2025/06/23
2025年度大学入学共通テスト科目別分析~過去問研究から傾向・対策を知る~【公民編】
大学入学共通テスト 科目別分析は、大学入学共通テストの対策について、「何から始めて、どう進めるのか」を正しく理解してもらうことを主目的としています。今後の共通テスト対策をより効果的・効率的なものにするために、2024年度と2025年度の問題構成の比較や、2025年度の大問別問題分析、そして高校2年生からの入試対策を掲載しています。
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数学 英語 理科①(物理・化学) 情報 地理・歴史 近日公開予定→理科②(生物・地学)
- 公共・倫理
- 公共・政治経済
- 地理総合・歴史総合・公共
1.公共・倫理 試験時間60分 満点100点
問題構成(過去2年間)
- 2025年度より、科目名が「公共・倫理」に変更になったことで、「公共」の問題も併せて出題され、大問数も4問から6問へ増加。大問1と大問2が「公共」の問題で、大問3~大問6が「倫理」からの出題。
- 哲学・思想の知識が問われる問題だけでなく、資料や会話文などの内容を正確に読み取って解答する問題も多いため、文章を正確にかつ素早く読み取る力や、論理的思考力も求められる。
2025年度 大問別問題分析
【1】[公共]男女共同参画社会についての探究活動《解答数:4 配点:12点 難易度:やや易》
問1や問4の一部では知識が問われているが、それ以外は資料や会話文の内容を正確に読み取ることができれば解くことができる問題である。資料や会話文、選択肢の文章量を考えると、かなりの量を読まなければならないため、正確かつ速い読解力が必要になる。
【2】[公共]公共空間の持続的な形成《解答数:4 配点:13点 難易度:標準》
問1はハーバーマスについての思想的知識が必要とされる。問2は資料の数値を正確に読み取ることが求められる。問3では「帰納」とは何なのかを理解していなければ解くことができない難問。問4では、それぞれの記述とその具体例を結びつける問題で、丁寧に読むことができれば解きやすい問題。
【3】[倫理]源流思想・西洋思想と芸術《解答数:9 配点:28点 難易度:やや難》
源流思想や西洋思想の幅広い知識が問われているが、特に問2や問5は細かい知識が問われており難問。問7や問8は、資料読み取り問題で、資料を丁寧に読むことで解くことができる。問9では、この大問で展開されていた会話文の内容についても問われているので、会話文の内容も読み取ることが必要である。
【4】[倫理]日本思想と外来思想の関わり《解答数:5 配点:15点 難易度:標準》
日本思想からの出題。この大問でも、問4で資料読み取り問題が出題されている。古代や鎌倉時代、江戸時代といった、それぞれの時代からまんべんなく出題されている。日本思想で登場する思想家とその思想について、知識として正確に習得しておくことが必要である。
【5】[倫理]記憶と認知バイアス《解答数:6 配点:16点 難易度:標準》
認知の心理学分野からの出題。「バイアス」に関する問題が多く出題されている。問1は会話文や実験内容を読み取って解く問題で、問4も資料を読み取る問題。問5では、1つの設問で解答し、自分が選んだ解答を基に次の設問で答えを探す、連動式の問題が出題されている。
【6】[倫理]戦争と平和《解答数:5 配点:16点 難易度:やや易》
トルストイやフーコー、コスモポリタニズムなどの知識が問われていることに加えて、問2、問4、問5では会話文や資料の内容を読み取ることが求められる。特に、問4は、3つの特徴がすべて満たされている具体例を見つける問題で、丁寧な読解が求められるが、内容を読み取ることができれば、そこまで難問ではないといえる。
- 大問別時間配分・解答順序
【1】7分→【2】7分→【3】13分→【4】9分→【5】10分→【6】9分→【見直し】5分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
学校の授業内容を理解し、教科書をメインにしながら参考書もセットで使い知識の定着を図る。教科書と参考書でインプットしたら、旧課程の倫理も含めて、共通テストの過去問を何年分か行い、過去5年分を中心に解いてみる。また抽象的に物事を捉えるのではなく、具体的に内容を理解する必要がある。資料集を有効的に活用することで、資料の読み取りに慣れることも必要。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
共通テスト対策用の模試を受験し弱点や特に注意すべき箇所を知る。これまで解いた問題の総復習をして、教科書や今まで利用していた問題集で間違えた問題や覚えにくかった部分を攻略する方が知識を定着させやすい。幅広い分野の問題を解くことが必要。最後まで知識の補充と点検を徹底する。また本番と同様の条件で予行演習を行い、時間配分を意識して予想問題に挑み、感覚をつかんでおくことも大切。並行して学習時は常に時事的動向に目配りし、演習などで時事的事項に出会う度に押さえる。
出題分野(過去10年間 ※公共は2025年度のみ)
「公共・倫理」に科目名が変更された2025年度も含めて、「源流思想」、「西洋近現代思想」、「日本思想」は毎年多く出題されている。これらの分野の哲学、思想の知識は確実に押さえることが求められる。新しく加わった「公共」の分野からは、経済分野の出題はなかったものの、法や政治など、幅広く出題されている。
2.公共・政治経済 試験時間60分 満点100点
問題構成(過去2年間)
- 2025年度より、科目名が「公共,政治・経済」に変更になったことで、「公共」の問題も併せて出題され、大問数も4問から6問へ増加。大問1と大問2が「公共」の問題で、大問3~大問6が「政治・経済」からの出題。
- 知識が問われる問題だけでなく、資料や会話文などを正確に読み取らないと解答できない問題も多い。また、知識を応用させて自分で考えたうえで解答する問題もあり、文章の読解力や論理的思考力が求められている。
2025年度 大問別問題分析
【1】[公共]男女共同参画社会についての探究活動《解答数:4 配点:12点 難易度:やや易》
問1や問4の一部では知識が問われているが、それ以外は資料や会話文の内容を正確に読み取ることができれば解くことができる問題である。資料や会話文、選択肢の文章量を考えると、かなりの量を読まなければならないため、正確かつ速い読解力が必要になる。
【2】[公共]公共空間の持続的な形成 《解答数:4 配点:13点 難易度:標準》
問1はハーバーマスについての思想的知識が必要とされる。問2は資料の数値を正確に読み取ることが求められる。問3では「帰納」とは何なのかが分かっていないと解くことができない難問。問4では、それぞれの記述とその具体例を結びつける問題で、丁寧に読むことができれば解きやすい問題。
【3】[政治・経済]地域社会の課題《解答数:6 配点:18点 難易度:標準》
好況・不況と物価上昇、選挙における「合区」、フードマイレージ、表現の自由、ふるさと納税、防災や減災と、政治分野・経済分野を問わず幅広く出題されている。どの設問でも、資料や会話文、メモなどの文章を読みながら解答する必要があり、知識を使うだけでなく、文章を読み取ることも求められている。
【4】[政治・経済]国際的な政治経済のあり方《解答数:6 配点:19点 難易度:やや難》
マネタリーベースやマネーストック、世界金融危機などに関する経済分野の知識に加えて、国際刑事裁判所や2015年のシリア内戦など、時事的な国際政治の知識も問われている。この大問でも、会話文やグラフ、記事など、文章を読みとる設問が多く、文章の量も多いため、時間配分にも気をつけたい。
【5】[政治・経済]日本の労働・雇用問題とその国際比較《解答数:6 配点:19点 難易度:標準》
問1~問3では知識が問われているが、問4~問6は思考力が問われる問題。問4は資料や会話文はないものの、知識で解くというより設問と選択肢をしっかり読んで考える問題形式。問5と問6では、資料や会話文を読み、かつ自分で思考したうえで答えることが求められる。
【6】[政治・経済]経済活性化のための企業の新規参入の促進《解答数:6 配点:19点 難易度:標準》
ほとんどの設問で、文章内容を読み取る力とそれをふまえた思考力が求められている。さらに問2では、普段あまり見られない需要曲線および供給曲線を用いた売上額の計算が求められている。文章量も多く、思考することがどの設問でも必要だが、しっかり時間をかけて考えればそこまで難しい問題ではない。
- 大問別時間配分・解答順序
【1】7分→【2】7分→【3】9分→【4】10分→【5】10分→【6】12分→【見直し】5分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
教科書を読破し一問一答で知識定着を図る。読解力や思考力を身につけるための訓練が必要になる。政治分野は各制度の趣旨を理解し、経済分野は経済メカニズムを理解したうえで知識を増やすこと。時間配分を意識しておき、解答に時間のかかる問題への対処法を決めておく。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
模擬試験や共通テストの過去問を効率的に有効活用し、様々な出題パターンに触れておくことも必要である。知識の習得を最後まで諦めずに行うことも大切。図表資料や憲法条文・時事的知識や年表・人名・国際機関名の確認。計算・論述問題の対策。総合問題などで演習を重ね、問題解法の引き出しを増やしておき、ニュースなどで最近のことに目を向けておく。
出題分野(過去10年間 ※公共は2025年度のみ)
「公共,政治・経済」に科目名が変更された2025年度も含めて、政治分野では「自由権」、「裁判所」、「地方自治」、経済分野では「現代の市場と企業」、「金融」、「環境問題」などの分野が頻出。
新しく加わった「公共」の分野からは、経済分野の出題はなかったものの、法や政治など、幅広く出題されている。
3.地理総合・歴史総合・公共 試験時間60分 満点100点
問題構成
- 地理総合
- 大問数は4問、各大問の設問数はそれぞれ4問であり、地理総合の試作問題と変化なし。難易度は標準レベル。
- 地理総合の分野について、まんべんなく出題されている。また、統計地図、統計表、グラフなどの資料が用いられた設問が多く、設問の意図を把握する力や、論理的に考察する力が求められる。
- 歴史総合
- 大問数は2問、各大問の設問数はそれぞれ8問。難易度は標準レベル。
- 知識をふまえて、自分で考えなければならない問題が多く、ただ知識を覚えていくのではなく、資料を読み取る力やそこから自分で考える力も求められる。
- 公共
- 大問数は4問、各大問の設問数はそれぞれ4問。難易度は標準レベルかやや易。
- 政治分野、経済分野ともに基本的な内容が問われている。資料を読み取る力も大切だが、その前提となる基本的な知識の習得が求められる。

2025年度大問別問題分析
[地理総合]
【1】食料の生産や消費 《解答数:4 配点:13点 難易度:やや易》
※「地理総合,地理探究」の【1】を参照。
【2】東三河地域の地域調査 《解答数:4 配点:12点 難易度:やや易》
※「地理総合,地理探究」の【2】を参照。
【3】日本の自然環境と防災 《解答数:4 配点:13点 難易度:標準》
日本の自然環境と防災に関する基礎的な知識をもとに資料を読み解く問題が中心である。問2では日本各地の気候特性に関する知識が求められる。問3は地滑りとその対策に関する問題。問4は地形図の読み取り問題であり、標準的な内容である。
【4】世界の生活文化 《解答数:4 配点:12点 難易度:標準》
世界の生活文化について様々な視点から出題されている。問1は気候と住居に関する問題。問2では日本とベトナム、ブラジルの交流に関する問題。問3はいくつかの国における文化に関する知識が求められる。問4はいくつかの国における携帯電話の普及率に関する標準的な問題であり、確実に正解したい。
[歴史総合]
【1】歴史上における「境界」 《解答数:8 配点:25点 難易度:標準》
※「歴史総合,日本史探究」の【1】を参照。
【2】装いから見る日本と世界の歴史 《解答数:8 配点:25点 難易度:標準》
※「歴史総合,世界史探究」の【1】を参照。
[公共]
【1】男女共同参画社会についての探究活動 《解答数:4 配点:12点 難易度:やや易》
※「公共,倫理」または「公共,政治・経済」の【1】を参照。
【2】ビジネスと経済 《解答数:4 配点:12点 難易度:やや易》
問1では社会資本に関する文章の読み取りが求められている。社会資本の知識よりも、文章全体を正確に読み取る力が求められる問題で、文章を丁寧に読めば難しくない。問2~問4は、株式や為替レート、金融政策、公開市場操作など、経済分野の基本的な知識が求められている。問3では為替レートの計算問題が出題されており、正確な計算を心がけることが重要である。
【3】裁判所の役割 《解答数:4 配点:13点 難易度:標準》
1票の格差、違憲法令審査、裁判所に関する知識が問われている。問1では選挙の知識と計算、問2~問3では裁判所に関する知識が必要である。問4では会話文の内容を読み取って解答することが求められ、知識のみでは解くことができない問題である。
【4】公共空間の持続的な形成 《解答数:4 配点:13点 難易度:標準》
※「公共,倫理」または「公共,政治・経済」の【2】を参照。
- 大問別時間配分・解答順序(3科目のうち、2科目を選択)
[地理総合] 【1】6分→【2】6分→【3】6分→【4】6分→【見直し】6分
[歴史総合] 【1】12分→【2】12分→【見直し】6分
[公 共] 【1】6分→【2】6分→【3】6分→【4】6分→【見直し】6分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
地理総合、歴史総合、公共のいずれも、教科書の各分野について知識を習得しておきたい。さらに、教科書や資料集、参考書、共通テスト対策の参考書などを利用し、全範囲の学習を高3夏までに完了しておくと良い。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
地理総合、歴史総合、公共のいずれも、実戦的な対策として、資料や図表の数の増加に伴い読解に時間を要する問題が多いため、資料の読解力を鍛えていく必要がある。また、予想問題集を用いて出題形式に慣れておきたい。
出題分野(2025年)
- 地理総合
地理総合のほぼ全分野からまんべんなく出題されている。いずれの分野も、知識としての暗記のみでは高得点を狙えない。資料の読解力を問う問題が多く出題されている。
- 歴史総合
それぞれの時代からまんべんなく出題されている。知識を押さえるだけでなく、資料を読み取り、自分で思考することも求められる。
- 公共
法、政治、経済ともに、まんべんなく出題されている。それぞれの範囲で基本的な内容は確実に押さえておきたい。
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