2025/07/07
2025年度大学入学共通テスト科目別分析~過去問研究から傾向・対策を知る~【理科②編】
大学入学共通テスト 科目別分析は、大学入学共通テストの対策について、「何から始めて、どう進めるのか」を正しく理解してもらうことを主目的としています。今後の共通テスト対策をより効果的・効率的なものにするために、2024年度と2025年度の問題構成の比較や、2025年度の大問別問題分析、そして高校2年生からの入試対策を掲載しています。
他科目はこちら
数学 英語 国語 理科①(物理・化学) 地理・歴史 公民 情報
INDEX |
1.生物基礎 試験時間 60分(他の基礎科目1科目と合わせての試験時間) 満点50点
問題構成(過去2年間)
- 大問数は3問、設問数は16問で、2024年度の共通テストから変化はなかったが、解答数は1問増加している。
- 出題形式は空所補充、用語の組合せ、正誤判断が主体である。2024年度と比較すると、知識問題よりも考察問題の割合がやや増加しており、正確な知識をもとに考察する能力が必要とされている。
2025年度 大問別問題分析
【1】 [A]細胞、細胞周期、遺伝子翻訳 [B]植物の再生、代謝 《解答数:6 配点:16点 難易度:標準》
[A]は、細胞に関する知識問題、細胞周期に関する計算問題、遺伝子翻訳に関する計算問題が出題されている。標準的な内容が問われているため、あまり時間をかけずに解答したい。
[B]は、タンポポの再生に関する考察問題が出題されている。問5は、仮説検証型の問題であり、内容的には標準レベルだが、時間を要する問題である。
【2】 [A]自律神経による調節 [B]免疫 《解答数:6 配点:18点 難易度:標準》
[A]は、自律神経による心拍数と呼吸の調節に関する出題。問1と問3は、自律神経に関する知識問題であり、知識の正確さが要求される。問2は実験結果から考察する問題であり判断しやすいため、確実に正解したい。
[B]は、免疫に関する出題。問4と問5は、教科書レベルの知識問題であり確実に正解したい。問6は、与えられたグラフから選択肢中の波線部の記述について考察する問題。新傾向の問題であり、問題形式に慣れておきたい。
【3】 [A]生態系 [B]バイオーム 《解答数:5 配点:16点 難易度:標準》
[A]は、例年通り生態系に関する出題。問1と問3は、教科書レベルの知識問題であり、確実に正解したい。問2は適当なものを過不足なく選択する問題形式であり、知識の正確さが要求される。
[B]は、バイオームに関する出題。問4は気候条件の違いがバイオームに与える影響に関する知識問題。内容的には標準レベルだが、時間を要する問題である。問5は日本のバイオームに関する知識問題。バイオームの分布について正確な知識を必要とする問題である。
●大問別時間配分・解答順序
【1】 9分→【2】 8分→【3】 8分→【見直し】 5分
入試対策(学習のポイント・入試直前までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
解答に必要な知識は教科書の範囲内に限られるため、教科書の知識が身についていれば解けるように問題が作られている。まずは教科書に載っていることを体系的に身につけることから始める。『高校新演習スタンダード生物基礎(EDU)』を用いて、学校の授業と並行して予習・復習し、学校の傍用問題集などを用いて既習範囲を復習して対策する。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
知識を使えるようにするために、基本問題や標準問題が載っている問題集で演習したい。自分ではしっかりと教科書の知識を身につけたと思っていても、問題を解くと答えられないことがあるはずだ。自分の覚え方と違う角度で問われることで、知識を使えるものにできる。そして、単元ごとの学習で終わらせず、最終的には単元同士の関連性まで踏み込んで学習していきたい。『マーク式基礎問題集(河合出版)』を分野ごとに問題演習し、分野別に抜けている公式の確認・知識の定着を図る。また、『共通テスト総合問題集生物基礎(河合出版)』を全分野まとめて問題演習し、苦手単元の洗い出し・入試形式への慣れにつなげていきたい。
出題分野(過去10年間)
細胞とエネルギー、遺伝情報とDNA、免疫、日本のバイオームなどが特に頻出。2025年度は、出題範囲として特定の分野に偏ることはなく、「生物と遺伝子」、「生物の体内環境の維持」、「生物の多様性と生態系」の3分野からバランスよく出題されている。
※上表 出題率:過去10年分
2.生物 試験時間60分 満点100点
問題構成(過去2年間)
- 2024年度と比較して、大問数、設問数、解答数ともに1問減少。複数の実験とその結果から設問の解答を導くような問題や図や表を読み取る問題など、思考力を試すような共通テスト特有の問題が引き続き出題されている。単純な知識を問う問題の比重が減り、考察問題が増加したが、全体的な難易度は2024年度と同程度である。
- 特定の単元に偏ることなく、教科書の幅広い分野から出題された。2024年度に出題されたシミュレーションの問題のような目新しい問題や、会話文に基づいた問題などは出題されていない。
2025年度 大問別問題分析
【1】刺激と興奮の伝達、遺伝子発現と発生 《解答数:5 配点:18点 難易度:標準》
神経と味覚の多様性をもたらすSNPに関する問題。問1では神経に関する知識問題が出題されている。問2は分子系統樹に関する問題。問3や問4では、与えられた資料から考察する問題や計算する問題が出題されている。結果から正しく考察する力を身につけておきたい。
【2】生命現象とタンパク質、代謝 《解答数:5 配点:20点 難易度:標準》
タンパク質やアミノ酸、酵素に関する問題。問1ではタンパク質やアミノ酸に関する知識問題が出題されている。問2や問3(2)は、基礎的な知識をもとにした考察問題。問3(2)はアロステリック酵素や非競合的阻害などに関する知識を必要とする問題である。
【3】種間関係、植物の物質生産 《解答数:5 配点:20点 難易度:標準》
種間関係と植物の物質生産に関する問題。問1は種間関係についての知識問題。問2、問3は与えられた図や表から植物の特徴について考察する問題。問4はグラフから植物の物質生産について考察する問題であり、光合成量が呼吸量より多い場合、植物の乾燥重量は増加することがポイント。参照すべき図や表が多いため、図や表を素早く読み解く力を身につけておきたい。
【4】遺伝子発現、両生類の胚発生 《解答数:4 配点:18点 難易度:標準》
両生類の胚発生に関する問題。問1は卵形成についての知識問題。問2、問3は中胚葉誘導と神経誘導についての実験考察問題。問題文や選択肢の文が長く、理解するのに時間がかかる。このような形式の問題に慣れておきたい。
【5】 [A] 植物の環境応答、遺伝の法則 [B] 植物の環境応答 《解答数:6 配点:24点 難易度:標準》
[A] 種子発芽と花芽形成に関する問題。問1は種子発芽についての知識問題。問2は遺伝子量と日長のグラフから花芽形成について考察する問題。問3は遺伝の基礎知識を必要とする考察問題。
[B] 重力屈性に関する問題。問4は重力屈性についての実験考察問題。問5は重力屈性についての基礎知識から、仮説を組み立てる能力が必要とされる。
●大問別時間配分・解答順序
【1】 12分→【2】 12分→【3】 11分→【4】 8分→【5】 12分→【見直し】 5分
入試対策(学習ポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
初見の考察問題が出題されていても、解答に必要な知識は教科書の範囲内に限られるため、教科書の知識が身についていれば解けるように問題が作られている。まずは教科書に載っていることを体系的に身につけたい。『高校新演習スタンダード生物(EDU)』を用いて、学校の授業と並行して予習・復習し、学校の傍用問題集を用いて学習済みの範囲を復習すると良いだろう。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
知識を応用できるようになるために、基本問題や標準問題が載っている問題集で演習しておきたい。様々な種類の問題に取り組むことで多くの知識を活用できるようになる。さらに、単元ごとの学習で終わらせず、最終的には複数単元を有機的に結び付けて学習していくと良い。『マーク式基礎問題集(河合出版)』で分野ごとに問題演習し、分野別に抜けている公式の確認・知識の定着を行う。そして『共通テスト総合問題集(河合出版)』でまとめて問題演習し、苦手単元の洗い出し・入試形式に慣れておくと良いだろう。
出題分野(過去10年間)
教科書の全範囲からバランスよく出題されている。特に植物の環境応答、進化の仕組みは頻出である。全ての単元において、基礎的な知識(用語・仕組み)は確実におさえておくようにすること。
また、知識問題が減少し、実験考察問題が増加したため、考察問題の対策が必要である。
※上表 出題率:過去10年分
3.地学基礎 試験時間 60分(他の基礎科目1科目と合わせての試験時間) 満点50点
問題構成(過去2年間)
- 大問数・小問数ともに2024年度と同様で、難易度は全体的にやや易しいものとなっている。
- 例年どおり、様々な分野から満遍なく出題されているため、偏りなく知識を身につけておくとよい。2025年度は2024年度以前と変わらず基本的な知識や思考力を問う問題が出題されているが、今まで頻出であった計算問題が出題されていない。また、資料を読み取る問題が増加傾向にある。
2025年度 大問別問題分析
【1】
[A]惑星の性質とプレートテクトニクス 《解答数:2 配点:7点 難易度:やや易》
惑星とプレートテクトニクスからの知識問題が出題。いずれにおいても、基礎的な知識があれば容易に解答できるため、確実に得点しておきたい。
[B]火成岩と火山 《解答数:2 配点:7点 難易度:易》
火成岩と火山について出題。問3は丁寧に化学組成の一覧が掲載されているが、SiO2(二酸化ケイ素)以外見る必要はなく、二酸化ケイ素の質量%を参照するのみで解答できるため平易。問4も大気の層との複合問題であるが、基礎的な問題である。
[C]地層と流水の作用 《解答数:2 配点:6点 難易度:やや易》
問5の漣痕(リプルマーク)・級化構造・斜交葉理(クロスラミナ)は必ず各模様のイメージを覚えておきたい。問6もそのイメージを覚えておけば、即答できる。
【2】エネルギー収支と水循環・海水の組成 《解答数:3 配点:10点 難易度:標準》
問1はエネルギー収支から出題。問2は地球上の水循環から出題。大気循環にも関わる内容であるため、合わせて覚えておくとよい。問3では海水の組成から海水中の塩分と海水が凍結した場合の濃度について出題されている。地学基礎としてはあまり見ない問題であり、ウは容易であるが、エはやや難しい。大問2全体としては標準的な難易度である。
【3】
[A]宇宙の始まりと晴れ上がり 《解答数:2 配点:7点 難易度:やや易》
ビッグバン直後の宇宙から出題。問2は特にかなり細かい知識問題であるため難しい。
[B]銀河系の構造 《解答数:1 配点:3点 難易度:易》
銀河系に関する問題。真横から見た模式図は頻出のため、必ず得点しておきたい。
【4】自然災害と人為起源の現象・地層 《解答数:3 配点:10点 難易度:やや易》
自然災害と地層が主に出題されている。問1のように基礎的な知識を前提に思考力を問う問題が出題されているが、あくまで基礎的な知識を押さえていれば解答できるため、応用的な問題が出題されても冷静に対処しておきたい。問3のように余震という現象に対する意味そのものを理解できているかどうかを問う内容もあり、用語はその内容までかみ砕いて記憶しておくとよい。
●大問別時間配分・解答順序
【1】 10分→【2】 5分→【3】 5分→【4】 5分→【見直し】 5分
入試対策(学習のポイント・入試本番までのスケジュール)
■学習プラン(高2~高3夏)
科学的な探究に必要な能力が問われているとは言え、基本知識がなければ考察することができないので、まずはその点を重視したい。できれば1学期中に知識の総整理を終わらせ夏休み以降は教科書・問題集を扱いたい。できるだけ多くの実験、図、資料と向き合うことで自分なりの解答プロセスを確立することが望ましい。具体的には、学校の傍用問題集などを用いて既習範囲を復習すると良い。
■学習プラン(高3夏以降~入試直前)
過去のセンター試験や模試でも思考力を問われる問題が出題されているので知識問題に留まらず、いろいろなタイプの問題に触れていくことで、試験本番でも焦らずに解答することができる。『マーク式基礎問題集(河合出版)』分野ごとに問題演習し、分野別に抜けている公式の確認・知識の定着。 『共通テスト総合問題集 地学基礎(河合出版)』全分野まとめて問題演習し、苦手単元の洗い出し・入試形式に慣れていきたい。
出題分野(過去5年間)
「地層と地質構造・化石」は過去5年間で必ず出題されている。また、単元「宇宙の構成」は毎年必ず単独の大問で出題されるため、対策は必須である。
2025年度はあまり出題されない「惑星」、「海水・海洋」の構造が出題されており、いつ何が出されても解答できるように頻出単元ではない単元も対策しておくとよい。
※上表 出題率:過去5年分
いかがでしたでしょうか。大学入学共通テストは国公立大学受験生にとっての一次試験というだけではありません。私立大学受験生にとっても非常に有用で、共通テスト利用・併用入試制度を利用して受験パターンを組むことで、合格の可能性が大きくなります。本科目だけでなく他科目も参考にして、多くの合格を勝ち取りましょう。
~ちがいは、成果。 『点数アップと大学受験に強い』個別指導~
*システム(S-CUBE/My Step Log) *プランニング(学習プランナー) *良質な授業(優秀な講師陣) *受験情報(学習・情報イベント) *映像授業(駿台Diverse) *学習環境(自習スペース) |
他科目はこちら
数学 英語 国語 理科①(物理・化学) 地理・歴史 公民 情報
<文/開成教育グループ 個別指導統括本部 教育技術研究所>