表やイラストが使用されていることも特徴的である。
- 新学習指導要領への移行を踏まえ、高等学校教育を通して身につけた知識・技能を問うばかりでなく、それらを活用し思考力・判断力・表現力を発揮して解くことが求められる。また、短時間で大量の英語を読む速読力、多くの情報を正確に把握し整理・処理する情報処理能力が必要となるため、早期から語彙力・文法力・構文把握力の強化といった基礎的な部分を意識しつつ、多種多様な英文や資料に触れて実践的な問題に取り組む必要がある。
2025年度 大問別問題分析
【1】読解問題(チラシ)[260語程度] 《解答数:3 配点:6点 難易度:やや易》
初めて魚を飼う人向けに、水槽の装飾の仕方を3つの段階に分けて説明されたチラシ。チラシが誰にとって最も役立つかを推測する問題や、問題文を踏まえ本文から必要な情報を見つけ出したりする問題が出題されている。問3はそれぞれのイラストを注意深く見て解く必要がある。
【2】読解問題(ブログ)[430語程度] 《解答数:4 配点:12点 難易度:やや易》
空飛ぶ乗り物に関する討論会に参加したイギリス人著者のブログ記事。複数の話者が同意している内容や話者の意見を問う問題などが出題。複数の話者が登場する場合はそれぞれの意見を整理しておき、事実と意見を区別する問題では「反論の余地があるかどうか」の観点で解くことが重要。問2は本文と選択肢で言い換えの程度が大きかったため、消去法で対処してもよいが、普段の単語学習で単語と意味を1対1で覚えるのではなくイメージを思い描いて押さえておくこと。
【3】読解問題(物語文)[410語程度] 《解答数:6 配点:9点 難易度:標準》
あるバンドがコンテストに臨む物語。物語のナレーターや、コンテスト終了後のメンバーが抱いた感情を問う問題が出題されている。また、出来事を時系列に沿って並べかえる問題も出題されているが、本文がどういった流れであるかを状況ごとに要約し、展開を整理しておく必要がある。
【4】読解問題(エッセイ・コメント)[530語程度] 《解答数:4 配点:12点 難易度:標準》
生徒が書いたスローライフの実践に関するエッセイとそれに対する先生のコメント。2022年に大学入試センターが公表した試作問題の第B問と同様の形式である。先生のコメントに応じるように、適切なディスコースマーカーや一文を補う問題や、下線部と置き換える表現として正しいものを選ぶ問題が出題されている。「読む」力に加え「書く」力も問われており、今後もこういった問題は出題されると考えられるので、普段から論理展開を意識した読解を行うべきである。
【5】読解問題(Eメール・予定表)[840語程度] 《解答数:6 配点:16点 難易度:標準》
地元の企業に向けた特別な会議の開催に関する学生のEメールとそれに対する教授の返信。教授の座席案を表すイラストを選ぶ問題や、教授への返信に含めるべき内容を選ぶ問題などが出題。設問文から学生と教授のどちらのメールを参照すべきかを判断するものであったが、問2は両方を参照する必要がある。複数のパッセージからなる問題は文章量が多くなるため、設問文からキーワードを特定して効率的に読み進めることが重要。
【6】読解問題(物語文・Eメール)[950語程度] 《解答数:8 配点:12点 難易度:やや難》
プロの作家を目指す友人が書いた2人のスーパーヒーローに関する物語とその感想が書かれたEメール。2024年度の第5問の物語文と比べると2025年度は語数が大幅に減少。物語に言及・示唆されていないものを選ぶ問題などが出題されている。また、出来事を時系列に沿って並べる問題も出題されているが、本文では登場人物の現在・過去が回想を交えて述べられていたため、こういった問題では時間と場面を整理しながら読む必要がある。
【7】読解問題(記事・プレゼン概要)[920語程度] 《解答数:6 配点:16点 難易度:標準》
動物の睡眠パターンに関する記事と発表の概要をまとめたメモ。睡眠パターンを表すイラストを選ぶ問題や、メモの空所を補う問題などが出題されている。メモの小見出しと各段落の内容を対応させて正答を導く形式であるため、パラグラフリーディングを意識して読むことが重要。
【8】読解問題(図表・資料)[1220語程度] 《解答数:7 配点:17点 難易度:やや難》
宇宙開発に関する複数の意見や資料に基づき、3つの段階を踏んでエッセイの概要を作成する問題。2022年に大学入試センターが公表した試作問題の第A問と同様の形式である。文章量が多く、意見や資料が複数提示されるため、必要な情報をいかに効率的に集められるかかがポイントである。誰がどの立場か、どの資料が活用できそうかなどを設問文から素早く読み取ることが重要。
●大問別時間配分・解答順序
【1】 4分→【2】 6分→【3】 6分→【4】 8分→【5】 12分→【6】 12分→【7】 12分→【8】 15分→【見直し】5分
入試対策(学習のポイント・入試本場までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
基本文法・語法、語彙の知識を強化し確実にすることで精読力が上がる。長文対策は、まずはこの精読力を身につけることが先。基礎知識を身につけつつ、構文学習を徹底して行う。文構造を素早く正確に把握できるようになれば速読力が上がるため、この時期にしっかり取り組む。高2の終わりまでにCEFRA2~B1(英検®準2~2級)の力をつけることが目標。長文だけでなく、多くの種類の英文に触れることが大切。高3の1学期までには英検®2級レベルの力をつけることが目標。A2~B1レベルの英文を読み込み、速読力を意識した学習を行う。たくさんの英文を短時間で素早く正確に読む練習をする。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
過去問・試行調査・設問形式別問題集で演習し、スキャニング(キーワードを使って拾い読みする方法)とスキミング(文章の概要大まかに把握する方法)の使い分けて読むことを練習する。いずれも基本的な読解力があることが前提。精読力が不十分であれば構文学習をやり直す。共通テストは開始されたばかりで過去問が少なく、よく研究されている模試の活用が非常に重要。解きっぱなしにせず解説を読み込み、復習を丁寧にして解法の手順を理解して、本番の試験に臨むこと。
出典テーマ一覧(過去10年)

2.英語(リスニング) 試験時間60分 満点100点
問題構成(過去2年間)
- 大問数6題、小問数37問は問題数・配点ともに2024年度から変化なし。流れる英文の総語数は増加したが、質問・選択肢の総語数は減少し、難易度は2024年度と比べて難化している。
- 前半の第1問から第3問は1問当たりの情報量も少なく、平易な問題である。2025年度は第1問Bの解答数が1つ増加し、第2問の解答数が1つ減少した。第3問からは読み上げ回数が1回に変わるので、注意が必要である。
- 後半の第4問から第6問については大幅に問題の流れる英文の情報量が増える。また、読み上げ回数が1回のみであるため、要点を正確にメモする必要がある。また、英文が流れる前に設問の内容に目を通し、どのような問題が出題されるかをあらかじめ頭に入れておくことが重要である。
2025年度 大問別問題分析
【1】
[A]短い英文(英文から選択)[1問につき9~20語] 《解答数:4 配点:16点 難易度:やや易 読み上げ回数:2回》
[B]短い英文(イラストから選択)[1問につき11~19語] 《解答数:4 配点:12点 難易度:やや易 読み上げ回数:2回》
短い英文が流れ、Aでは最も内容の合致するもの、Bでは内容と一致するイラストを選ぶ問題が出題された。Aでは流れてくる英文を適切に言い換えている選択肢を選ぶ能力が問われる。流れてくる語句と同様のものが選択肢にあるからといってすぐに判断してしまわないように注意。Bでは提示された4つのイラストの違いが解答の根拠となる。英文が流れる前にそれぞれのイラスト部分に注目し、違いを確認しておくこと。
【2】短い対話の内容一致(イラストから選択)[1問につき35語程度] 《解答数:3 配点:12点 難易度:やや易 読み上げ回数:2回》
英文の内容と一致するイラストを選ぶ問題が出題された。最後の問題に関して、2024年度では2023年度と同様に施設内の場所を説明する内容であったが、2025年度では車で通るルートについてであった。第1問Bと同様に、それぞれのイラスト部分に注目し、違いを確認しておくこと。
【3】短い対話(語句/英文から選択)[1問につき50語程度] 《解答数:6 配点:18点 難易度:標準 読み上げ回数:1回》
日本語で状況、英文で問題と選択肢が提示されたうえで、対話を聞いて適切な選択肢を選ぶ問題。問題がわかっているため、どこに注意すればよいかは容易に判断ができる。英文が流れる前に選択肢に目を通すことが重要。比較の表現や、否定疑問文に対する受け答え方に注意。
【4】
[A]グラフや表の内容を問う問題[160語程度] 《解答数:8 配点:8点 難易度:やや難 読み上げ回数:1回》
[B]条件に合う内容を選ぶ問題[180語程度] 《解答数:1 配点:4点 難易度:やや難 読み上げ回数:1回》
Aでは流れる英文からグラフや表の空所部分に適する選択肢を選ぶ問題が出題された。英文が流れる前にグラフや表を見て問われる内容を予測しておく必要がある。また、第4問以降は1回で流れる英語の情報量が大幅に増加するため、ディスコースマーカーや接続詞に注意してメモを取ることが重要。
【5】ワークシートの完成/内容一致[370語程度] 《解答数:7 配点:16点 難易度:やや難 読み上げ回数:1回》
贈答文化に関する講義を聞き、その内容をまとめたワークシートの空所部分に適する選択肢を選ぶ問題、学生の発言が講義の内容と一致するか否かを問う問題が出題され、その後講義の内容に関する学生の会話を聞き、グラフを見ながら講義の内容と2人の会話からわかることとして適する選択肢を選ぶ問題が出題された。事前にワークシートの空所前後の内容やグラフに目を通しておくこと。
【6】
[A]長い対話の内容一致[170語程度] 《解答数:2 配点:6点 難易度:標準 読み上げ回数:1回》
[B]長い対話の内容一致[200語程度] 《解答数:2 配点:8点 難易度:標準 読み上げ回数:1回》
Aでは食事のとり方についての会話が流れ、それぞれの主張や結論に関する問題が出題された。Bでは3人の学生が鳥にえさを与えることについて話す会話が流れ、会話の内容や考えの根拠となるグラフを選ぶ問題が出題された。話者の立場や意見を整理して正しく理解することが重要。
入試対策(学習のポイント・入試本場までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
英語を正しく聞き取ることができないことは以下のような理由がある。この4つの部分を強化していくことが重要である。
①語彙力の不足 ②単語本来の発音を知らない。 ③音の変化を知らない。 ④聞き取った英語を瞬時に訳せない。
③の音の変化とはリエゾンと呼ばれる単語と単語がつながって別の音に変化する現象のことである。I want you.が実際には(アイワンチュー)のように聞こえるという現象である。④は実際には聞き取る能力ではなく,速読の能力が不足していることが原因である。リスニングでは流れてくる英語の意味を瞬時に理解するだけの速読力も同時につけておく必要がある。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
リスニングの学習方法としては流れる英語の後に続いて発音するシャドウイングや書き取りをするディクテーションが重要である。また、後半の問題になると情報量が増えるため英語を聴き取りながらメモをとる練習をしておくことも重要である。さらに、長時間英語を聞き取るための集中を持続させることに慣れておく必要もある。1回分の模擬問題の演習を行う際には途中で休憩を挟まずに本番を想定した練習を積んでおくことが重要である。
出題テーマ一覧(過去10年間)
いかがでしたでしょうか。大学入学共通テストは国公立大学受験生にとっての一次試験というだけではありません。私立大学受験生にとっても非常に有用で、共通テスト利用・併用入試制度を利用して受験パターンを組むことで、合格の可能性が大きくなります。本科目だけでなく他科目も参考にして、多くの合格を勝ち取りましょう。
他科目はこちら
数学 近日公開予定→国語 理科①(物理・化学) 理科②(生物・地学) 地理・歴史 公民 情報
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