2026/04/13
2026年度 大学入学共通テスト 物理・化学 ~過去問研究から傾向・対策を知る~
大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、「知識・技能の活用」や「学習の過程の重視」という問題作成方針に沿って作られています。複数の文章・資料・図表を読み取り、教科書で学んだ知識と結びつけて解答を導く力や、得た情報を組み合わせて多面的に考える力が広く求められます。2026年度入試の共通テストでは、物理が過去最低の平均点を記録し、情報Ⅰも難化するなど科目間の変動が見られ、受験生には出題形式の変化に動じない冷静な対応力が求められました。本記事では、今年度の出題傾向と科目別の特徴を整理し、今後の学習にどう生かすかをわかりやすく解説します。
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英語 数学 国語 理科②(生物・地学) 地理・歴史 公民 情報Ⅰ
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INDEX |
1.物理基礎 試験時間 60分(他の基礎科目1科目と合わせての試験時間) 満点50点
問題構成(過去2年間)
・大問数は2025年度と変わらず3つだが、解答数は1つ減少している。大問3はAとBに分けられているが、どちらも熱量に関する問題のため、状況把握にそこまで時間はかからないだろう。
・組み合わせ問題が増加し、実験方法の理解や実験データの読み取りに時間を要するが、問われている内容は平易であり、難易度は昨年より低い。
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2026年度 大問別問題分析
【1】小問集合 《解答数:4 配点:16点 難易度:易》
浮力、抵抗率、放射線に関する単位、波の性質からの出題で、全ての設問が基本知識・公式を覚えていれば容易に解ける問題である。
【2】力学(台車の運動) 《解答数:4 配点:16点 難易度:やや易》
運動の法則からの出題である。物体の運動を磁場の変化から読み取るという少し捻った問題であるが、典型問題であるストロボ写真を利用した実験と同じアプローチで解けるため、あまり戸惑わずに解答できると思われる。
【3】[A]蒸発熱を含んだ熱量の計算 [B]電気回路を用いた比熱の測定 《解答数:6 配点:18点 難易度:やや易》
熱とエネルギー、電気回路からの出題である。知識問題は2025年度とほぼ同じ内容が問われており、計算問題も基本的なものであるため、過去問に取り組んでいた受験生にとっては得点しやすい大問であると思われる。
●大問別時間配分・解答順序
【1】7分→【2】8分→【3】10分→【見直し】5分
入試対策(学習のポイント・入試直前までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
定期テストの出題範囲にある公式は、意味を理解した上で使いどころを自分で判断できるようにしておきたい。そのために『チャート式新物理基礎』(数研出版)や『マーク式基礎問題集 物理基礎』(河合出版)などの例題・演習問題を用いて公式の使い方を練習していくとよい。また教科書は、用語や公式を「説明できる」レベルまで読み込んでおくことが望ましい。
共通テストでは実験に関する問題が頻出なので、教科書に載っている実験については実験器具の名称や役割、手順、測定のしかた、結果の読み取りまでを、写真や表と結びつけて整理しておく必要がある。
模試で解いた問題は、正解・不正解にかかわらず必ず解説を読み、もう一度解き直しておきたい。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
年内には模試の解き直しや傍用問題集を一通り終え、教科書も全て目を通し理解している状態にしておきたい。また、12月以降は共通テストの過去問や市販の予想問題集などを用いた演習に移る必要がある。共通テストには特有の出題範囲や出題形式があるため、上記の教材で演習量を確保し、問題の流れに慣れておくことが重要である。実践演習を重ねていく中で苦手な分野が出てきた場合は、教科書や傍用問題集に戻って分野別の対策を行う必要がある。
出題分野(過去10年間)
・力学分野では、力のつり合いや、運動エネルギー・位置エネルギー含め力学的エネルギーを扱う問題が頻出。また電気分野では、電流やジュール熱・電力に関する問題が頻出である。
・ただし、毎年第1問の小問集合であらゆる分野から出題されるため、全単元を満遍なく学習する必要がある。
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2.物理 試験時間60分 満点100点
問題構成(過去2年間)
・2025年度と比べて、設問数・解答数ともに減少している。
・例年出題されていた実験や探究活動を題材にした問題が出題されていない。また、知識だけで即答できる問題がほとんど無くなり、理論計算が必要な問題が増加しているため、解答に時間がかかるだろう。以上より、全体的に大きく難化しているといえる。
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2026年度 大問別問題分析
【1】小問集合 《解答数:6 配点:25点 難易度:標準》
各分野の標準的な問題で構成されている。いずれも頻出の問題であるため、演習経験のある受験生にとっては比較的取り組みやすかっただろう。問5は状態方程式とニ乗平均速度の正確な理解が必要であるため、やや難しい。
【2】2物体の衝突 《解答数:5 配点:25点 難易度:やや難》
物体同士の衝突に関する問題である。問1・問2は典型的な問題である一方、問3・問4は運動量保存則とエネルギー保存則を総合的に理解したうえで、細かな計算処理まで正確に進める必要がある。試験時間内にこのような慣れないテーマの問題を解き切るのは難しいだろう。
【3】[A]熱サイクル [B]波の干渉 《解答数:6 配点:25点 難易度:やや難》
AとBに分かれて内容が独立している大問構成は昨年同様である。新たに状況を把握し直す必要があるため、設問数は多くないものの解答には時間を要しやすい。
Aは熱サイクルに関する問題である。いずれも標準的な問題であるため正解しておきたい。
Bは平面波と円形波の干渉に関する問題である。内容自体の難易度は標準的だが、あまり見慣れない形式の問題で、2つの進行波を正確にイメージすること自体が難しいため、総合的にやや難しい問題である。
【4】荷電粒子の運動 《解答数:5 配点:25点 難易度:やや易》
電磁場中の荷電粒子に関する問題である。問5を除き、すべての小問が単発の考察で解答できるため、一様な電場や磁場から荷電粒子が受ける力の性質と、その力による荷電粒子の運動に関する基礎的な理解があれば十分に得点できる。
●大問別時間配分・解答順序
【1】13分→【2】13分→【3】15分→【4】14分→【見直し】5分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
まずは学校の定期テストや模試で使用する公式を正しく使えているかを確認する。解説で公式が用いられている場合には、「なぜその公式を使うのか」まで理解しておくことが重要である。傍用問題集の基本から標準レベルの問題を中心に解き、その分野の理解度を確認する。理解が不十分な箇所は教科書に戻り、内容を読み直して基礎を固める。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
夏までに傍用問題集や基礎問題集を一通り終えている状態が理想である。終わっていない場合は、1~2か月を目安に集中して仕上げたい。仕上げた後は、センター試験の過去問や各予備校の共通テスト対策問題集、模試の解き直しを活用し、時間配分を意識した実戦的な演習を積む。さらに、傍用問題集より一段階レベルの高い『物理重要問題集』(数研出版)などに取り組み、題材について深堀する問題が出てきた場合は、どのような流れで解くのかを確認しておくとよい。
出題分野(過去10年間)
・全ての分野からバランスよく出題されているが、中でも力学の力積と運動量・衝突、熱分野の気体の状態変化などは頻出である。
・大問1の小問集合では5分野から広く出題されるため、満遍なく学習しておく必要がある。
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3.化学基礎 試験時間 60分(他の基礎科目1科目と合わせての試験時間) 満点50点
問題構成(過去2年間)
・2025年度と比べて、2026年度は解答数が3つ減少している。
・2025年度と比べて計算量がやや減少しており、出題内容の難易度もやや下がっている。
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2026年度 大問別問題分析
【1】小問集合 《解答数:10 配点:30点 難易度:やや易》
2026年度も小問集合が出題されている。電子配置や同位体、酸化数や分子の極性など基礎~標準レベルの問題が出題されており、基本的な知識の定着が必要である。問10では塩酸と炭酸カルシウムの反応に関する問題が出題され、実験結果をまとめた表から必要な情報を読み取り、その情報を用いて塩酸の濃度を正確に求める力が問われている。
【2】鉱物資源などを原料とする肥料の利用 《解答数:6 配点:20点 難易度:標準》
鉱物資源などを原料とする肥料の利用をテーマにして、様々な分野の問題が出題されている。問1は苦土石灰の中に含まれるカルシウムやマグネシウムに関する問題や、酸と塩基の分類を問う問題。問2は肥料の成分調整について、リン酸水素二アンモニウムを加熱するときの窒素とリンの含有率の変化についての問題。反応式の係数に注意しつつ、含有率を正確に計算する力が求められる。問3では、窒素肥料を製造する方法について、酸化還元反応や窒素含有率の計算が出題されている。特に含有率を求める問題では、グラフからデータを読み取り、その値を用いて正確に計算する力が求められる。
●大問別時間配分・解答順序
【1】13分→【2】12分→【見直し】5分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
高校3年生になるまでは、学校の授業、定期テスト、模試をしっかりこなし、テストや模試は必ず解き直しを行うこと。その際、間違えた問題は必ず教科書に戻り、教科書の図やイラストも確認しながら復習するようにしたい。また、解法の原理や公式が復習しても理解できない場合、講師に相談するなど、最優先で対策すること。
高校3年生からは、ここまでの学習に加え、教科書傍用問題集の練習問題や『チャート式新化学基礎』(数件出版)、『マーク式基礎問題集 化学基礎』(河合出版)などを用いて、解法の手順を確認しながら分野別の知識を定着させていくとよい。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
秋以降は、夏に補強しきれなかった分野の勉強と並行して、各予備校が出版している大学入学共通テスト問題集とセンター試験の過去問に取り組み、時間を計って演習していくとよい。時間配分を意識しながら、素早く、かつ丁寧に解く力を身につけたい。演習で解けなかった問題や苦手分野は、これまで使ってきた教科書・傍用問題集・参考書に戻って復習する。さらに、その1週間後にもう一度解き直すことで、知識や解法が定着しているかを確認しておきたい。
出題分野(過去10年間)
・物質量、濃度に関する計算問題、化学反応と量的関係、酸化還元反応を問う問題は特に出題頻度が高く、ほぼ毎年出題されている。
・化学と人間生活に関する問題は、2022年度以来4年ぶりの出題となっている。
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4.化学 試験時間60分 満点100点
問題構成(過去2年間)
・例年通り大問は5題出題されているが、解答数は2025年度と比べて1つ減少している。
・2025年度と比べて全体的に計算量が少なく、応用的な内容も少なめであるため、難易度は例年よりも低い。
・教科書に即した内容の問題が多く、取り組みやすくなっている。
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2026年度 大問別分析
【1】化学結合、コロイド、溶解度 《解答数:6 配点:20点 難易度:標準》
化学結合やコロイド、溶解度など、物質の構成や物質の状態についての問題が出題されている。固体や液体の基本的な知識をおさえておきたい。また、問5のアルコールロケットに関する問題では、与えられている情報と求めるべき情報を混同しないように気を付ける必要がある。
【2】 エネルギー、電気分解、反応速度《解答数:6 配点:20点 難易度:やや易》
化学反応と熱、電気分解、反応速度、塩、緩衝液などについての問題が出題されている。反応速度や電解質溶液など、基本的な知識から計算まで幅広く問われている。
【3】酸化数、遷移元素、溶解度積、金属イオン 《解答数:6 配点:20点 難易度:標準》
酸化数、リン、原子量、遷移元素、溶解平衡、金属イオンなど、無機化学が多く出題されている。正誤問題や酸化数の問題は、基本的な知識をおさえていれば容易に正答することができるだろう。無機化学の範囲で最低限おさえておくべき問題は、暗記を繰り返すことで対策しておきたい。
【4】芳香族化合物、糖類、アミノ酸 《解答数:9 配点:20点 難易度:やや難》
有機化合物、高分子化合物に関する問題が出題されている。前半では有機化学の性質や構造について問われているため、演習を重ねて多様な問題に対応できるよう対策しておきたい。糖類およびアミノ酸に関する問題では、水溶液の性質を問う問題などが出題されており、糖類・アミノ酸・ペプチドの性質について細かく理解しておく必要がある。
【5】金属元素、脂肪族化合物、芳香族化合物、平衡定数 《解答数:6 配点:20点 難易度:標準》
身の回りの化学物質に関連して、無機物質、高分子化合物、有機化合物についての問題が出題されている。基本的な知識が問われる問題から構造式を求める問題まで幅広く含まれるため、各分野の知識を整理したうえで、反応や性質を手がかりに構造式を導き出す演習を重ねていく必要がある。
●大問別時間配分・解答順序
【1】10分→【2】11分→【3】10分→【4】12分→【5】12分→【見直し】5分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
遅くとも高3の夏までには、全範囲の基礎的な知識を一通り習得し、基本~標準レベルの典型問題を自力で解ける状態にしておきたい。その際に、教科書や『チャート式新化学』(数研出版)、『化学重要問題集』(数研出版)などを用いて学習するのが望ましい。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
共通テストへの移行後は、思考力を問う問題が増えている。こうした問題は、基礎知識を前提に資料を読み取り考察を進める形式であるため、基礎の理解が不十分だと解き始めること自体が難しく、得点にもつながりにくい。したがって、共通テストの過去問題を解きながら弱点を洗い出し、該当単元を重点的に復習する、という作業を丁寧に繰り返したい。
さらに、時間をかけてもよいので、標準レベル〜やや上の大学の過去問から弱点単元に当たる大問を選び、解答を見ずに最後まで自力で解き切る意識で取り組むことも共通テスト対策につながる。この演習を通して、問題文の読解力も高めていきたい。
出題分野(過去10年間)
・「化学反応と熱」、「脂肪族炭化水素」、「アミノ酸とタンパク質」は必ず出題されている。
・「気体の法則」、「糖類」、「合成繊維と合成樹脂」なども出題率が非常に高い。
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いかがでしたでしょうか。
2026年度入試の共通テストでは、2026年度で2年目を迎えた情報Ⅰの平均点は56.59点と、前年より12点以上下降しました。また2年連続で難化した物理が過去最低の平均点を記録する一方で、化学が易化するなど、科目間の変動が見られました。こうした難化の背景には、単なる難易度だけでなく、出題傾向の変化に戸惑って手が止まり、時間不足に陥るといったメンタル面の影響も無視できません。例えば数学Ⅰの大問1では、従来のような「数と式」分野ではなく、文章量の多い「集合」の問題が出題されるなど、出題パターンに変化がありました。ただし、今年度の問題も基本的な知識を問う内容であり、落ち着いて取り組めば十分対応できるはずです。
対策としては、標準的な知識の習得は大前提ですが、特定の解法パターンへの依存は禁物です。パターンが変わる可能性を常に意識し、イレギュラーな出題形式にも動じない「本質的な理解」と「知識を使いこなす力」を日頃の学習から養っておくことが、共通テスト攻略の鍵となります。
本科目だけでなく他科目も参考にして、多くの合格を勝ち取りましょう。
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英語 数学 国語 理科②(生物・地学) 地理・歴史 公民 情報Ⅰ
<文/開成教育グループ 個別指導統括本部 教育技術研究所>