2025/06/23

2025年度大学入学共通テスト科目別分析~過去問研究から傾向・対策を知る~【地理歴史編】

大学入学共通テスト 科目別分析は、大学入学共通テストの対策について、「何から始めて、どう進めるのか」を正しく理解してもらうことを主目的としています。今後の共通テスト対策をより効果的・効率的なものにするために、2024年度と2025年度の問題構成の比較や、2025年度の大問別問題分析、そして高校2年生からの入試対策を掲載しています。

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数学 英語 理科①(物理・化学) 情報 公民 近日公開予定→理科②(生物・地学)

  1. 地理総合・地理探究
  2. 歴史総合・日本史探究
  3. 歴史総合・世界史探究

1.地理総合・地理探究 試験時間60分 満点100

問題構成(過去2年間)

  • 大問数は6問であり、2024年度と比べて1問増加した。設問数は30個であり、2024年度から変更なし。
  • 統計地図、統計表、グラフなどの資料が用いられた設問が多く、設問の意図を把握する力や、論理的に考察する力が求められており、難易度は2024年度より難化している。

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2025年度 大問別問題分析

1[地理総合]食料の生産や消費《解答数:4 配点:13点 難易度:やや易》

さまざまな単元にまたがる総合的な大問であり、基礎的な知識をもとに資料を読み解く問題が中心。問3のコーヒーと茶の消費量に関する問題では、各国の食文化に関する知識が求められる。正確な知識と資料を素早く読み解く力を身につけておきたい。

2[地理総合]東三河地域の地域調査《解答数:4 配点:12点 難易度:やや易》

豊橋市の地形図の読み取り、製造業の立地特性、農産物の収穫量、移動と地域性に関する問題。問題の難易度は高くないが、組み合わせ式の設問が多く、時間のかかる大問である。時間配分を誤らないよう共通テストの傾向に慣れておくことが重要。

3[地理探究]自然環境と自然災害《解答数:6 配点:20点 難易度:やや難》

気候や地形に関する基礎的な知識をもとに、与えられた資料から考察する問題が中心。正規化植生指数の分布や陰影起伏図など、なじみのない資料が登場しており、初見の資料から論理的に考察する力を身につけておきたい。

4[地理探究]エネルギーと産業《解答数:6 配点:21点 難易度:標準》

エネルギーと産業に関する統計問題が多く出題されており、日本の動向がキーとなる。問5はファブレス企業に関する問題であり、ファブレス企業に関する知識と、国際分業に関する知識を用いた考察が求められる。

5[地理探究]産業構造の変化に伴う都市の変容《解答数:5 配点:17点 難易度:標準》

産業構造と都市の関係を問う思考問題。日本の産業や社会の変化に関する設問は、以前から多く出題されており、対策必須である。都市の変容を多角的にとらえ、考察する力が求められる。基礎的な知識と与えられた資料から読み取った特徴を結び付けて考察する力を身につけておきたい。

6[地理探究]環インド洋地誌《解答数:5 配点:17点 難易度:やや難》

インド洋周辺での、自然環境、各国の宗教や経済などに関する問題。例年よりも対象地域が広がり、問題の難易度も難化。見慣れない国が扱われたが、与えられた資料を読み取ることで解答できるため、資料を読み解く力を身につけておきたい。

  • 大問別時間配分・解答順序

17分→【27分→【313分→【412分→【5】8分→【6】9分→【見直し】5

入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)

■学習プラン(高2~高3夏)

教科書範囲の自然・資源・産業・生活文化・地誌など各分野について知識を習得しておきたい。さらに、学校の教科書・地図帳や市販の共通テスト対策の参考書を利用して、全範囲の学習を高3夏までに完了しておくと良い。

■学習プラン(高3夏以降~入試直前)

実戦的な対策として、資料や図表の数の増加に伴い読解に時間を要する問題が多いため、資料の読解力を鍛えていく必要がある。地理的事象の因果関係や背景を図表にしてまとめるとよい。また、学習時には、地図帳を常に手元に置き、位置や地域的な関係を確認するよう心がけておきたい。

『マーク式基礎問題集(河合出版)』を各分野こなし、分野別に分からない語句や知識を定着させる。そして『共通テスト総合問題集 地理総合、地理探究(河合出版)』で全分野演習し、苦手分野の洗い出しと、出題形式に慣れておくと良いだろう。

出題分野(過去10年間 ※(地理総合は2025年度のみ)

地理総合、地理探究のほぼ全分野からまんべんなく出題されている。地形、気候、工業、都市と村落の関係は過去10年間すべてで出題されている。また、人口、農林水産業、自然環境なども頻出である。いずれの分野も、知識としての暗記のみでは高得点を狙えない。地誌学分野について、2025年度は環インド洋の地誌が出題された。また、2022年度以降は日本を対象とした地域調査(地誌)が1題出題される傾向が続いている。学習指導要領の改訂に伴い、2025年度は地理総合の分野としての出題となっている。

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2.歴史総合・日本史探究 試験時間60分 満点100

問題構成(過去2年間)

  • 「日本史B」から「歴史総合、日本史探究」へと名称が変更され、第1問に「歴史総合」の問題が導入された。試作問題とは異なり、単なる日本史の知識だけでは解くことが難しい問題が多く、「歴史総合」に焦点を当てた学習が必要となる。
  • 大問は全6題で、すべて高校生の探究活動を題材にした大問であった。設問数の増加は1問のみであったが、時代判断を要する問題や資料・図表の読み取り問題など、与えられた情報を適切に把握する判断力や思考力が問われる問題が多く、時間不足に苦しんだ受験生も多かったと推測される。時間配分には十分注意して取り組んでいきたい。

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2025年度 大問別問題分析

1】【歴史総合】歴史上における「境界」《解答数:8 配点:25点 難易度:標準》

それぞれの出来事の内容だけでなく、それが起こった年代、年号を正確に把握できているのかも求められている。問5や問6のような資料やグラフを読み取る問題、問3のような思考力も必要な問題など、知識があるだけでは解くことができない設問も多い。

2】【日本史探究】菓子に着目した古代~近代史《解答数:5 配点:15点 難易度:やや易》

様々な時代から幅広く問題が出題され、各時代の特徴を把握しておくことが求められる。また、問4は傍線部自体を、問5は会話文全体をヒントにして解答する必要があった。

3】【日本史探究】古代の外交・文化の関わりと大宰府《解答数:5 配点:15点 難易度:標準》

古代の外交や文化を中心に問う大問であった。一見、新傾向的な問題が散見されるが、国・人物の時代との繋がりを正確に理解していれば解ける問題が多く、そこまで複雑なものではなかった。

4】【日本史探究】中世の武士《解答数:5 配点:15点 難易度:標準》

中世の時代に焦点をあてた大問であった。資料問題が多く出題され、問3の〔イ〕や問4などは消去法を用いると解きやすく、勉強してきた知識を上手く活用して解く力が求められる。

5】【日本史探究】近代の村から見る社会情勢と幕府の政策《解答数:5 配点:15点 難易度:やや難》

この大問でも資料や図表が出題されたが、多くは類似したものが教科書に載っているものであるため、教科書を熟読していれば焦らず取り組めたのではないだろうか。問3は例年頻出の年代整序問題であるが、この問題では「どの時代か」よりも「誰の政策か」を考えると解きやすくなる。問5では、持っている知識とメモ・グラフで読み取ったことを組み合わせて解くことが求められる。

6】【日本史探究】松本清張の年譜から見る近現代史《解答数:5 配点:15点 難易度:やや難》

近代・戦後の政治、経済、文化について問う大問であった。時代を正確に判断する力や資料の情報を正しく読み取る力を要する問題が多いため、ほかの大問と比べると解くのに時間を要するかもしれないが、極端に難しい問題は無いため落ち着いて取り組んでいってもらいたい。

  • 大問別時間配分・解答順序

18分→【28分→【38分→【48分→【5】8分→【6】10分→【見直し】10

入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)

■学習プラン(高2~高3夏)

学校の授業の進捗状況に関係なく、遅くとも高3の夏休みまでに高校の学習範囲の基本的な知識は一通り押さえておきたい。また、資料や図表の読み取りにも早い時期から慣れておく必要があるので、それらを用いた問題の演習も知識固めと同時に進めていく。なお、日本史と古文は相互に関連性が強い。文献資料を読み誤らない程度の古文読解力も身につけておきたい。

■学習プラン(高3夏以降~入試直前)

高3の夏休みから10月頃にかけては、問題演習を通して知識面で不安のある時代や分野をなくすことを優先する。思考力重視の共通テストも、そのほとんどは教科書レベルの知識を前提にした問題なので、知識固めはおろそかにしないこと。共通テスト形式の問題演習やセンター試験の過去問演習は、知識固めにめどがついた段階で10月頃から開始すればよい。日本史はセンター試験の問題形式が共通テストでもかなり継承されており、過去問演習も積極的に行っておくべき。特に資料や図表の情報を読み取る力は、この時期の演習で過去問に限らずできるだけ多くの問題に触れて磨いておきたい。

新たに追加された「歴史総合」の大問では、今後も単なる日本史の知識だけでは対処しづらい問題が出題される可能性があるため、「歴史総合」に合わせた対策をする必要がある。

出題分野(過去10年間 ※歴史総合は2025年度のみ)

時代判断を要する問題や図表、資料を読み取る問題が頻出。一問一答の知識だけではなく、思考力や判断力が問われている。

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3.歴史総合・世界史探究 試験時間60分 満点100

問題構成(過去2年間)

  • 大問数は5問で、2024年度世界史Bより1問増加。一方、設問数は32問で、2024年度世界史Bより1問減少。問題文の内容から、【1】が歴史総合、それ以外の大問が世界史探究の範囲より出題されている。
  • 資料を読み取ることで答えが導ける問題が多いのは、2024年度までの共通テスト世界史Bと同様の傾向。必要とする知識は標準的なものであるが、資料の内容と合わせて知識を適切に活用する思考力も必要。歴史総合で大問1問分が構成されていることもあり、年代としては近代(19世紀)以降に関する問題が多めではあるが、複数の時代や地域に関する組み合わせ型の問題も多く、選択肢の正誤判断も含めれば、必要な知識に時代や地域の偏りはほぼないと言ってよい。
  • 2024年度で出題された複数の正解パターンがある連動式の問題はなかったが、各小問で示されたメモやパネルなどから、大問全体の主題を答えるという新形式の問題が出されており、特に思考力を要求するタイプの多様な形式での出題が今後も予想され、そのようなタイプの設問への対応力が求められる

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2025年度 大問別問題分析

1[歴史総合]装いから見る日本と世界の歴史《解答数:8 配点:25点 難易度:標準》

[A] 外交の場での政治家・官僚・軍人の装い [B] 女性の装い 

「装い」にスポットを当てつつ、近現代の資料から読み取れる情報について出題されている。「歴史総合」の範囲からの出題であるため、小問の半分以上が日本の近現代史とからめた問題であるが、そのいずれもが他国の歴史と関連づけた地域横断型の問題になっている。総じて、必要な知識は標準的であるが、それらを適切に関連づけ、活用する力が求められている問題が多い。

2[世界史探究]世界史上の都市の歴史《解答数:7 配点:20点 難易度:標準》

[A] 14世紀半ばのカイロ [] ペテルブルクの歴史 [C] 1920世紀のバンコク

世界史の舞台に登場する3つの都市について、それぞれに関連する事柄から出題されている。3つの都市のうち、2つが空所になっており、資料やメモの内容からそれらがどこかを判断したうえで各問に答えなければならない。主に時代横断型の問題で構成されており、やはり知識は有機的に整理しておくことが重要。また、Aについては資料の前のリード文の中にある「14世紀」もヒントになっているため、資料だけではなくリード文のヒントも見逃さないようにしておきたい。

3[世界史探究]世界史資料の文脈や背景《解答数:7 配点:21点 難易度:やや易》

[A]アクティウムの海戦に関する記録 [B]『五経正義』編纂の経緯 []インドにおける考古学調査 

地域、時代が異なるいくつかの資料を取り上げ、それぞれの資料が書かれた背景に関連した問題が出題されている。この大問では、資料の内容の正確な読み取りと関連知識の両方を必要としている組み合わせ型の小問が多い。特に問7は資料の読み取りに加え、資料に書かれた「30年」前の事柄から「書かれた時期」を判断する問題で、知識と思考力の総合が求められる象徴的な問題と言える。

4[世界史探究]大陸を越えた諸地域の結び付き《解答数:5 配点16点 難易度:標準》

[A]綿花の貿易 []ヴァイキングの活動範囲

19世紀後半のイギリスにおける綿花輸入と、中世ヨーロッパにおけるヴァイキングの活動範囲に関する出題。問4ではやや細かい知識が問われているが、他の小問は必要とする知識も基礎・標準的で、グラフやメモの読み取りも容易である。グラフの読み取りは【1】にもあるが、紛らわしいものはほぼ出ない。確実に正解したい。

5[世界史探究]政治権力が食料事情や食生活に与えた影響《解答数:5 配点18点 難易度:やや易》

7世紀朝鮮半島の穀物貸付制度、16世紀イギリスのタラ漁関連の政策、アメリカ先住民の「伝統料理」における連邦政府の政策の影響、第一次世界大戦中のドイツにおける食料価格に関して出題されている。どの小問も比較的平易であるが、問5はこれらに共通する主題と、同じ主題で取り上げられる事例の組み合わせを答える新傾向の問題である。

  • 大問別時間配分・解答順序

113分→【211分→【311分→【49分→【5】9分→【見直し】10

入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)

■学習プラン(高2~高3夏)

学校の授業の進捗状況に関係なく、遅くとも高3の夏休みまでに高校の学習範囲の基本的な知識は一通り押さえておきたい。また、史資料や図表に触れ、その内容について考える機会を増やすことも大切。授業や学習の中でその機会を増やすだけでなく、ニュースや日常で目に触れる事柄の中で関心を持ったものについて、関連する史資料や図表を自分で調べてみるのも有効。

■学習プラン(高3夏以降~入試直前)

高3の夏休みから10月頃にかけては、問題演習を通して教科書レベルの知識を固める時期。共通テストはセンター試験と比べて思考力を重視しているとはいっても、そのほとんどの問題は教科書レベルの知識を前提にした問題なので、その知識が定着していないようだと決して点数は伸びない。もちろん資料や図表を用いた問題の演習も知識固めと同時に行っていった方がよいが、まずは知識面で不安のある時代や分野をなくすことを優先する。特に出題比率から考えても近現代の知識問題は確実に答えられるようにしておきたい。共通テスト形式の問題演習はある程度知識を固めた段階で始めればよいが、遅くとも11月にはその段階に進んでいることが望ましい。センター試験の過去問も知識をアウトプットする力の確認ができる点では意味があるが、資料や図表における情報の読み取りに重点を置いた共通テスト特有の問題にはこの時期の演習で確実に慣れておくようにする。

出題分野(過去10年間 ※歴史総合は2025年度のみ)

魏晋南北朝時代・隋・唐と周辺地域及び第二次世界大戦と戦後の世界からは出題率が100%である。特に戦後は必ず出題されるため、早めに通史を一周終わらせて復習できる時間を十分に確保しておきたい。

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いかがでしたでしょうか。大学入学共通テストは国公立大学受験生にとっての一次試験というだけではありません。私立大学受験生にとっても非常に有用で、共通テスト利用・併用入試制度を利用して受験パターンを組むことで、合格の可能性が大きくなります。

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