2025/05/12
2025年度大学入学共通テスト科目別分析~過去問研究から傾向・対策を知る~【数学編】
大学入学共通テスト 科目別分析は、大学入学共通テストの対策について、「何から始めて、どう進めるのか」を正しく理解してもらうことを主目的としています。今後の共通テスト対策をより効果的・効率的なものにするために、2024年度と2025年度の問題構成の比較や、2025年度の大問別問題分析、そして高校2年生からの入試対策を掲載しています。
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1.数学Ⅰ・数学A 試験時間60分 満点100点
問題構成(過去2年間)
- 2024年度は、第3問から第5問が選択問題であったが、2025年度は全問必答となっている。解答数は、2024年度とおおむね同様である。
- 2024年度と比べて丁寧な誘導問題が多く計算量も減少したため、取り組みやすい問題も増えているが、外れ値や仮説検定、期待値といった新課程で追加された範囲からの出題も増えているため、全体としてみると同程度の難易度である。
- 新傾向の問題の出題が目立つが、共通テストの過去問や共通テスト予想問題集などでしっかりと対策をする必要がある。
2025年度 大問別問題分析
【1】
[1]数と式、集合と命題 《解答数:4 配点:12点 難易度:標準》
数と式、集合と命題の分野からの出題であり、たすき掛けによる因数分解を用いて二次方程式の解の個数を考える問題である。誘導が丁寧であったため、比較的解きやすかったと予想できる。
[2]図形と計量 《解答数:8 配点:18点 難易度:標準》
図形と計量の三角比からの出題であり、問題の指示通りに補助線を引き、正弦定理を用いて外接円の半径を求め、三角形の辺の長さを求める問題である。やや誘導が飛躍しているところがあるが、条件を見逃さず取り組めば容易に解ききることができる。
【2】
[1]二次関数 《解答数:6 配点:15点 難易度:標準》
二次関数から出題であり、噴水が描く放物線の高さを求める問題である。条件や仮定が長いため難しく感じるが、グラフの概形をイメージしたり、二次関数を因数分解の形で処理したりすることで、計算量を減らすことができる問題である。計算に時間をとられた人も多かったと予想される。
[2]データの分析 《解答数:6 配点:15点 難易度:標準》
データの分析からの出題である。新課程から追加された外れ値や仮説検定の問題と2つのデータを合計したデータの分散を定義から計算によって求める問題であり、共分散の定義なども押さえておく必要があるが、おおむね標準レベルである。
【3】図形の性質 《解答数:7 配点:20点 難易度:標準》
図形の性質の空間図形からの出題。直線や平面の位置関係に関する問題と五面体とその外接球に関する問題である。どの設問も丁寧な誘導がついており、適切に誘導にしたがって解き進めることが出来ればしっかりと得点することが出来たと予想できる。
【4】確率 《解答数:8 配点:20点 難易度:やや易》
新課程から復活した期待値を求める問題である。問題文中に確率がすでに与えられているので、その値をうまく用いれば容易に解き進めることができる。期待値を求めた後に参加料の妥当性を問う問題があり、今までにはない傾向の出題となっている。
●大問別時間配分・解答順序
【1】 19分→【2】 19分→【3】 14分→【4】 13分→【見直し】 5分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
定理や用語ならびに基本的な解法を身につけ、教科書の例題および練習問題を確実に解けるようにすることが重要となる。その際に、以下の問題集や参考書を用いるのが効果的だ。
→『各種教科書および教科書傍用問題集』(高2)
『チャート式 解法と演習 数学Ⅰ+A(黄チャート)(数研出版)』(高2~高3夏)
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
苦手分野や定着しきれていない解法や公式の習得、また共通テスト特有の誘導に従った解答に慣れることが必要となる。併せて、制限時間内の演習を通して、どのように解いていくのかという戦略を練った上、当日を迎えられるようにする。
→『チャート式 大学入学共通テスト対策数学ⅠA+ⅡBC(数研出版)』、『共通テスト 総合問題集 数学Ⅰ+A』、『共通テスト過去問』などを用いて学習を進めるようにする。
出題分野(過去10年間)
図形の性質の基本的な定理とデータの分析の散布図、ヒストグラムは必ず出題されている。また、条件付確率や正弦定理・余弦定理なども出題率が非常に高い。
2.数学Ⅱ・数学B・数学C 試験時間70分 満点100点
問題構成(過去2年間)
- 2025年度から試験時間が60分から70分に延長されたが、解答数は2024年度と比較してもあまり変化はなく、時間的余裕が少し生まれたと推測できる。
- 計算量が少なくなって、選択式の問題が増えたことが大きな変化である。また、数学Cの範囲が2025年度から追加され、平面上の曲線は出題されなかったが、複素数平面は出題された。
2025年度 大問別問題分析
【1】三角関数 《解答数:6 配点:15点 難易度:やや難》
三角関数を含む方程式の問題であった。のとりうる範囲に注意して解く必要があり、やや難しい大問であった。三角関数の値を単位円周上の点の座標で捉え、三角関数の性質に着目した問題に取り組み、得点源にしておきたい。
【2】対数関数 《解答数:6 配点:15点 難易度:標準》
対数関数を用いて、水草を除去する作業計画を考える問題が出題されている。計算量も少なく比較的解きやすかったと予想できる。常用対数表を用いる問題が出題されているので、常用対数表の見方や類題を通して問題に慣れておきたい。
【3】微分法・積分法 《解答数:12 配点:22点 難易度:やや難》
導関数が同じである2つの関数の問題が出題されている。序盤は、具体的な数字が与えられるため解きやすいが、中盤以降は抽象的な問題が多く、苦戦した受験生が多かったと予想できる。与えられた導関数や関数の極値などの条件からグラフの概形をイメージできるようにしておきたい。
【4】数列 《解答数:7 配点:16点 難易度:標準》
座標平面上の直線や曲線で囲まれた図形の内部の格子点の個数を等差数列や等比数列の和の公式を用いて処理する問題であった。最後の設問は∑の性質から容易に求められるが、計算に時間がかかった受験生が多いと思われる。
【5】統計的な推測 《解答数:9 配点:16点 難易度:やや易》
収穫されるレモンの重さの分布を考える問題が出題されている。正規分布の標準化、母平均の推定、仮説検定に関する出題であり、信頼区間・有意水準・棄却域などの基本的な理解が問われ、全体として解きやすい問題であったと予想される。
【6】空間ベクトル 《解答数:8 配点:16点 難易度:標準》
空間ベクトルを用いて座標空間における球面上の正三角形の存在を考える問題が出題されている。内積の計算によって、実数解の存在から三角形が存在する範囲を求める問題である。また、求めた範囲が図形的にどのような意味をもつのかを考え、図形的にも存在する範囲を捉えられるようにしておきたい。
【7】複素数平面 《解答数:8 配点:16点 難易度:標準》
複素数平面上の2直線が垂直に交わるための条件を考える問題が出題されている。誘導に沿って同様の手順で進めることができる。複素数が満たす関係式と複素数の表す図形の変換がスムーズにできるようにしておきたい。
●大問別時間配分・解答順序
[Ⅰ] 【1】 10分→【2】 10分→【3】 15分→【4】 10分→【5】 10分→【6】10分→【見直し】 5分
[Ⅱ] 【1】 10分→【2】 10分→【3】 15分→【4】 10分→【5】 10分→【7】10分→【見直し】 5分
[Ⅲ] 【1】 10分→【2】 10分→【3】 15分→【4】 10分→【6】 10分→【7】10分→【見直し】 5分
[Ⅳ] 【1】 10分→【2】 10分→【3】 15分→【5】 10分→【6】 10分→【7】10分→【見直し】 5分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
基本的な解法及び計算力を身につける一方で、与えられた状況を見極められるようになる必要がある。数学I・Aも必要となるため、計画的に進めなくてはならない。
→『各種教科書及び教科書傍用問題集』(高2~高3夏)
『チャート式 解法と演習 数学Ⅱ+B、数学C(黄チャート)(数研出版)』(高2~高3夏)
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
苦手分野や定着しきれていない解法や公式の習得、また共通テスト特有の誘導に従った解答に慣れることが必要となる。併せて、制限時間内の演習を通して、どのように解いていくのかという戦略を練った上、当日を迎えられるようにする。
『共通テスト過去問』、『共通テスト 総合問題集 数学Ⅱ,数学B,数学C』などを用いて学習するとよい。
出題分野(過去10年間)
過去10年間で必ず指数対数の計算、極値・最大最小、面積(積分)が出題されている。また、ベクトルの問題は平面よりも空間が頻出である。
いかがでしたでしょうか。大学入学共通テストは国公立大学受験生にとっての一次試験というだけではありません。私立大学受験生にとっても非常に有用で、共通テスト利用・併用入試制度を利用して受験パターンを組むことで、合格の可能性が大きくなります。本科目だけでなく他科目も参考にして、多くの合格を勝ち取りましょう。
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