2025/05/26
2025年度大学入学共通テスト科目別分析~過去問研究から傾向・対策を知る~【理科①編】
大学入学共通テスト 科目別分析は、大学入学共通テストの対策について、「何から始めて、どう進めるのか」を正しく理解してもらうことを主目的としています。今後の共通テスト対策をより効果的・効率的なものにするために、2024年度と2025年度の問題構成の比較や、2025年度の大問別問題分析、そして高校2年生からの入試対策を掲載しています。
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1.物理基礎 試験時間 60分(他の基礎科目1科目と合わせての試験時間) 満点50点
●大問数は例年通り3題だが、設問数が1問減少し、解答数が2つ減少し、やや時間の余裕ができたと考えられる。
●2024年度に出題されていた会話形式の問題がなくなり、全体的に計算問題や選択肢を組み合わせる問題が減少したが、実験の内容を表やグラフから読み取らせて、考察する問題が数多くあり、その問題で苦戦した受験生が数多くいたと考えられる。
●全体としては、時間的にも内容的にも標準的な出題となっており、しっかりと対策をした受験生にとっては比較的解きやすかったと考えられる。
2025年度 大問別問題分析
【1】小問集合 《解答数:4 配点:16点 難易度:標準》
放射線、力学的エネルギー保存則、うなり、縦波に関する問題があり、あらゆる分野から出題されていることがわかる。また、どの問題も標準的な問題ではあるが、1つの知識を用いて解けるような問題ではなく、あらゆる知識を総合的に判断して解けるような問題となっているため、数多くの演習問題をこなす必要がある。
【2】力学(定滑車と重力加速度) 《解答数:5 配点:16点 難易度:やや難》
定滑車と重力加速度の測定に関する問題が出題されている。問題文中に加速度を表す式が与えられているが、この加速度の意味を理解するのが難しく、この大問で苦戦した受験生が数多くいたと予想できる。また、この大問の最終問題では、全問の選択したグラフから重力加速度を求める必要があり、難易度の高い問題である。
【3】熱とエネルギー(比熱の測定) 《解答数:6 配点:18点 難易度:やや易》
比熱の測定に関する問題が出題されている。比熱に関する基本的な知識を問う問題や熱に関する基本的な計算問題が並んでおり、比較的得点しやすかった大問であると予想できる。しかしながら、実験の装置を問う問題や考察を行う問題も含まれており、教科書にでてくる実験についてはしっかりと把握しておく必要がある。
●大問別時間配分・解答順序
【1】 6分→【2】 10分→【3】 9分→【見直し】 5分
入試対策(学習のポイント・入試直前までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
定期テストの出題範囲の公式は理解して、使いどころを自分で判断できるようにしておくとよい。『チャート式新物理基礎』や『マーク式基礎 物理基礎』などの例題や演習問題で公式の使い方を練習しておきたい。また、教科書は意味や公式を理解するレベルまで読んでおくとより良い。さらに、共通テストでは実験に関する問題が非常に頻出なので、教科書に掲載されているような実験については、実験器具や実験内容を写真や表を用いながら理解する必要がある。
模試で解いた問題は、解答が合っていても間違っていても必ず解説を読み、もう一度解き直しをしておきたい。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
模試の解き直しや汎用問題集を一通り終え、教科書も全て目を通し理解している状態に年内にはしておきたい。また、12月以降は共通テストの過去問や市販の予想問題集などを用いて学習する必要がある。
共通テスト特有の出題範囲や出題形式があるので、上記の教材を用いて演習量を確保して問題になれる必要がある。実践演習を重ねていく中で、苦手な分野がある場合、教科書や汎用問題集に戻って、分野別の対策を行う必要がある。
出題分野(過去10年間)
力学分野では、力のつりあいや運動方程式、力学的エネルギーを扱う問題が頻出。また、電気分野では、電流やジュール熱・電力に関する問題が非常に頻出である。ただし、毎年第1問の小問集合であらゆる分野から出題されているため、全単元を満遍なく学習する必要がある。
2.物理 試験時間60分 満点100点
問題構成(過去2年間)
●2024年度と比較して、設問数は3問増加し、解答数は2つ増加している。難易度も全体的にやや難化している。
●共通テスト特有の会話文の問題や初見の問題が減少して、問題文から立式をして計算問題を解く問題が増加した。大問3のBや大問4の問題は、受験生が苦手にする単元である正弦波の式やコイルの過渡現象が出題されており、苦戦した受験生が数多くいたと推測される。
2025年度 大問別問題分析
【1】小問集合 《解答数:5 配点:25点 難易度:標準》
状態方程式、万有引力、モーメント、一様磁場・電場中の電子の動き、ブラッグ反射が出題されている。どの問題も教科書例題レベルであり、確実に得点しておきたい。
【2】単振り子の周期 《解答数:5 配点:25点 難易度:標準》
単振り子の周期を正確に測定することをテーマにした問題である。運動方程式や近似計算を用いる必要があった。実験誤差を見積もる問題が目新しい問題であるが、条件をしっかりと理解すれば解き切れる問題である。
【3】[A]気体の状態変化 [B]波の干渉 《解答数:6 配点:25点 難易度:やや難》
この大問は、AとBの2つに分かれている。Aでは、理想気体の状態変化を問う問題であり、Bでは、正弦波の式を問う問題である。Aは、基本的な問題が多かったが、Bは、やや難しい問題が並んでおり、数多くの受験生が苦戦したと考えられる。
【4】導体棒の電磁誘導 《解答数:8 配点:25点 難易度:やや難》
導体棒による電磁誘導に関する問題である。誘導電流の向きや磁場から受ける力に関するグラフを選択する問題が出題されており、立式して計算を進める必要があった。大問の後半部分は、コイルの自己誘導を考える必要があり、難易度が高かった。
●大問別時間配分・解答順序
【1】 13分→【2】 13分→【3】 14分→【4】 15分→【見直し】 5分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
学校の試験、模試で使用する公式が使えているか確認。解説で使用されているとき、なぜその公式が使われているかを理解する。汎用問題集の基本問題をテスト前に解き、その分野が理解できているかを確認する。できていない箇所は教科書をもう一度読み、理解するように努める。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
夏までには汎用問題集、基礎問題集が終わっていることが理想。終わっていない場合はなるべく急いで1~2か月で仕上げる。
仕上げた後は、すぐにセンター過去問、各予備校が出している共通テスト問題集、模試の解きなおしを活用し、時間配分など実戦的な演習をつむ。他には、汎用問題集より少しレベルを上げた問題集である重要問題集などを使い、題材について深堀する問題であった場合、どのような流れをたどるのかを確認するとよい。
出題分野(過去10年間)
2025年度では、力学分野で頻出の「仕事と力学的エネルギー」と「力積と運動量・衝突」が出題されず、逆に出題頻度の低い「運動方程式」や「万有引力による運動」が出題された。
3.化学基礎 試験時間 60分(他の基礎科目1科目と合わせての試験時間) 満点50点
問題構成(過去2年間)
●2024年度と比較すると大問数は2題と同様だが、設問数は1問減少し、解答数は19と1問増加している。難易度に関しても、2024年度と大きく変化することはなく、時間的余裕はあったと推測される。
●大問2は空気に含まれる気体成分の発見と質量保存の法則に関する問題であったが、普段市販の問題集ではあまり扱われないような水銀や亜硝酸ナトリウムなどがでてきており、苦戦した受験生が多かったと推測される。
2025年度 大問別問題分析
【1】小問集合 《解答数:10 配点:30点 難易度:やや易》
2025年度も小問集合が出題されている。小問集合では、やや易~標準レベルの問題が、様々な分野から出題されており確実に点数を稼ぎたい大問である。いかに、短時間で高い正答率を保てるかが、高得点をとるためのカギとなる。しかしながら、問6や問9のようにやや難易度が高い問題も含まれており、注意が必要である。
【2】空気に含まれる気体成分の発見と質量保存の法則 《解答数:9 配点:20点 難易度:やや難》
空気に含まれる気体成分の発見と質量保存の法則に関する問題が出題されている。単に知識を問う問題もあるが、実験結果から考察をして計算を進めていかないといけない問題もあり、共通テストに対してどれほど対策できたかで、点数の差が生まれやすい問題である。
●大問別時間配分・解答順序
【1】 13分→【2】 12分→【見直し】 5分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
高校3年生になるまでは、学校の授業、定期テスト、模試をしっかりこなし、テストや模試は必ず解きなおしを行うこと。その際に間違えた問題に関しては、必ず教科書に戻るようにして、教科書の図やイラストを見ながら復習するようにしたい。また、解法の原理がわからないものや公式がわからない場合は、先生に聞くなどして理解しておきたい。
高校3年生からは、これら高校2年生でこなしてきたことに加え、教科書傍用問題集の練習問題や『チャート式新化学基礎』、『マーク式基礎化学基礎』などを用いて、解法の確認、各分野の知識を定着させるとよい。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
秋以降は、夏に補強しきれなかった分野の勉強と並行して、各予備校が出版している大学入学共通テスト問題集とセンター試験の過去問を、時間を計って演習し、時間配分や、素早く丁寧に解く力を身に着けるとよい。これらの問題集の解けなかった問題や苦手な分野は、自分が今まで使っていた教科書、傍用問題集、参考書を使って復習すること。まだ解けなかった問題は参考書などで復習した後、1週間後くらいにもう一度解きなおし、知識が定着しているか確認しておきたい。
出題分野(過去10年間)
物質の変化の原子量、物質量や溶液の濃度、酸化還元反応は出題率が非常に高く、入試において最頻出分野となっているため、分野別に対策をとる必要がある。
4.化学 試験時間60分 満点100点
問題構成(過去2年間)
●2024年度と比較して、大問構成は変化していないが、設問数が1問、解答数が3問増加した。難易度も全体的に難化している。
●以前までのセンター試験や共通テストであれば、大問ごとに理論、無機、有機、高分子と比較的きれいに分かれていたが、2025年度の問題は、大問を問わずあらゆる分野の融合問題が数多く出題されており、受験生は苦戦したと推測される。また、問題文中に数多く与えられているグラフを読み取る必要があり、思考力を試す問題の出題が目立った。
2025年度 大問別分析
【1】イオン結晶、理想気体・実在気体、ヘンリーの法則、コロイド、蒸気圧、浸透圧 《解答数:6 配点:20点 難易度:難》
ヘンリーの法則、蒸気圧、浸透圧の問題など数多くの受験生が苦手にする理論化学の計算問題が数多く出題されており、難易度の高い大問である。学校準拠の参考書や市販の参考書を用いて、理論化学の計算問題の演習を重ねる必要がある。
【2】化学発光、ニッケル・カドミウム電池、圧平衡定数、反応時間 《解答数:6 配点:20点 難易度:標準》
この大問は、他の大問に比べて比較的解きやすい問題が出題されている。ニッケル・カドミウム電池や化学発光の問題など問題集ではあまり扱われないような問題が出題されているが、丁寧に問題文を読むと解き進めることができたと考えられる。また、平衡に関する問題は共通テストにおいて最頻出分野の1つであるためしっかりと対策をしておきたい。
【3】遷移元素、ケイ酸ナトリウム・水ガラス、硝酸、ヨウ素、化学反応と量的関係 《解答数:8 配点:20点 難易度:標準》
この大問の前半部分は、教科書レベルの知識をしっかりと押さえておけば解き進めることができるものばかりで、比較的解きやすかったと予想できる。また、後半部分のヨウ素に関する問題は、計算問題も含まれているため難しかったと予想できる。
【4】アクリル酸メチルとアニリンの生成物、糖、アセチレン、ビニロン、アセタール化 《解答数:8 配点:20点 難易度:やや難》
酸素を含む有機化合物、アクリル酸メチルとアニリン、天然高分子、アセチレンなど有機分野の問題が幅広く出題されている。特に、アセチレンの利用の問題では、アセタール化の割合に関する計算問題があり、しっかりと対策できているかが鍵となる。
【5】原油、バナジウム、ナフタレン、反応熱、化学反応と量的関係 《解答数:6 配点:20点 難易度:標準》
原油とバナジウムに関する問題である。この大問は、あらゆる分野から出題されており、総合問題となっている。問題文は非常に長いものが多いが、比較的解きやすい問題が多く、落ち着いて解けばしっかりと得点できる大問である。共通テスト特有の目新しい問題も、共通テスト対策問題集などを使えば十分に対策することができる。
●大問別時間配分・解答順序
【1】 12分→【2】 11分→【3】 10分→【4】 11分→【5】 11分→【見直し】 5分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
遅くとも高3の夏までには全範囲の基礎的な知識の習得、問題演習をこなし、共通テスト・センター試験において標準レベルとされている問題について解答できるようになりたい。その際に、教科書やチャート式新化学、化学重要問題集などを用いて学習するのが望ましい。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
センター試験・共通テストの過去問題を解きながら、弱点を見つけ出し、その単元を重点的に復習していきたい。この季節になると焦る気持ちが強くなると思うが、一つずつ丁寧にこの作業を繰り返して実力をつけておくとよい。共通テストに移行後、思考力が要求される問題が増加しているため、基礎的な内容を解答する力がなければ得点に至るのは難しい。標準レベルか少し上の大学の該当する過去問題を、時間をかけてもよいので、自分の力だけで解くことを意識して取り組む事も共通テスト対策になる。また、それを通じて問題文の読解力も向上させたい。
出題分野(過去10年間)
化学反応と熱、脂肪族炭化水素は過去5年間で必ず出題されている。特に単元「天然有機化合物・合成高分子化合物」及び「物質の変化と均衡」の出題率が高いため、重点的に対策しておきたい。
いかがでしたでしょうか。大学入学共通テストは国公立大学受験生にとっての一次試験というだけではありません。私立大学受験生にとっても非常に有用で、共通テスト利用・併用入試制度を利用して受験パターンを組むことで、合格の可能性が大きくなります。本科目だけでなく他科目も参考にして、多くの合格を勝ち取りましょう。
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